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第120話

 チンポならびに、しごくは〝天国と地獄〟の軽快なメロディーと不思議なくらいマッチした。  おいしすぎるネタの大盤振る舞いに新聞部が号外を出す準備をはじめたのも無理からぬこと。  暴露は真実か、はたまたデマカセか、と客席がいっそうざわつく。  あんな可愛い子にしごいてもらうとは羨ましい、地獄に堕ちてしまえ。フラれた腹いせに中傷するなんて最低だ──というぐあいに。    武流は、ほくそ笑んだ。空良と大和を追いつめて支配下に置くには世論を味方につけてもうひと押し、と考えて、 「生徒会長と大和をいっぺんに手玉に取っておいてカマトトぶった発言を繰り返すとは、魔性の天然だねぇ」  聞こえよがしに呟いた。  この、ややこしい事態を招いた責任の一端は空良にあると、ほのめかしたわけだ。  目論見は図に当たり、観客は当麻を支持する組と大和を応援する組と空良を擁護する組に分かれて、喧喧囂囂(けんけんごうごう)。  客席が狂乱状態に陥り、空良はおろおろした。それもつかのま小さな拳を握って大和から身をもぎ離し、 「お願い、今だけ空気になって」  早口で当麻に囁きかけた。そして再びチンデレラの仮面を着けて、脱線した場面からやり直そうとしたものの、アラスカ行きの飛行機がその針路を南極へと転じたような状況だ。  これでは何をどう演じてもシラけるだけかも。そう思い、レースを華やかに波打たせながらくるくると回り、曲がりなりにもお芝居を締めくくる科白をひねり出した。

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