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 ミフユがまだ如月美冬として生きていた頃――『やや軟派で女好きの普通の男』だった頃に知り合った仲だ。  その後、流れで鳳凰組という極道組織に入ったときに彼もたまたまやって来て、そこから四年弱ともに激動の時代を生き抜いた。  もちろん、そんな伊吹に対して愛着はある。  むしろ――――過ぎるほどに。  「一体何があったらそんなんになるんだ」  じっとりと睨みつけてくる伊吹に、なんと言ったものか考える。  向こうからすると、『昔の友達が急にオカマになった』という認識なのだろう。  しかし、こちらからしてみれば……。  「何もないわよ。本当の自分を隠さなくなっただけだわ。  こっちが本当のアタシなの」  絶句して見つめてくる伊吹に、苦い笑みを返す。  「……ま、それはいいじゃない」  「よくねえ。そもそも、なんで突然組を抜けて」  「アンタ、アタシにそんな質問するためにここまで来たの?」  ぴしゃりと遮ると、伊吹は口を閉ざした。  「いいえ、それにしちゃ遅いわよね。こっちも見つからないように隠れてはいたけど、所詮は都内だもの。  探そうと思えばいつでもできたでしょうに、今さら本腰入れて捜索かけたのには理由があるんでしょ?」  図星だったようで、伊吹は居心地悪そうに顔を逸らした。  「いいわよ。虫がいいなんて言わずに、話くらいは聞いてあげる。じゃないとまた押しかけて来そうだしね。  ほら、話してみなさいな」  くっと眉根を寄せた伊吹は、そろそろと視線を戻す。やや唇を尖らせて、ばつが悪そうにもごもごさせた。  その様を見て、ふと思い出す。 (ああ、この子がタバコ吸いたいときの癖だ)  タバコを吸いたがるのは、お母さんのお乳を求める赤子の本能だなんて俗説があるが、そのせいか伊吹のこの癖にはいつも母性を刺激される気がする。  「実はよ」 (可愛いわぁ、相変わらず)  「お前に、提案があって……」  「………………」  「おい、聞いてるか?」  「あっ。き、聞いてるわよ!」 (ヤバいヤバい、つい浸っちゃった)  昔の記憶に思いを馳せていると、目の前の現実の伊吹に詰め寄られた。

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