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第9章 おにいちゃんズの敗北

    第9章 おにいちゃんズの敗北  そんなこんなのすえに、迎えた六月の第三土曜日。昨夜来の雨があがり、天使の梯子と呼ばれる光の柱が、薄雲を切り裂いて何本も地上へと延びる。  それは、夏至祭のオープニングを飾るにふさわしい神々しい眺めだ。  まず講堂で開会式が執り行われ、中・高等部の全生徒が一堂に会したさまは、壮観だ。  がり勉くん系からチャラ男系まで、よりどりみどりの男子、男子、男子の群れ──妄想のネタの宝庫で、まさしくここは腐女子の楽園。  さて、校長先生が訓話に組み込んで夏至祭の(いわ)れを長々と語る。  降壇したあともげんなりした空気が流れるなか、実行委員会のほうから最優秀クラス賞の選出方法についての説明があり──ぶっちゃけ人気投票によるものだ──つづいて当麻が壇上にあがった。 「スケジュールの都合上、手短にすませたい(校長への当てつけかよ、と忍び笑いがさざ波のように広がった)。諸君、練習の成果を発揮するとともに大いに楽しもう」  威厳に満ちた姿に空良は見蕩れた。なんの変哲もない制服のシャツでさえ、当麻がまとうと老舗のテーラーで仕立てた物のように際立つ。そう、ぽわんとなるそばから、うつむいた。  ちい兄ちゃんの想い人を見つめるなんて厚かましい、禁断症状が出るかもだけど我慢しなくっちゃ。  一事が万事こういった調子で、相変わらず勘違いという名の迷宮の中をさまよっていた。  ともあれ海鵬学院の恒例行事が始まった。四十人編成の鍵盤ハモニカ楽団がジ〇リ音楽をメドレーで演奏して、音楽堂に集った父兄やOBをなごませる。  講堂側の一番手は高等部三年二組によるミスターコンテストで、なのに男の()が何人か混じっているのはお約束。  次いで中等部一年五組の演目は題して雑巾早縫い競争で、号令一下ちくちくと針を動かしはじめるシュールさがウケた。  他にも出席番号順にお題を出していくリレー方式のコントあり、某アーティストのMVを完コピしたダンスパフォーマンスあり、と盛り沢山だ。

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