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第3話

「……あっう! んぁ、あっ」  会長の指が、無防備だった胸の突起を抓った。思わず腰がシーツから浮いてしまう。 「悠は本当にここが好きだね」 「あんっ……! 好き、ですっ、あぅ……もっとぉ……っ」 「こら。口の聞き方がよろしくないよ。右が左、選びなさい」  ここで示す左右とは、会長の御手のことだ。 「っ……右……、うっ!」   俺が指定した通り、会長の右手が俺の左頬へ降ってきた。会長の御手は分厚く、一度打たれるだけでじんじんと熱を放って痛み出す。  だけど必要な痛みだから。  会長に相応しい“配偶者”になるために……。 「っあ、ありがとう……ございます……っ」  だけど痛いものは痛い。勝手に目から涙が溢れてしまう。  でも、そんな時には会長が優しく頬を撫でてくれるから、どうだっていいのだ。 「すぐに御礼が言えるようになったね。偉いですよ」 「は、はいっ……んう、」  会長の唇が俺の唇に触れ、そのまま中に舌が捩じ込まれる。 「んっ、んぁ、っ……ぇう……」  気持ちいい。頭がふわふわして、幸せになれそうな気さえする。学校のこととか、思い出したくもない嫌なことを全部忘れさせてくれる、そんな口付け。舌先が上顎を撫でた瞬間、脳内で何かが弾けて心臓がびくんびくんと激しく動き出した。会長の御腕を掴む手に、力が入りそうで入らなくて、自分の体の居場所もなんだかよく解らない。 「悠。力を抜いて」 「あ、っはぃ……」  身に付けていたスウェットパンツを下にずらされ、太ももにひやっとした風が当たる。会長の視線が恥ずかしくて目を伏せるけど、顎を掴まれてしまう。 「恥ずかしい?」  耳元に囁かれて反射で肩を竦める。少しだけ頷くと、会長は息で笑った。  会長が笑ってくれるだけで嬉しい。 「とても似合ってるよ」 「ほ、本当、ですか……?」 「嘘なんてつかないさ」  会長はそう言いながら、俺の下半身を覆う白いレースにさらりと触れた。もっとされたい気分が昂って視界がぼやける。痛くてもいいからもっともっと、いろんなところに触ってほしい。  うつ伏せにされて、尻に冷たい液体が降り注いでくる。 「っん……! あ、う、ぁっ」  マッサージをするみたいに、会長は俺の尻へ指を食い込ませて、肉を上へと流し始める。全然気持ちいいところじゃないはずなのに、会長にされているだけで、そう考えるだけで胸がぞくぞくするしお腹の中も疼いてしまう。 「ひあっ! うあっ、んん!」  亀頭と乳首がシーツに擦れて気持ちいい。それを会長は目敏く見つけて、ローションでぬるぬるになった指で乳首を摘む。 「はうっ、ああっんあ! そこっ、すきぃ、ぁっ!」 「なんだって? どこを、どうされるのが好きなんだ?」 「んあぁっ! ひぃんっ、ちくっび……はあっ……! ゆびでっ……! ぐりぐりってされるのっ……すき……っ! ……う、ぁ」  当たってる。硬いものが、尻の割れ目に擦り付けられてる。今からこれで犯されるんだと解り、恐怖が湧き上がってくるけど、でもその奥に潜む高揚は無視できない。  早く入れてほしい。ずぶずぶされたい。……でも、そうしたらこの時間はいよいよ終わりへ向かっていってしまう。終われば、次に行為ができるのは一週間後だ。会長以外の人間との行為は禁止されているし、自慰行為も同様だ。  そもそも性行為自体が公に認められていないのだ。  これは、特別。会長の配偶者として、相応しい人間になるための練習。会長が特例で、俺だけに許可を与えて下さっているだけだ。  だからこそ無駄にはできないし、会長の御目が届かない範疇であっても、禁止行為は許されない。  会長に認めていただくために……。 「悠、お尻を突き出しなさい」 「はいっ……」  うつ伏せの状態から尻のみを浮かせる。会長はショーツを指でずらした。申し訳程度に隠れてた穴が風に晒され、意思に反してそこにぎゅっと力が入った。    「こらこら。まだなにもしてないのに、どうしてそんなにヒクヒクさせてるんですか」 「っご、ごめんなさ……っ、」 「謝罪ではなく、こう言う場合は理由を答えましょうね」  穴の周囲を指で周回される。 「あっ……! かいちょ、のっ、おちんぽ、っん! はやくいれてっ、ほし、くてぇ……っ! ぅうっ、も、がまん、できなっ……!」 「そう。上手に言えたね。偉いじゃないか」 「あぁっ! あ、きもち……!」  ローションを纏った指がゆっくりと進入してくる。優しいはずなのに、会長の指が太いから無理やりこじ開けられてるみたいに感じられて、太ももが震える。 「んああ! あ、あっ! うぁっ!」  やがて指が二本、三本と増えていき、前立腺を激しく抉る。