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第3章 おにいちゃんズの暗躍

    第3章 おにいちゃんズの暗躍  クラスの最大派閥が、休み時間に初恋の話で盛りあがっていた。  初恋、と空良は机に指で書いた。何を隠そう未経験だ。十六歳男子としては、おたふくかぜや水ぼうそうのようにすませておくのが常識なのだろうか。  俗にいう恋に落ちる感覚は、高度一万フィートから飛行機が墜落したくらいの衝撃をともなうものなの? それとも隕石が頭を直撃した……、 「日直だろうが。グラウンドに先乗りして授業の準備をしとく決まりだ」  隕石ならぬ空手チョップを食らって、現実へと引き戻された。  男子校ゆえ、教室は更衣室を兼ねる。なのに空良は、トイレの個室で体操服に着替えるよう義務づけられている。誰から? もちろん大和から。  その表向きの理由というのが、こうだ。 「おまえみたいなチビでガリの裸、見せられたほうがゲロするし。だから隔離だ」  では、つぎに棘々しい科白を正確に翻訳してみよう。  ──俺とタケ兄が売約済みのシールを貼ってある桃尻は、パンダ並みに保護する必要がある。    そういう次第で空良はトイレへ行き、ところが個室の中まで大和がくっついてくる。 「ちい兄ちゃんてば、隣が空いてるよ? お願い、狭いのに押さないで」  壁と便器の間に挟まってジタバタすれば、柔らかくて二股に分かれているものが首に巻きつけられた。 「穿け、生足禁止だ」  生足禁止、と鸚鵡返(おうむがえ)しに呟きながらマフラーもどきの物をほどくと、それは厚手のタイツだ。目をぱちくりさせて数秒後、ぎゅっと大和に抱きついた。 「おれ、紫外線アレルギーっぽくて、外で体育の授業を受けたあとは肌が真っ赤になって。UV対策を考えてくれて、ありがとう!」  ケッ、と吐き捨てつつも、大和は満更でもなかった。男子校あるある、だ。中性的なクラスメイトを視姦しかねない野郎どもから生足を隠しておきたい一心で、わざわざ小遣いからタイツ代を捻出したのだ。  感謝されて当然で、ただし誤算があった。すんなりした脚が、ばばくさい肌色のタイツに包まれていくさまは、かえってエロい。  生着替えをかぶりつきで鑑賞しているうちに、こてこてのアイディアが浮かんだ。  痴漢と遭遇したさいの撃退法を実践方式で教える名目で、今夜はこいつにストッキングを穿かせたうえで股の部分を破り、裂け目から〝改良型・快☆快こちょこちょ〟を突っ込んで悪戯してやろう──。

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