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(だけど、マフィアの方はなんだかプロっぽいわね。近接で闘 り合うのは骨が折れるかも。文字通り)
「ユキコさん、ちょっと、ぁっ!」
「あ?」
完全に思索にふけっていたミフユは、肩を抱いていたホストからぱんぱんと腕を叩かれて我に還った。
「ち……乳首、つままないで……」
気付くと、腕の中でトモキが顔を真っ赤に蒸気させていた。
何事かと思えば、ミフユの両手の指の中にそれぞれかわいらしい突起が挟まれている。
「あらごめんなさいトモちゃん!」
つい、無意識に手が動いていたらしい。
が、ミフユは謝りつつ、にっこりと笑みを深めてさらに体を密着させた。
「どわぁっ!?」
声を上げる彼は、学生と言っていただけあってずいぶんあどけない顔立ちをしている。首筋をするりと撫でるだけで顔を赤くして、ぷるぷると震えた。
「んー? 意外とうぶなのね。もしかして経験ないの?」
「お、おお女の子と付き合ったことくらいありますよ! ひぁっ」
若手ホストの首筋に顔をうずめてソファの背もたれに押し倒しながら、向こう側のVIP席の様子を見た。
厳つい男たちは、銀色のアタッシュケースを広げてひそひそと話し込んでいる。
じっと見ていると、水無月がケースから何かを取り出す。
その手に握られているのは――
袋だった。中身が赤く反射する。
(【禁じられた果実】!)
「あ、あっ、ユキコさん……!」
「トモちゃんかーわいいー! Twitterに写真あげちゃおー!」
「やぁっ……!」
片手でトモキを弄びながらスマホを構える。
彼を撮るふりで画面に取引現場を収めながら、シャッターを押した。
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