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「おい、酒。日本酒とかあんの?」
「ああ、ありますよ~! ウチ結構こだわってるから」
ミフユが応えて、棚に並べられたボトルを手に取った。モモに目配せして、平静を装って接客するよう指示する。
「お客さん、お酒は強い方? 度数高いのでもイケる?」
「飲めなきゃナメられるっての」
(いちいちウッゼェ……!)
こんな奴だったっけ、と記憶にある男の姿を思い出しながら酒を用意していると、背後から声をかけられた。
「お前、名前は?」
「……ミフユですぅ」
探るような視線を感じて、危機感を抱く。怪しまれている。
「本名は」
気まずさからサングラスを指で直していると、続けざまに尋ねられた。まるで警察の尋問だ。
「ごめんなさいねぇ。ここは昼職やってる人間も多いから、そういうの公開するのはご法度なのよお」
そうか、とあっさり引いた男に、ミフユは疑惑を晴らすようにあえて自分から話しかけた。
「その如月って人は、お友達? それともお仕事関係?」
借金の取り立てでもするのか、と茶化してやろうかと思ったが、自分から素性を明かしていない男をいじるのは危険だ。
思いとどまって何気ない雑談の雰囲気でたずねると、男はずっと寄っていた眉間の皺をふっと解いて、少しだけ表情を和らげた。
「さあな。どっちも……
しいて言えば、前者かな」
「……そうなの」
場の空気が和らいだのを察して、キャメロンが会話に入ってきた。
「お兄さん、お仕事なにしてるの?」
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