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「坊主がこんな時間にここに来んじゃねえよ!」
と叫んだ奴が、剃り込み入りの坊主頭だった。グラサンに髭面で、ドンキにいそうな白ジャージ。
後ろには似たようなお仲間がぞろぞろ、金魚のフンごっこをしている。
『こんな時間』ってまだ夕方だよ。で、いい年こいた大人こそ集団でゲーセンなんか来てんじゃねーよ。
「あー、スンマセンっした」
が、師走の友達は軽く頭を下げて謝る。雰囲気はヤンキーとまではいかないが、師走の仲間なんだから、ビビリってこともないだろうに。こいつのがよっぽど大人だ。
「『あー』ってなんだ、ああ!?」
一方でこっちのでっかいガキは引かない。フンたちも「ナメてんのか!」「兄貴怒らせたらひでぇぞ!」と便乗して、これはカツアゲ目的だなと理解した。
「いや、ほんとスンマセン。俺ら遊びに来ただけなんで、勘弁してください」
「んだとぉ!? 勘弁してほしかったら出すもん出せや――」
ガキ大将が肉付きのいい腕を振り上げたので、おれはそいつの代わりに前に出る。師走も出ようとしていたけれど先を越した。
そして、俺とほぼ同じ高さだった額に頭突きを一発。
「ぶげっ!?」
「あ、兄貴っ!?」
フラッとのけ反った男の肩を引き寄せ、腹に膝蹴りを一発。
「ぐふぅっ!?」
体が九の字に折れ曲がり、眼下に曝け出された後頭部を鷲掴んで床に叩きつける。沈黙。
おれは腰を下ろし、白目を剥いて鼻血を垂れ流している坊主頭の首根っこを掴みながら、他のチンピラたちを見上げた。
「せっかく師走クンとそのお友達と楽しく遊んでんだからさぁ。邪魔すんじゃねーよ~」
「ヒッ……ヒェッ……」
坊主を仲間の元に放り投げて返してやって、よっこらせと立ち上がる。
「ごっ、ごめんなさっ」
好都合なことに残りの奴らは縮み上がって動けなくなっていたので、十秒もあれば伸せた。
「よーし片付いた片付いた! 皆おまたぁ。あそぼ」
屍の山を背にして振り返ると、死んだ顔の師走がトントンと自分の頬を指した。
「返り血」
「うわマジ? 汚ったね」
路上で貰ったポケットティッシュで顔を拭っていると、ツレの一人がぼそりと呟いた。
「……なぁ伊吹、お前まじでアレに勝ったのか?」
「一応な」
血の付いたティッシュをポケティの袋に包んでズボンに戻すと、師走の肩に腕を回した。
「重ぇ」
「な、師走。今みたいな力の使い方ならOKっしょ?」
師走の寄っていた眉が、くっと上がる。
「大事なダチのダチを、チンピラのオッサンから守ったからさ」
「誰がダチだ」
はっと鼻で笑って、師走は視線を前に向けた。
「おれとお前のことに決まってるだろ〜! ね、“伊吹”クン」
「勝手に言ってろ」
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