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 「あっ……!」  ズダダダダと鈍い音を立てて階段を転げ落ちた身体は、ほとんど落ちきったところでミフユが受け止めた。  続々と店から顔を出してきたキャストや客から悲鳴が上がるが、ミフユは冷静に彼女の体の状態を確かめる。  「外傷は目立たないけど、頭打ったわね……誰か、救急車!」  救護を呼びかけながら、信じられない気持ちで華奢な体を抱き締める。  虫、虫と叫び、怯え切った顔で暴れていた。  青白い額の下、ぴったりと閉じられた瞼の下にはどす黒い隈ができている。  「なになに、何だってのよ……」  頭部を動かさないように支え直していると、ぽとりと何かが下に落ちた。  「ん……?」  モリリンの懐から零れたらしいが、音が聞こえなければ見逃しそうなほど小さい袋だった。  物の正体を見極めようと目を凝らして、瞠目した。  床に落ちた袋には、粉々になった結晶体が詰められている。  電灯に照らされて、赤く光る……。  「【禁じられた果実】(Forbidden Fruit)……」  「(くだん)のクスリだな」  いつの間にか寄って来ていた伊吹が、袋を覗きこんで断定した。  「どうしてこの子が?」  「こんな裏びれた飲み屋街にまで浸透してきてるらしいな」  ミフユは、腕の中に抱いたモリリンの顔を見つめる。痩せこけ、血の気の失せた彼女が、バーの中で明るく笑って歌を歌っていた頃を思い出す。  落ちていた袋を拾い、ミフユはぼそりと呟いた。  「こいつを流してるのは、彩極組って噂だったわね」  低い笑い声が聞こえ、反射的に上を向く。

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