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 抱きとめた彼の体は、服越しにも分かるほど火照っていた。  「気づかないであんな暴れて……ホンット馬鹿ね」  「どうしたんすか!?」  異常に気付いた狗山が駆けてくる。こちらはピンピンしていた。  (仔犬ちゃんにはなんの異常もない。  ……ってことは、薬を盛られたタイミングは、たぶん仔犬ちゃんたちが合流する前)  ホストのトモキが、ちょっと体を弄っただけでくったりしていた様子を思い出す。あれはまるで、今の自分たちのようだ。  「あの酒か……」  ナンバーワンホストの遥斗が直々に差し入れてきたあのボトル。  あれに何かが仕込まれていた?  (あのイケメン君がグル?)  荒い息をこぼしながら、ミフユは腕の中の男を見やる。  「伊吹ちゃん……大丈夫?」  「……じゃ、ねっ……」  弱々しく首を振る伊吹を抱き直す。赤らんだ顔をミフユの胸に押しつけるようにして、呻いている。  密着した胸から伝わってくる、伊吹の心臓の音。  どくり、どくりと、二人分の鼓動が共鳴するようで。  間近で見つめた伊吹の黒い目が、潤んでいるように見えた。  「伊吹ちゃ…………」  頬にそっと手で触れて、顔を寄せる。  ドキドキとうるさい心臓の音をどうにか飼い慣らしながら、唇を触れ合わせようとしたところで――。  どこかからサイレンの音が聞こえてきて、ハッと我に還った。  (――ここから逃げなきゃ!!)  「おい!!」  「ヒッ!?」  周りに集まってきていた鳳凰組の組員たちに、怒鳴りかける。  腹から声が出てしまったので大変太い声になったが、今はそんなことに構っていられない。  「車出して! 逃げるわよ!」  「はっ、はい!」  指示を出せない伊吹に変わって、ミフユが指揮を執った。

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