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インフルとはな六③

 はな六がそうっと寝室に忍び込むと、サイトウは真っ暗な部屋の中で大人しく布団をかぶっていた。 「おせぇよ……」  しゃがれた声が、盛り上がった布団の中から聞こえた。はな六は暗い中、手探りでタンスを開け、中から部屋着を取り出して着替えた。  はな六がサイトウの隣の布団に入ると、サイトウの長い手がすかさず伸びて来て、はな六の腰を捕らえ、冷たい布団から温まった布団の方へと引摺り込んだ。 「よぉ、マサユキと何発ヤッて来たんだよぉ」 「一発もやってないって!」  サイトウははな六の下着を部屋着のズボンと一緒に掴んで一息に腿まで引摺り下ろした。ズシンと重い衝撃が下腹に走る。 「んっ、痛っ! やだっ、やめてよっ。まだ身体の準備、出来てないのにっ、んんっ、熱いっ!」  まるで火箸を体内に突き刺されたようだ。はな六は逃れようと身を捩ったが、きつく腰に回されたサイトウの両腕がそれを許さなかった。 「ちょっとサイトウ、朝より熱が上がったんじゃないの……んっ。んっ……あぁんっ……あぁっ……いっ……痛ぁい」 「だから汗かいて熱下げんだよぉ」  首筋に熱い息を吹きかけながサイトウは言い、激しく腰を動かした。はな六は早く体内が蜜でいっぱいになるようにと、大袈裟に喘いで身体を高めた。そうして少しの間痛みに耐えていると、やがて結合部から湿気った音がし始める。快感が腹筋を引き絞り、喘ぎが本物に変わる。 「あぁっ……はぁ……ぁあ、サイトウ、サイトウッ……」 「はな六ぅ、こっちィ向け」  下腹を穿っていた熱い棒が抜かれる。はな六がサイトウの方へ向き直ると、サイトウは素早くはな六の膝の間をかき分け、身体を密着させた。サイトウの臍の下の、毛むくじゃらの肌に押し当たった拍子に、張りつめたお飾りが精液を迸らせた。 「んぁっ!」 「おいっ、マジで、マサユキとはっ、何もして、こなかったのか、よっ」 「あぅっ! い……痛っ……! やだよっ、いぁいの……ぁっ……やだっ!」 「むぅ、痛ぇだと? この、因業セクサロイド野郎め……」  サイトウはチュッと軽くはな六の唇を食むと、その間に舌を割り込ませてチロチロと舐めた。そして、ゆっくりと、勿体つけるように、腰をグライドさせ始めた。ぢゅっ、ぢゅっと動きに合わせて結合部が淫らに鳴る。 「ぐへへ、これはどぉだぁ?」 「んんっ、んーんぅぅぅぅ!」  サイトウの胴を挟み混んでいた膝が、ガクガクと震え始める。下半身を心地よい痺れが覆い尽くす。 「おいしくなぁれ、おいしくなぁれ」  サイトウは歌いながら、シチューの鍋でもかき回すように、はな六の内部をとろとろと撹拌した。はな六がついに泣き声を上げると、サイトウはククケケケとカエルのように喉を鳴らした。 「オメェのココは、もう俺様の意のままだなぁ。気持ちいいぜ、はな六。やっぱりオメェは俺の最高の嫁だ。あーあー、こんなに泣いちゃって。かわいそうに、気持ちが良すぎるの? じゃあオメェが大好きなやつ、やってあげるからねー? さぁさぁ、おててをつなごうねぇー?」  はな六はサイトウの肩に回していた両手を、降参の形に布団に下ろした。サイトウの熱い掌が、はな六の冷たい掌をぎゅっと握りしめる。 「んぁっ」  またお飾りから精液がどくどくと溢れた。はな六は力の限りを込めて、サイトウの手を握り返した。 「おおぅ、中がすっげー締まったぜぇ。はな六ちゃん、そんなにおてて繋ぎがしゅきですか。え? おてて繋ぎがしゅき?」  ごつんと額と額が合わさる。互いにすりすりと額を擦り付け合い、鼻筋を擦りつけ合い、そして唇を擦り合わせた。サイトウの長い舌が上の歯と下に歯の間を侵入し、ベロリとはな六の口腔を舐め回す。 「うわーん!」  はな六はいやいやと首を振った。 「おえぇ、何だよこれぇ。サイトウの口、ぬるぬるして気持ち悪ーい!」 「しょうがねえだろ、風邪引いてんだからよぉ。オメェも風邪がうつる身体なら良かったんだ」  サイトウが容赦なくはな六の口中にぬるぬるで粘っこい唾液を注ぎ込んだ。 「んっ、んぷっ、やだきもっ、やめてったらぁ!」 「風邪を引いたオンナノコを無理矢理ぶち犯すのは、気持ちいいんだぜぇ。中が熱くって、ぬるぬるヌメヌメでよぉ」 「最低! サイトウ、最低!」  ケケケ、とサイトウはドブのような、余罪のもりもりにありそうな重犯罪者の目付きではな六を見下ろした。その底無しの闇に、はな六はぶるりと背を震わせた。 (サイトウはおれが側にいると“ふぜん”をなさないとか、嘘じゃん、大嘘じゃん!それって、“ふぜん”の対象が巷の女からおれになっただけだよぉ) 「おらぁ、はな六ぅ! 風邪引け、風邪ぇ!」 「おぇぇっぷ! きもっ、きっっっっも! おぇぇぇぇぇ!」  こうして、今夜も二人の“ふぜん”な夜は、とっぷりとふけていく。 (おわり)

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