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第135話

「先輩、ドンマイ! じゃあ、おれの番ね」 「おれの、番……とは?」    黒目がちの目が悪戯っぽくきらめく。空良は梃子の原理を用いて、えいっ! とひと回り大きな躰をソファに横たえた。  つまり日常的に料理をするなかで培ったノウハウを応用して、当麻という食材の旨みを引き出しやすいよう、うつ伏せに。  不意討ちに成功し、賢者タイムなのも相まって程よく力が抜けている。スラックスとひとまとめにボクサーブリーフを脱がせても当麻は抗うタイミングを逸した様子で、じっとしている。  先輩は遠慮して言わなかっただけで、本当はバックヴァージンをもらわれたがっているんだ。  空良は確信を深めて、いそいそとハンドクリームを塗りつけた。  どこに? もちろん陰門に。 「いやいや、ちょっと待て。きみは抱かれる、俺は抱く。適材適所を大切にすべきだ」 「おれだってバックヴァージン欲しいもん。えっと、征服欲? は男の子の(さが)でしょ」  図らずも当麻自身が手本を示してくれたおかげで、前戯の全行程がなめらかに進行する。  さしずめ促成栽培のセックス版だ。花が咲き匂うなり、さくさくえぐり込む。 「まさか立場が逆転するとは……黒歴史、いや、平等性に則っていると言えなくもな……ん、んっ!」 「ごちゃごちゃ言うと、こうですよぉ、だ」  名づけて〝快感増幅ボタン〟。  その突起に狙いを定めて、ぐりりとえぐり込む。効果覿面、ふにゃんとなっていたペニスが頭をもたげて、空良は白い歯をこぼした。  そのころ音楽堂ならびに講堂では、トリを飾るクラスが準備をはじめていた。閉会式というタイムリミットが刻一刻と迫る。その席上で当麻が果たして〝生徒会長の挨拶〟を述べられるか否かは、神のみぞ知る。  何しろ生徒会室では、リバーシブルな童貞卒業の儀が今やたけなわだ。  とろとろとにじみ出す白濁もそのままに、皺くちゃのスカート姿もなまめかしい男子が、凛々しい男子をアンアン啼かせる図。それは画家がカンバスに、映画監督がフィルムに収めたい、と熱望するだろう光景だ。  中庭でスプリンクラーが作動して芝生に虹が架かる。二頭の蝶が、じゃれ合いながらひらひらと舞う。のどかな午後だ。  参考までに、持続力は空良のほうが上だった。

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