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「えっと、二人組なんだけど。いいかしら?」
「はい。お二人様でございます、ね……」
ニコニコと上品な笑みを浮かべて振り向いた受付係は…………そのままピシリと硬直した。
ボーイの彼よりも背の高い女性(?)二人組。
化粧の腕は上々だが、どことなく服がパッツンパッツンである。
ミフユは一応OL風味といえど、タイトスカートの下からたくましい脚が伸びており、夜更けにも拘わらずサングラスをかけている。
伊吹にいたっては白ブラウスに黄色のスカートというガーリーな服装でありながら、髪型がオールバックだった。
いま、自分たちが『やばい人』を分かりやすく体現した状態になっているのは、ミフユも薄々勘付いている。
「二人分……お席は空いてるかしらね」
入口で膠着状態に陥った三人は、しばし見つめ合う。
「お二人様……女、性の……方でしょうか」
ボーイの細められた目の奥に『違うだろ』という確信が滲んでいるが、口には出されない。
(い、伊吹ちゃん。伊吹ちゃん!)
(なんだよ)
(バレちゃったかしら!?)
小声で慌てて耳打ちすると、伊吹は鼻で笑って返す。
(バレねえわけねぇだろ、こんなゴツいのが二人も)
――――目が死んでいる。
「お客様……」
すまなそうに顔を翳らせたボーイは、腰を低くして頭を下げた。
「……誠に申し訳ありませんが、当店は完全予約制でして」
「嘘つけ、入口の看板に思いっくそ『予約不要』って書いてあんぞ」
きわめて大人な言い回しで入店拒否をするも、嘘は即座に伊吹に看破される。
ボーイの営業スマイルがニコニコニコニコと深まっていく。
「これは、申し訳ございません。
えー大変申し上げにくいのですが、当店は“女性のお客様”をターゲットとしたお店でして……その、男性お二人だけというのは」
「ええーっ!? アタシ心は女なんですけどぉ!?」
ここでミフユが食い下がる。
(バレたらバレたで強行突破!)
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