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 写真のイケメンを顎でしゃくって、伊吹はにやりと笑う。  「水無月が、この写真に写ってるホストクラブ【EDEN】で談合を行うって情報が入った。  相手は麻薬売買で稼いでる中国系マフィア……。【禁じられた果実】がらみだ。間違いねえ」  「で?」  「当日【EDEN】に潜って、取引現場を押さえる。それしかねぇだろ」  迷いなく言い切る伊吹に、ミフユは渋面を見せる。  「無謀よ」  「は、ヒヨッたか如月? 昔のお前ならノリノリで乗ってきたぜ」  「だからいまは如月じゃないって……」  「喧嘩。殺し合い。血みどろ。お前が好きそうなもんだ」  「アタシを何だと……」  言い返そうとして、額を抑える。  (喧嘩……はさておき――ホストクラブ。イケメンホスト。……伊吹ちゃんと共同作業)  【大冒険】の大事なキャスト・モリリンの仇討ちというのも、もちろん、もちろんあるが、というかそれが本来の目的なのだが――  ――それを差し置いて、少しワクワクしてしまっている自分がいる。  (人の(サガ)ってのは変えらんないものね……)  ミフユは椅子の背もたれに寄りかかって、腕組みした。  「分かった。談合はいつ?」  「お前ならのってくると思った」  にやりと笑うと、伊吹は目の前に置かれていたトーストサンドを掴んで豪快に食べ始めた。  「一週間後の晩だ。それまでに作戦を詰めるぞ」  「了解」  ミフユもようやく料理に手を付けつつ、当日の計画を練り始めた。  いつの間にか太陽が地平線から頭を出して、天に向かいつつある。  徐々に客足も増してきた店内に煌々と朝陽が射し込む。  「――よし。こんなとこね」  「ああ」  プランを固め終えた二人は、顔を上げて視線を合わせた。

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