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 その口ぶりに、この数日の間でアキと水無月の間になにかがあったのだと察しがついた。  「『言うことを聞けないなら他の女と付き合う』とでも言われた?」  アキはその質問には答えなかったが、さっと顔が赤くなった。  「……どうでもいいんです。あの人が初めから私を金づるとしか思っていなかったとか、利用できるだけ利用して捨てようとしているとか。  私は、私の役目を果たさなくちゃ」 ――捨てられると分かっていても、捨てられないように頑張ろうとする。  矛盾しているように見えるが、それだけ視野が狭まっているということなのだろう。  「アキちゃん。あいつが覚せい剤を扱ってることは知ってるの?」  「知っています。 ……ミフユさん、私遥斗さんが正しいなんて思ってません。  でも『クスリを売れ』なんて言われたら断るけど、私はここで鳳凰組の人たちを足止めして、あの人の手助けをするだけです」  「あの男がモリリンちゃんをボロボロにしたんだって知っても?」  その情報は与えられていなかったのか、アキの目に動揺が走る。  「【禁じられた果実】はね。全部遥斗の采配で広められているの。  あの子を薬漬けにした犯人は、元をたどれば遥斗よ」  「……でも」  くっと持ち上げた顔に、狂気が走る。  「それでも、私はあなたをここから出すわけにはいきません!!」  ワンピースの裾を巻き上げてアキが戦闘の構えをとる。  素早く振り上げた右の拳が固く握られ、その芯がミフユをとらえた。  「大丈夫、なるべく最小限の怪我でおさめます。少しここで寝ててください」  殺気が滲み、ミフユの肌がぴりっと痺れる。  アキは、華奢な体躯からは想像がつかないほど隙のない闘志をまとっていた。  「……やだわ。アキちゃん、武道やってたなんて初耳なんだけど。何やってたの?」  「柔道の黒帯です」  すでにホスト軍団との戦闘で疲弊しているミフユには、絶望的な単語が響く。  「ギャップすごくない?」  「子どもの頃は、立派な警察官になるようにと父に厳しく躾けられていたので」  「――んっとに、人を見た目で判断しちゃだめね!」  やけくそ気味にミフユも身構えて、気乗りしない心をどうにか押し殺してアキと対峙した。  「手加減はしないわよ。 ――我が子を見守るのが親の役目。  子が道を誤りそうなときには、全力でぶっ飛ばしてやるのが親の務めだからね!」

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