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第65話

「反省の色が見えるか否かの判断材料はモニターとしての貢献度だからね。心して、おやりよ」 「返事はどうした、聞こえねぇぞ」 「はひぃっ! でも、この試作品って、くすぐったがり屋にはハードル高いよぉ」  腰をくねくね、両手をぱたぱたしつつも、空良は前戯くん7号がもたらすもどかしい刺激に必死に堪えた。  自業自得だ、と思う。生まれてこのかた十六年も苦楽を共にしてきながら、ペニスの躾がなってない。その報いを受けるのは当然で、だが過去一番の試練だ。  後ろ全体がローターにじゃれつくようだわ、小人の大群が下半身の到る所で掃き掃除をしているようだわ、あえぎ声と笑い声がない交ぜに口を衝いてあふれて息が苦しい。  それでいて時折、姫抱っこされた感触が全身に甦ると、別の意味で胸が苦しくなる。 「おら、しごけ」 「僕は、しゃぶってもらおうかな」  いきり立ったペニスが二本、それぞれ右手と口許めがけて突きつけられる。少し前までの空良は、武流曰く〝濃厚なスキンシップは兄弟の絆を強めるのに有効〟を信じて疑わなかったぶん、二つ返事で従った。  ところが突然、体質が変わったように抵抗を感じる。反射的に一本はねじ曲げ、もう一本は叩き落とすと、二重唱のようにトーンがやや異なる絶叫が響き渡った。  それから二日後の登校時のこと。ペニスの代わりにへし折られたバナナがぶら下がっているようにガニ股で歩く大和にひきかえ、空良は軽やかに正門前の坂道をのぼりつめた。  昇降口で上靴に履き替えようとすると、下駄箱に手紙が入っていた。 〝昼休みに時計塔の機械室で待っている──T──〟。  大和と一緒に登校してきたというより、 「電車の中で、おまえをスリだの痴漢だのから護ってやる報酬に弁当を作れ。メシの上に桜でんぶでハートな」  うそぶく彼に連行された。その大和はラッキーなことに、バスケ部の朝練に出るため体育館に直行した。  手紙を日光に翳してみたり、筆跡をなぞったりしながら何度も読み返す。  T? もしかして当麻のT?  まさか、と打ち消すそばから期待が膨らむ。やがて昇降口が生徒でごった返し、大丈夫かと訊かれるまで、躰が地上から数センチ浮いているように突っ立ったままでいた。

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