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 蹴り上げられて、肩を革靴で踏みにじられる。下から見上げると、相手が相当に鍛えられた体をしているのがありありと分かった。  「ワタシはチガウ」  「い゛……ッ!」  ぐりぐりと肩を踏みながら自慢げに語る。  「ワタシは、他人を踏みつける覚悟ができている。迷いマセン。ワタシは身も心も男。断言できるヨ」  タイトスカートの中心を押し上げるミフユの隆起を見て、鼻で笑った。  「殺すべき敵に踏みつけられてココをパンパンにするようなヘンタイは、男の世界じゃ生きていけないネ。レディボーイ」  「これは違っ……!」  かっと顔に熱が集まる。  薬か何かのせいだと言い返そうとしたとき、倒れていた伊吹ががばりと起き上がって駆け出した。  「水無月ィ!!」  「ひぎゃあああっ!」  ダァンとテーブルを蹴って水無月の上に落下した伊吹は、そいつの胸ぐらを掴み上げて吼えた。  ケースを抱き締めたままガクガクと震える水無月に額を擦りつける。  「捕まえたァアアア~~~~」  「ひぎぃいいいっ」  李に与えられたダメージは回復したらしい。それを見てほっとする。迫る顔はまるで悪魔だが。  「おや、あっちの男は思ったより骨があるらしい」  李は微笑(わら)って後ろを振り返る。  ミフユからは興味を失ったようで、踏んでいた足を退けた。  「クソッ……くそぉっ!! なんで俺がこんな目に、俺は違うのにっ」  窮地に追いやられた水無月は、肩で息をしながら首を振る。  「俺じゃない」「俺じゃない」としきりに繰り返す男に、伊吹は顔を顰めた。  「あァ? 違う? テメェ以外に誰がい・ん・だ・よ」  伊吹が腰を下ろして、掴んだ胸ぐらをガクンガクンと振る。  「まずは、鳳凰組のシマで流してるクスリのルートを洗いざらい吐いてもらおうか。今流れてる分はすぐ回収してぇからな。  その後でウチの事務所まで同行していただいて」  「クスリ流してるのは俺じゃなくて――――」  「やかましい!!!」  怯えた声を上げる水無月に、伊吹が腕を振りかざした。  ――――空気を割くような破裂音が響き渡ったのは、水無月の頬に拳がめり込む寸前だった。  「は」  伊吹が目を見開く。

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