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「あ、靴があるわ。いるいる」
「そう? じゃあ勝手にお邪魔するわよ!」
モモとキャメロンの声だ。
どたどたと上がってくるのが聞こえて、ミフユはゲッと顔を顰めた。
「あれから連絡つかないから、心配で来ちゃったわよおん!?」
豆鉄砲を喰らった鳩のような顔をしている伊吹を隠す間もなく、キャメロンが寝室に入ってくる。女装していないガテンモードだ。
「あらあらおはようさんっキャアアアアアア――――!!!」
「うっさいわよメロンちゃん!」
ずかずかと上がってきたキャメロンは、裸のミフユたちを見て乙女のように悲鳴を上げた。
「なになに」と他のオネエ達も続々やって来ては、中の様子を見て驚愕する。勢揃いだ。
みんなに伊吹の肌を見せるのが嫌で、急いで彼をシーツ巻きに仕立て上げたが、その分ミフユは真っ裸になる。
「え、嘘っ」
アキもひょっこりと顔を出している。申し訳なさそうにミフユとシーツの塊を見た。
「ごめんなさい。ミフユさん、昨日途中でお店を空けて、そのまま帰ってこなかったから」
ヤクザ絡みの話をみんなにするわけにもいかず、昨日はただ『野暮用があるから女装を手伝って』としか言わなかったのだ。
それから連絡を入れる余裕もなかったので、心配させてしまったようだ。
「ママ、アキちゃんずっと気にかけてたんだからね? 二人して女装して、怪しいバーにでも行って事件に巻き込まれたんじゃないかって」
「ごめんモモちゃん、アキちゃん」
(あながち間違ってないんだけど)
前ママ時代からの付き合いのモモには、酔い潰れた日に起こしてもらうこともあるので、部屋の合鍵を渡している。それで入ってきたんだろう。
「……にしても、ママって意外とデカいのね」
オフで男装眼鏡モードのパピ江が茶々を入れてくる。
「金取るわよ」
それをあしらっていると、隣のシーツの塊が身じろいだ。伊吹がにょきっ、と上半身だけ出てくる。
「如月てめえ、いきなり人を巻きやがって」
「伊吹ちゃん」
だるそうにガシガシと頭を掻いた伊吹は、犬でも払うみたいに手を振った。
「服着るから散れ。邪魔邪魔」
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