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釘を刺してくる伊吹に答えつつ、
(男に貢ぐのも悪くないかも……)
心の内では邪な思いを抱くミフユであった。
「どもども~トモキでーっす! お姉さんたち二人?」
「やぁん可愛い~! トモちゃんねっ」
初回入店なので、色んなキャストが入れ替わり立ちかわり卓につく。
何番目かにやって来たトモキという青年は、学生感のある明るい笑みを浮かべてぶはっと噴き出した。
「なんだ、オネエさんか」
笑いながらも特に引いた様子もなく、さっそく接客に入っていく。
軽い自己紹介から話題はやはりミフユたち自身のことに流れていき、トモキが顔色を窺いつつ訊ねた。
「ユキコさんは、男が好きな人?」
ユキコというのは今回の潜入用に使っているミフユの偽名だ。
ミフユは一度ちらりと伊吹のほうを窺い、それからあっけらかんと答えた。
「そ。でも、こっちのイブ美ちゃんは違うのよ。こんなナリだけど生粋の女好き」
イブ美ちゃんとは伊吹の仮名である。
「へえ、そうなんだ」
「アタシがどうしてもホスト行ってみたいってごねて、付き合ってもらっただけなの」
伊吹が頷き、煙草を咥えながら片手を挙げる。
「ま、そういうことだ。
つーわけであんまりこっちのことは気にすんな」
他のホストに火を灯してもらいながら、伊吹は密かに店内に視線を巡らせた。
・・・
「――でさあ、うちまだ小学生の妹もいるからぁ? 俺がジャンジャン稼がなきゃって? グスッ」
「うんうん、そっかぁ。トモちゃん、まだ大学生なのに偉いわねぇ」
十数分後。
ミフユたちの席では、ホストが泣き崩れながら身の上を語っていた。
交代でやって来たホストがぎょっと固まる。
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