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「ちょ、トモキ、なんかここだけ場末のオカマバーみたくなってんだけど……」
一応そこらへんにいるOLのつもりなのだが、ミフユの日頃のママスキルが発動されてしまい、人生相談タイムが始まったのだ。
「いやいや! ユキコママすっげーんだよ。とりま、先輩もここ座って。ズビッ!」
「座ってじゃなくてお前と交代なんだって、もう」
洟をすすりながらこまねくトモキに先輩ホストは呆れ顔だが、渋々向かいの椅子に腰かける。
「まあまあ、ちょっとくらいいいじゃない。先輩ちゃんもどうぞ」
――――そして、十分後には先輩もまた自分の恋愛相談を始めていた。
「え? やばい、ママまじで神。え、どっかに店持ってます? 俺客で行きます」
「やあねえ、そんな大したもんじゃないわよ」
「ママー! 俺の話も聞いてください!」
ミフユが持ち前のトークスキルと男好きでホストたちを引きつけている間に、伊吹は静かに【EDEN】の観察を続けた。
時折ミフユと視線が合うが、まだそれらしい人影はないらしく首が横に振られる。
引き続き、水無月たちが入店するのを待つ。
しばらくはただただ女たちが酒と男に狂い、ミフユが号泣ホストたちに鼻の下を伸ばす地獄絵図が続くだけだったが、一時間を過ぎたころにまた入口のベルが鳴った。
ぞろぞろと入ってくるスーツの男たちは、異質だった。
ホストにしてはだいぶ年増で強面だ。目つきの鋭さでその筋の人間だとわかる。
しかし客にとっては見慣れたものなのか、大した反応はない。
伊吹は横目にその集団を入れて、まだヘラヘラ笑っているミフユの脛を蹴り飛ばした。
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