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 ミフユはその時、漠然とした既視感を抱いた。 (八年前は、よくこんな風にカチコミの段取りを立てたっけ。二人で肩を突き合わせて)  あのときとは、お互いの関係も、自分の口調も違っているけれど。 (なんだか懐かしい、のかも)  ちょっとだけ昔の自分に戻った気がして、唇を緩めた。 ・・・  一週間後。  「来たわね、伊吹ちゃん」  「――おう」  夜八時、【大冒険】を訪れた伊吹をミフユは粛々と招き入れた。  「入って。はい、こっちに。  アキちゃん! モモちゃん!」  なぜかそのまま彼を店のバックルームに通すと、カウンターに立っていたキャスト二人を呼ぶ。  店の方はパピ江やキャメロンに任せて、四人は更衣室にてさっそく準備の大詰めへと入った――。  最終準備を終えた二人は、伊吹の舎弟が運転する車に乗り、新宿歌舞伎町に降り立つ。  「さあ、行くわよ」  サングラスの下、鋭く目を光らせたミフユに対し伊吹も大きな声で頷いた。  「ああ!」  キリッと強い覚悟が秘められた表情で、大きな一歩を踏み出した伊吹の足が―― ――カツン、と音を立てて地面に引っかかった。  「ぐあああ!」  「きゃっ!」

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