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第117話

 演技だろうが、にキスしやがったら校舎の屋上から蹴り落とす。  嫉妬の炎がためらいを焼き滅ぼし、大和は酒井を突き飛ばすのももどかしく空良の真正面に立った。そして、吼えるように思いの丈をぶちまける。 「おまえが好きだ。試作品のモニターとかって嘘こいて弄ぶよか、手をつないで水族館にアシカショーを観にいったり、おやすみのチュウなんかして、ふつうにイチャつきてぇ」    観客の九十・九パーセントが、この爆弾発言は演出のうちだと思った。意地悪トリオのひとりが実はチンデレラに懸想していたとは、なんて斬新などんでん返しなんだ。    空良は()に戻って目をしばたたいた。あわててチンデレラの仮面をかぶりなおすと、ツインテールをなびかせて飛びのいた。  その拍子にスカートが盛大にめくれて、パンチラをかぶりつきで拝む幸運に恵まれた最前列の生徒が、もぞもぞと足を組み替えたのはさておいて。  愛らしい顔がプンスカとゆがむ。ん、もう、ちい兄ちゃんたら大事な場面で変なアドリブを入れて、ひどい。  決死の告白が実を結ぶどころか一顧だにしてもらえないとは、離陸しきらないうちに撃ち落されたに等しい。  ところで観客のうち残り〇・〇一パーセントのひとりめは、武流だ。  OBのコネを使って特等席を確保し、筋書通りに花火があがるのを待っていた彼は、にんまりと眼鏡をひといじりした。  弟よ、グッジョブ。満座の中で自爆するという生き恥をさらせば心が折れる。そこにつけ込んで洗脳し、僕に忠実な(しもべ)像を植えつけてやろう。  空良は空良で、大和を傷つけるとは残酷だね、と罪悪感を刺激するのと並行して言いくるめてしまえば、エロタイムの復活だ。    さて、ふたりめは当麻で、彼はぎりぎりと唇を嚙みしめた。外堀を埋めるように大勢の観客──言いかえれば証人がいる場で告ってのけるとは小癪な真似をしてくれた。  空良が情にほだされて、うっかりOKしたら洒落にならない。だだだだだ、と通路を駆け下りるが早いか舞台に飛び乗った。

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