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第24話

 生徒会室に話を戻そう。当麻が、空良に優しく話しかけた段に。 「制服が汚れる。立ちなさい、摑まって」  差し出された手をおずおずと握り返した瞬間、空良の全身を電気が走った。その衝撃度は人類が火の使い方をマスターしたときの、それに匹敵する。  磁場が発生したように、触れ合わさった指がびりびりするにとどまらず、ときめきというジェットコースターが急降下するイメージだ。  奇妙な現象に空良は目をぱちくりさせながら、当麻を振り仰いだ。つないだ手を通じて温かいものが流れ込んでくるにしたがって、肋骨が共鳴板と化したように体内の到る所できゅんきゅんと音が鳴る。  手をほどけば息苦しさが薄れるに違いなくて、ところが、かえって握りしめてしまうありさまだ。  不思議だ、吸盤が(そな)わっているわけでもないのに、どうして手が離れないのだろう。生徒会長に近づくな、と大和から釘を刺されている身で当麻と手をつなぐのは裏切り行為だ。ちい兄ちゃんごめんなさい、と眉を八の字に下げ、なのに依然として手はくっついたままで、 「えいっ、離れろ、えいっ!」  力いっぱい腕を振れば振るほど粘着力が増すとは、脳内のどこかの回路に不具合が生じたとしか思えない。  最終下校時間がすぎてもこの状態がつづいていれば、必然的に当麻の家乃至(ないし)、うちまで一緒に帰ることになる。  それが現実のものになったが最後、おにいちゃんズから叱られるのは必至。だが多少の犠牲を払っても、お釣りがくるかもしれなくて──。

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