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第47話
今年初の夏日を記録するなか、空良は東へ西へと駆けずり回り、体脂肪率がひと桁台に減るのは近い。それでも、おつかい地獄に笑顔で立ち向かう。
次から次へと指令が下って、気分はまさしくシンデレラ。おにいちゃんズはきっと心を鬼にして、役作りに協力してくれているに違いない。
「グリコ……はぁはぁ……チヨコレイト……ふぅふぅ……パイナツプル……到着ぅ」
このルートをいったい何往復しただろう。よたよたと石段をのぼりつめるころには、西の空でオレンジ色の雲が棚引く。
今回〝おつかい〟を頼まれたものはお米十キロで、ペンギンさながらのよちよち歩きで鎮守の森に分け入る。エコバッグが鹿の角 のように張り出した下枝に引っかかって、苔むした石畳にへたり込んだ。
銀杏 の梢を透かして鳥居が見える。そうだ、何度も近道に使わせてもらったお礼かたがた参拝していこう。
さっそく社殿に回った。二礼して、賽銭箱に硬貨を投げ入れて、鈴を鳴らして、柏手を打って、
「当麻先輩ともっと、たくさんおしゃべりができますように……あれぇ?」
首をかしげた。クラス劇の成功を祈願したつもりなのに、日本語がラテン語にすり替わったほども違う。
無意識のうちに言葉をつけ足したり省略したりして、どんどん正解から遠ざかっていく伝言ゲームのごとく、言語中枢から声帯へと信号が送られていく途中で、誤変換を起こしたらしい。
深呼吸をしてから、やり直す。柏手を打って、目をつぶって、
「当麻先輩ともう少し仲よくなれますように……んんん?」
ぱぱっと肩を手で払う。神社という場所柄、狐がとり憑いて手足を操ったのだとしても、これで祓えたと思う。
柏手を打って、頭 を垂れて、三度目の正直で、
「当麻先輩と一日に五回は、校舎のどこかでばったり会え……うわぁん、おれのバカ、バカバカァ!」
脳みその代わりにオガクズが詰まっている、なんてことがあるわけないが。こんこんと頭を叩いてみると、空き缶より軽い音がする気が……。
狛犬を撫でて心を清めた。パーカのフードの紐で鼻の下をくすぐり、餃子を包む要領で下唇を丸めながら、自己分析に励む。
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