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第39話

 上目づかいに問いを投げかけると、穏やかに諭された。 「いいかい、朝勃ちしたのに適切な処置をほどこさないと、精子が死滅してペニスそのものが腐ってもげることがあるんだ。回避できるかは、ひとえに空良の双肩にかかっている」  もげたら大変! 立ちションができなくなるのはアイデンティティに関わる問題で、つぶらな瞳が潤む。  それはさておき〝適切な処置〟の具体的なマニュアルは? むくむく膨らんでいくこれを、どう扱えばいいの? 「ん、んんんん(息ができない)……っ!」 「ソフトクリームを舐める要領でぺろぺろしてごらん。心肺機能が鍛えられて、息継ぎしなくても五十メートル泳げるようになるよ」  それを鵜呑みにして、ただしおずおずと舌をすべらせると、確かに鼻呼吸がしやすくなった。  つるりと逃げがちなペニスを手で支えたら、もう少し楽に舐められる気がするのだが、相変わらず上体を拘束されているせいで思い通りにいかない。  試しに泊まりにいった先の、枕の頭のおさまり具合がいい場所を捜すように首を傾けてみると、舌さばきがなめらかさを増す。    おお兄ちゃんは教え上手ですごい、と感心する空良にひきかえ、大和はムカついていた。  ふっくらした唇がアメリカンドッグをはむはむするさまに劣情をそそられた三月初旬の段階で、近い将来、必ずこいつに銜えさせる、と心に固く誓っていた。唇のヴァージンを奪うのは絶対に俺だ──と。  しかし忌々しいことに、おあずけを食わされている。コイントスの記憶が甦り、あっ、と思った。  タケ兄は手の甲で受け止めた硬貨に掌をかぶせるさいに、その硬貨を巧妙かつ素早くひっくり返さなかったか? そういえば後出しジャンケンのスペシャリストだ。  あのときズルしやがったに違いない。やられたらやり返すのが大和の主義で、リモコンを摑み取る。  そしてローターが(なか)を焦れったーく荒らし回る〝のそのそモード〟に切り替えた。 「ひゃふんっ!」 「痛い、かじってる、かじってる!」

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