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 「嫌なら殴り飛ばして。……気持ち良い?」  「ん……いい」  柔らかな肯定に、どくりと心臓が鳴った。  伊吹の腰を抱き、服の隙間から手を入れて素肌を撫でる。  「ぁ、あ」  伊吹は微かに息を漏らすだけで暴れない。前の席の狗山は運転しなければならないしで、誰も止める者がなかった。  (ち、ちょっとこれ、ヤバい!?)  どこかに残っている理性はそう訴えているが、手は止まらなかった。  「あっ」  指に引っかかった硬い粒を摘む。  小ぶりなそれをくりくりと弄ると、伊吹は眉を下げて喘いだ。  「きさら、そこ、っ」  「嫌じゃないでしょ……?」  ちゅっとキスを落とすと、ん、と返事が返ってくる。なけなしの良心すらどろどろに溶かされていくのを感じながら、ミフユは伊吹の体を堪能し尽した。  「つっ着きました! お二人さん! 着きましたってっ」  「……ありがと」  【大冒険】の前に車を停めて、狗山が後部座席のドアを開ける。  「俺はどうすればいいんすか? 組に連絡? 救急車?」  ミフユは力の抜けた伊吹を抱えながら、据わった目で狗山を見据える。  「いらない。  この子はアタシがなんとかするから、帰って」  「えぇっ……」  狗山はミフユと、赤い顔でぐったりしているボスとを見比べて戸惑う。  「でも」  「アタシがついてるっつってんの。……邪魔したらタマ潰す」  「ええ……」  狗山はしばし視線を行き来させて、やがて「うん」と頷いた。  「タマ潰されるのは嫌だなぁ……息子欲しいし」  ミフユの声音に並々ならぬ本気を感じ取った舎弟は、結局己の息子の安否を優先させた。  「じゃ、あとはお願いします。……くれぐれも、オレが伊吹さん置いて帰ったってことは内密に」そう言い残して、狗山のバンは去っていった。

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