37 / 191

2−19

 「えっと、二人組なんだけど。いいかしら?」  「はい。お二人様でございます、ね……」  ニコニコと上品な笑みを浮かべて振り向いた受付係は…………そのままピシリと硬直した。  ボーイの彼よりも背の高い女性(?)二人組。  化粧の腕は上々だが、どことなく服がパッツンパッツンである。  ミフユは一応OL風味といえど、タイトスカートの下からたくましい脚が伸びており、夜更けにも拘わらずサングラスをかけている。  伊吹にいたっては白ブラウスに黄色のスカートというガーリーな服装でありながら、髪型がオールバックだった。  いま、自分たちが『やばい人』を分かりやすく体現した状態になっているのは、ミフユも薄々勘付いている。  「二人分……お席は空いてるかしらね」  入口で膠着状態に陥った三人は、しばし見つめ合う。  「お二人様……女、性の……方でしょうか」  ボーイの細められた目の奥に『違うだろ』という確信が滲んでいるが、口には出されない。  (い、伊吹ちゃん。伊吹ちゃん!)    (なんだよ)  (バレちゃったかしら!?)  小声で慌てて耳打ちすると、伊吹は鼻で笑って返す。  (バレねえわけねぇだろ、こんなゴツいのが二人も) ――――目が死んでいる。  「お客様……」  すまなそうに顔を翳らせたボーイは、腰を低くして頭を下げた。  「……誠に申し訳ありませんが、当店は完全予約制でして」  「嘘つけ、入口の看板に思いっくそ『予約不要』って書いてあんぞ」  きわめて大人な言い回しで入店拒否をするも、嘘は即座に伊吹に看破される。  ボーイの営業スマイルがニコニコニコニコと深まっていく。  「これは、申し訳ございません。  えー大変申し上げにくいのですが、当店は“女性のお客様”をターゲットとしたお店でして……その、男性お二人だけというのは」  「ええーっ!? アタシ心は女なんですけどぉ!?」  ここでミフユが食い下がる。  (バレたらバレたで強行突破!)

ともだちにシェアしよう!