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第50話

 夏至祭の会場は講堂および音楽堂。  講堂側は高等部の生徒会が、音楽堂側は中等部の生徒会がそれぞれ取り仕切る習わしだ。  頭が痛いのがプログラムの編成で、どのクラスも集客率の高い時間帯を第一希望に挙げてくる。  クラス代表の実行委員がクジを引いたうえで割り振るのだが、当麻の副会長時代の昨年は不正が行われて、乱闘騒ぎに発展する寸前までいった。当麻が持ち前の統率力を発揮したおかげで、丸く収まったのはさておいて。  二年四組、と呟いた。  俺さまキャラの小沢大和に、ほのぼのキャラの空良という両極端な人材に恵まれてるぶん、あのクラスは得をしている、と思う。  とりわけ空良──。  思い出し笑いにほころんだ顔が、ブックエンドを兼ねた鏡を彩る。クッキーが割れたと、おろおろするさまに接したときは内心、げんなりした。  だが迷い猫を見かけたら保護してあげたくなるのと同様に、放っておけないものがあった。クッキーを復元し終えたさいの爛漫の笑顔は〝奇特な俺〟への謝礼としては、まずまずといったところか。  ただ、おままごとめいた場面が頭にこびりつき、折に触れて下腹部が疼くのが()せない。  今しも、うっ、と来た。午後のノルマは物理の問題集十ページ。あと三ページ残っているが、我慢するのは躰に毒だ。  可及的速やかにしかるべき行為に没頭して、射精()すものを射精してしまったほうが能率があがる。  なので目下、お気に入りナンバーワンの悩殺ポーズ──肘かけに片足を引っかけたうえで腰をせり出し、下肢がMを形作るよう修正を加えて気分を高める。  しどけない恰好でペニスを摑み出すと、縦横斜めに映し出される〝当麻〟も一斉にそうする。  くびれに指を添えてしごきはじめると、無数の〝当麻〟も一斉にそうする。  精液の貯蔵量を量るように、を掌で弾ませると──以下同文。  スタンドミラーに向かって挑発的に舌なめずりをしてみる。上唇のめくれぐあいが絶妙で、色気だだ洩れだ。  自惚れではない、これは掛け値なしの真実だ、と思う。  ひとりエッチに耽る姿さえ芸術の域に達していて他の追随を許さない、と。

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