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第36話

 大和は頼り甲斐がある反面、強引すぎるのが玉に(きず)で、特に当麻とまったりしていたい現在(いま)は、 「ちい兄ちゃんてば、横暴」  戸枠にしがみついて抗う。すると弱点その一の腋の下をこちょこちょされた(ちなみに、その二はうなじだ)。 「ずっ、ずるぅいぃ!」  上体を右に左にひねってくすぐり攻撃をかわしても、執拗にこちょこちょこちょこちょ。それでも懸命に踏みとどまっていると、当麻が割って入った。 「昼休みの過ごし方は個人の自由だ。俺さま全開で干渉するのはいただけない」 「生徒会長だからって、あんたにも俺の弟にちょっかい出す権利はないけどな」  大和は肩をそびやかし、腰はいくぶんかがめて、掬いあげるように当麻を睨み返す。  それに対して当麻は、凛と背筋を伸ばす。  真昼の決闘という雰囲気が漂った。突風が吹いてクッキーの粉が渦を巻くと、それは西部劇でおなじみの惨劇の幕開けを暗示する土煙さながらの演出効果をもたらす。  空良は、当麻と大和をかわるがわる見つめた。ふたりが西部劇の登場人物なら、生徒会長は巨悪に立ち向かう保安官で、ちい兄ちゃんは賞金稼ぎのアウトローだ。  では空良の役どころは? アウトローの旅の道連れを選択するのが正解なのだが、本音を吐くと保安官の助手に志願したくて、悩む。  予鈴が鳴り、思い思いの場所でくつろいでいた生徒たちが、たらたらと教室へと戻っていく。  タイムアップだ。大和は舌打ちひとつ、右手の中指を突き立てた。 「今日のとこは生徒会長さまの顔を立てて引き下がってやるし?」 「了解した。では、お互い勉学に励もう」  当麻は鷹揚にうなずいた。もっともハッタリをかましたにすぎない。牽制された気がするが、大和の真意を測りかねるというより、チンプンカンプンだ。    火花を散らすふたりをよそに、空良は弁当をぱくついた。今日のタコさんウインナーは会心の出来と、にこにこするあたり花より団子を地でいっている。  この調子では大和がわざわざ恋の卵を破壊しなくても孵化する見込みは薄い──少なくとも今のところは。

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