83 / 191
3−24
「やだ嘘っ、遥斗!?」
「遥斗様だわ!」
沸き立つモモとパピ江に驚く。
「あら、皆知ってるの?」
ぽかんとすると、キャメロンにバシッ!と肩を叩かれた。
「なあに言ってんのママ!
【EDEN】の遥斗って言ったら、今をときめく超人気ホストじゃないの。最近じゃテレビでも見かけるわよっ」
「え、そうなの? 思ってたよりだいぶ有名人なんだ」
「もうママ、遅れてるっ! こんなすごい人に失礼じゃない」
ぷんぷんと怒るキャメロンに、遥斗は制止するように手を振った。
「いえ、僕がまだまだママさんのお眼鏡に叶わない若輩者だということです。精進しますよ」
そして、いちいち美貌が煌めく。
若くして大成しているだろうにそれを全く驕らない様子に、ミフユは唸らされた。
「今時めずらしいくらい謙虚な子ね」
「僕たちは、人の引き立てがあってこそ輝ける存在ですから。分はわきまえています」
遥斗が【禁じられた果実】蔓延に絡んでいる疑惑は晴れない。が、やっぱり完膚なきイケメンである。
ほう、と思わず惚けてしまっていると、彼はカウンターの端にいたキャストに目を留めた。
他の皆への挨拶もそこそこに、彼女に向かってありったけの笑顔を向ける。
「こんばんは。来たよ、アキ」
「遥斗さん!」
営業スマイルにしては全力の、こちらが焼き尽くされそうなほど眩しい遥斗の笑み。
そして、ポッ、と頬を染めて瞳を潤ませたアキに、その場の全員が察した。
「やだっ! アキちゃんもしかして――痛っ!」
ずずいと躍り出たモモを押しのけて、キャメロンがアキの肩に腕を回す。
「ちょっとアキちゃん! アンタの彼って、まさか――
――まさかまさか、遥斗なの!?」
「え、えっと……」
はい。そうなんです。
こくりと頷いたアキに、イヤァ~と力強い歓声が沸く。
「アンタ天下の【EDEN】ナンバーワンとイイ関係なの!?」
「ちょっと、いくら可愛いからって! あらやだやっぱホント可愛いわぁ」
「アキちゃんも隅におけないわね~!」
皆が皆、どさくさに紛れて遥斗にセクハラタッチしつつ冷やかす。
腰やら胸やらを触られまくっている遥斗は慣れた風で、平然としているが、アキはどんどん赤くなっていく。
皆はそんな彼女を見て、楽しそうに笑っていた。
(……ま、まじか)
ミフユ一人を除いて。
(マジなの? えー……!? 本当に!?)
事態に追いつけず一人取り残されたミフユは、声には出さず焦りに焦りまくりながら状況を整理する。
が、全く追いつけない。
「遥斗さん、今日はお仕事大丈夫なんですか?」
「うん。少し店を覗いて、後は任せて来たんだ。最近アキに会えてなかったから」
嬉しそうに笑うアキを見て、言葉を失う。
(アキちゃんがベタ惚れしてる相手が、遥斗だったなんて)
ともだちにシェアしよう!