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 ミフユが証拠写真を転送したため、水無月が先に鳳凰組に手を出した事実はもう取り消せない。  抗争の火種を作ってしまった水無月にできることと言えば、この場で鳳凰組を制圧する力技くらいだ。  水無月の怒号が飛ぶと、強面のヤクザたちがゆらりと立ち上がり、それぞれ酒瓶や懐の小刀を手に取る。  「オラオラァ彩極組の連中はどこだぁ!」  「お、お客様っ! 困りますちょっと、うわぁっ!」  ほぼ同時に、入口から鳳凰組のメンツが襲来した。鉄パイプやドスを手にしている。  「人のシマで勝手な真似しくさって、ブッ殺すぞ!」  動揺するホストの声と女性の悲鳴が上がる中、開戦の火蓋が切って落とされた。  「死に晒せ!」  さっそく伊吹が殴りかかられるが、伊吹は彩極組員の拳を軽くかわして、顔にパンチを叩きつける。男が鼻血を噴き出して吹っ飛んでいき、床に背中から叩き付けられた。  「クソ、“オオトリの師走”が相手じゃ……!」  「何やってんだ! ひるまず攻めろッ!!」  水無月がどやしつける。  【禁断の果実】を後ろ手に抱えて、部下たちに指示を下した。  「下っ端のザコどもは宮田一人に任せとけ! あとの全員こっちに残れ……いい機会だ、このさい師走を殺っちまえ!」  「名指しよ? 恨まれたものね、伊吹ちゃん」  がなる男を尻目に笑いかけると、伊吹もまた唇に弧を描く。  「八年ありゃ出世するんだよ、俺も」  「隣のよく分からんオカマもついでだ!」  「げっ」  頬を引き攣らせるミフユに伊吹が声を上げて笑う。  「久しぶりのタッグだ。足引っ張んなよ」  構えをとりながら言う。  じりじりと囲んでくる敵の顔を見回して、ミフユはふっと息を吐き出した。  (――アタシと伊吹ちゃんなら、いける)  そして、勢いよく駆けてきた男の顎に拳を入れた。  「がっ!!」  綺麗にアッパーが決まる。男の身体が舞い上がり、手に『ゴキッ』と骨が砕ける衝撃が伝わった。  目の前の敵は倒れ伏したが、すぐに次が来る。  間髪入れずに応戦しようとした。  そのときだ。異変が起こったのは――――。

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