体まで一緒に動いてしまうくらい強烈に揺さぶられて、中イキが止まらない。     「うぅうっ……、かいちょぉっ、かいちょ……っ」 「うん? なんだい?」 「おねがっ、もぉ、んっ! いれ、へ、くらさぃ……! ふとくて、あついのでっ、ぐちゃぐちゃに、ぅ、犯してぇ……っ!」 「……せっかちな子だな。本当に」 「はっぐ……! ごめ、らさ……っ」  お仕置きとばかりに、乳首を爪で引っ掻かれてしまった。でもそんなのも全部気持ちよくて仕方ない。これ以上放置されたら頭が変になってしまいそうだ。 「ぁ、あっ、」  会長が下の衣服を脱ぐ音がする。ベルトを緩めて、チャックを下ろす。その音だけで先っぽから液体が溢れてくる。腰を強く掴まれて、会長の腰の位置まで突き出させられた。  穴に会長のモノが触れる。 「う……っ!」  熱い。硬い。怖い。でも欲しい。  狭い入り口を突破し、ゆっくりゆっくり内壁を割り裂いてそれが入ってくる。 「う、あ〜………っ!」 「っ悠。もっと、力を抜きなさい。緊張しなくて、いいからね」 「あっあ、はひっ、うぐ、ぅっ」  気持ちいい。あったかい。優しい。涙がこぼれ、鼻を伝ってシーツへ落ちる。 「かいちょぉ、も、うごいてっ、おく……っいっぱいついてえ……!」 「いいだろう。ご褒美だよ」 「はああっ……! あんっ、あっ! ああっそこ、っ! ああっ……!」  会長のモノで中を激しく打ち付けられる。優しい言葉とは裏腹に、腰の動きも俺の体を掴む指の力も暴力的で、でもそうやってただの道具みたいに扱われるのが俺にとっては心地よくて、だからもうどうしようもない。 「ああっ! うあぁっ……! きもひい、ぃっ! はあ、あんんっ!」  幸せになりたい。  幸せになるために、見たことのない神様のお告げを信じて、幸せを待ち続ける。おとなしく正座して、何年もかけて。    会長は、神様の使いだ。  会長だけが神様の御声を聞くことができる。だから信者にとっては、会長は神様そのもののような存在なのである。会長のお言葉は絶対。会長から認められれば、神様との距離がより近くなる。  それは幸せのために。 「はっ……! あ、あ、ひあっ!」  律動が速まる。もう力が入らない。とんでもなく大きな何かが迫ってくる。これが「イキそう」っていうことだ。これが何度行為を重ねても慣れなくて、怖くて、でも来たら来たで帰ってほしくなくて。 「中、ぎゅうぎゅう締まってきてる」 「んんっ、んあぁっ……!」 「ちゃんと言わなきゃダメですよ」 「は、ひっ……イキたいぃ……っ! イカせへっ、くらひゃっ、あっ、」 「いいでしょう。一緒に果てましょうね」 「はいぃっ、いっしょに、ああっ……! っ〜〜〜……!!」  お腹の中に熱い精子が乱暴にぶちまけられて、その影響か一瞬目の前が真っ白になり、受け止め切れない量の快楽が襲いかかってくる。このまま天国へ行けたら幸せになれるのかもしれない。そんなことを毎回のように考えているけれど、結局現世に留まったままなのが常だ。 「はっ、はっ、あ……っんあ、」  ずるりとモノが引き抜かれて、穴から白濁液が垂れて内腿を伝う。  会長は慣れた手つきで、ベッドサイドのチェストからとあるものを取り出した。 「きちんと栓をしようね」 「っ、っ……」  言いつつ会長は、銀色のアナルプラグを俺の目の前に翳した。卵のような形をしたそれは部屋の照明を吸い込んで白く光る。先端部分には宝石の装飾がされていて、俺が青が好きだと言ったから会長はサファイアブルーを選んでくれた。 「っんん……、」  中にそれが埋め込まれる。冷たい。  それはただの「栓」なのに、じわじわと快感を与えてくる。いきなり宝石部分をぎゅうっと押されて、思わず締め付けてしまった。だめだ、力を抜かないと、また果ててしまう。 「ふふっ……本当に可愛いですね。お前は」 「……ありがとう、ございます……」  会長は俺の隣に寝そべって、逞しい腕で俺を抱き寄せた。  人生の中で、会長の腕の中に居る時間が一番好きだ。 「今日の夕食は何がいい?」  会長が俺の顔にかかった髪を避けながら、そう尋ねた。会長と同じ銀髪だ。信者は髪色を脱色しなければならない。 「えっと……今は、和食の気分です……」 「よし。じゃあ鰻でも食べに行こうか。五時くらいになったら、支度を始めようね」 「はっ、はい」    幸せってどこにある?  会長とこうして過ごす時間は大好きだけれど、なぜか心は空っぽのままだ。満たされないのだ。  幸せになりたい。  俺に幸せを与えてくれるのは、多分だけど、会長ではないような気がする。

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