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第97話

「大和、おまえは潮干狩りに行くとアサリを掘るのはそっちのけで、アサリが呼吸する穴に片っ端から指を突っ込んでいたね」 「やっ、やだ、ぐりぐりしないで、やだ」  空良は、ベッドの脚を摑んでずりあがった。ところが腰が浮いたのにつけ込まれて、指が谷間に沿って蠢く。 「こっちの、ちっちゃい(あな)を悪戯したくなるのは男の子の習性だよね」    武流が猫なで声で言葉を継ぎ、下着とひとまとめにハーフパンツをずり下ろす。それは焚き火に薪を()べる、あるいは猫にマタタビを与えるに等しい所業だ。  ぷるん、と真珠の光沢を放つ双丘がまろび出た。大和は自身の根元を握りしめて、どうにか暴発するのを免れた。いや、ちょびっと洩れた。  挑発には乗らねぇぞ、と歯を食いしばりつつも、悪辣な手が尻たぶを割り広げにかかれば、ガマン汁をにじませて先っぽが疼く。見え隠れするすぼまりに物欲しげな視線をそそいでしまう。  ごくりと喉仏が上下したころ、小沢夫妻はショッピングモールで息子たちの夏服を物色していた。おそろいの物を。親同士が再婚したのが縁で兄弟になった三人だが、打ち解け合って何よりだ──と。  そう、長兄が次兄の童貞喪失にひと肌脱ごうとするほど仲睦まじい。 「やることがたくさんあるからだから、離して、おお兄ちゃん」 「大和、チャンスの女神は前髪しかなくてね。しっかり摑まないと逃げられてしまうんだよ。せっかくバックヴァージンをいただく順番を譲ってあげる気になっているんだ、おいで」    襞がひと片めくられて、神秘のヴェールの内側が匂やかにちらつく。大和は生唾を呑み込みつつ、ぷいと顔を背けた。  はち切れそうになっているムスコに問いかける。あの、楚々として、めくるめいちゃうこと請け合いの孔に突撃したいか? よだれを垂らすように先走りで指がぬらつく。  しかし、ここで獣に変身したが最後、 「ちい兄ちゃんなんか大っ嫌い!」  心が折れるどころか木っ端微塵になるほどの銃弾を浴びるのは必至。  合体を果たすのは両思いになってから甘々なムードの中で……という心の奥底にひそむ願望を切り刻むように首を大きく横に振った。

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