96 / 137

第96話

「出てけっつてんだろ!」  と、罵声を浴びせてくるかたわら、ずりずりと窓のほうを向く。それでいて邪魔者が消えるまで一旦ストップをかけようにも欲望が制御できない様子で、規則正しくペニスをしごきたてる。  空良は扉を背にして爪先立ちになると、エロティックなさざ波が走る肩越しに股間を覗き込んだ。モニターを務めた経験に照らし合わせて推し量る。  (へそ)を叩くような勢いからいって、昇りつめるまで二分足らず。壁にもたれて座ると、にこやかに告げた。 「終わるまで待ってるから、気にしないで続けて」  効率よく家事を片づけるコツは「これもついでに」なのだ。  すっきりしたらボクサーブリーフを穿き替えるかもしれないから、リネン類と一緒に洗濯機に放り込んじゃおう。省エネで手間も省けて、一石二鳥だ。 「マジに出てけ。出ていかねぇと……犯すぞ」  物騒な科白とは裏腹、べそをかいているようにゆがんだ横顔が、ガラス越しの陽光に照らし出されて、 「ギャアギャアと何を騒いでいるの」    そこで武流が、あくび交じりに扉を押し開けた。そして即座に状況を察すると、空良を部屋の中央へと押しやりがてら、後ろ手に内鍵をかける。 「ひとりでシコるより手伝ってもらったほうが気持ちいいよ? ねえ、空良、空良はビンビンに勃ってるのを放っておけない子だね」    つられて、うなずき返す。すると光の加減で眼鏡のレンズが禍々(まがまが)しくぎらつき、猛禽類にロックオンされたヤマネさながらすくみあがったせつな、爪先が膝の裏にめり込んだ。  つんのめった瞬間を狙って、もう一発いわゆる膝かっくんを食らった。敢えなく四つん這いになると、すかさず背中に足が乗る。  空良は、ベッドに腰かけた武流の人間オットマンと化した。 「ヌイてるところを空良に見られてよけい興奮した──と。責任を取ってもらいたいよね」 「ゴチャゴチャうるせぇ、ふたりとも出ていけっ!」 「うん、半端に脱げてるボクサーブリーフを回収してくね……みぎゃ!」  桃尻の中心を指でくっと押された。

ともだちにシェアしよう!