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いくつものグラスや皿が吹き飛ばされ、地面に叩き付けられる音が響いたのはその数秒後。
「!?」
けたたましい音が店に響き渡り、和気藹々と話し込んでいた皆が肩を跳ねさせた。
「ちょ、何っ!?」
パピ江がピッチャーを放り出してしまい、床がびしゃびしゃに濡れた。客たちも度重なる珍事に仰天しきり、固まっている。
早く皆のフォローに回りたいのは山々だったが、今のミフユにはそれができなかった。
「てめえ、なんでソレを持ってる? 如月のライターだろ」
「……痛っ、たぁ」
身を乗り出した男に腕を取られ、もう片手で胸ぐらを掴まれていたからだ。
ゆとりのあるシャツを着ていたとはいえ、喉元を締め上げられて息ができない。ミフユはまず首元を引っ張り上げている男の腕を掴んで、ギリギリと離そうとした。
力は拮抗する。
「げほっ」
もがく内にサングラスがずれ、カシャン、とテーブルに落下した。
(やば……っ)
呼吸ができない苦しさに目をすがめながら、ミフユは焦る。だが顔を背けようにも首が回らず、細目で正面の男の顔を見つめた。
「お前……」
地を這うような声で絞り出した男は、目でミフユを射抜くようにきつい眼光を飛ばした。
「如月じゃねぇか…………!」
周りにいた人が『えっ?』と声を漏らすのが聞こえた。特に男が人を探している事情を知っている面々は、ミフユに驚愕の目を向けてくる。
「……っ誰ですかねぇ、アタシはそんな名前じゃないですけど」
「しらばっくれんな!!」
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