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【12】

 貴滉はその夜、真吏に克臣とのことをすべて話した。  その間も、克臣からの在宅確認のメッセージが途切れることはなかった。  スマートフォンが振動するたびに、真吏は始終険しい顔で時折湧き上がる怒りを必死に抑えているような感じも見受けられた。  どうして、こんなに辛そうな顔をするのだろう……。  その疑問は、いとも簡単に解決した。もし、立場が逆だったとしたら……貴滉はその相手に対して怒りを露わにしていただろうし、被害者である真吏の心情を思えば自然とそういった表情になっていたと思う。  克臣の事を思い出すたびに恐怖で手が震える。その手を離すことなく握っていてくれた真吏の心遣いに、貴滉は抜けかけていた魂を取り戻すことが出来た。 「――お前と別れたあと、ホテルに記者が来たから変だなとは思っていた。アカウントの乗っ取りもよくあることだから警戒はしていたんだが。まさか、あんな画像をあげるとは……。それに浅香のことも」 「藍吏さんの婚約者って、浅香さんの妹さんだったんですね」 「あぁ……。藍吏が死んで、アイツは『殺人犯の家族』ってレッテル貼られて……。もちろん漆原興産もクビになった。たとえ優秀なαでもそうなったら終わりだ。仕事も探せない……だから、俺のところにいる」  真吏は肩にかけた毛布の端を掴み寄せ、自嘲気味に笑った。 「αは優秀で、苦労することなく将来を約束されているなんて……皆が皆、そういうわけじゃないんだよ。一度堕ちたら……クズ同然の扱い。下手をすればクズ以下だ。アイツもその辺に関しては負い目を感じてて……。責任感強くて、見るからに出来そうな秘書だろ? だから余計に……」  クラブから帰る車中、浅香がプライドを捨てて真吏を救ってくれと懇願した理由が分かった気がした。そんなことは無理だと突っぱねた貴滉だったが、今こうして彼のそばにいる。 「――役に立ったのかな、俺」 「ん?」 「あ、いえ。何でもないです」  慌てて取り繕った貴滉だったが、覗き込んだ真吏の目が真剣みを帯びていることに気付いた。彼は貴滉の下腹をそっと撫でると、ため息まじりではあったが硬い声音で言った。 「一度、病院に行った方が良いな。薬を使われて発情したとなると厄介だ」 「え……」 「いくら発情しない体とはいえお前はΩだ。発情時に分泌されるホルモンを薬によって強制的に出させたとなると、体内のホルモンバランスが崩れる。それによって開かれていない器官が抉じ開けられる可能性がある」 「開かれていない器官って……」 「子を成す器官……。Ω性にしか存在しない」  真吏と想いが通じ合ったという喜びもあったが、それ以上に克臣の子を身籠るのではないかという不安の方が大きかった。あえて、彼の前では口にすることは避けていたのだが、貴滉の不安はすべて見抜かれていたようだ。 「三日間――薬で発情させ続けられていたことを考えると、相手がβ性でも妊娠の可能性がないわけじゃない。知り合いに婦人科の医師がいる。信頼できる男だから、事情を話して診てもらおう」  真吏の言葉に小さく頷いた貴滉だったが、再び克臣から与えられていた恐怖を思い出し身をすくめた。小刻みに震える貴滉の体を真吏の腕が優しく包み込んだ。  濡れた洋服は乾燥機の中にあり、今は貴滉が貸したスウェットパンツしか身に付けていない。右腕に施されたトライバル・デザインのタトゥーが彼の雄々しさを引き立て、抱き込まれただけでふわりと心が軽くなるのを感じた。 「俺……克臣と番わなきゃいけないのかな」 「そんなことは絶対にさせない。大丈夫だ……」  真吏の力強い言葉は安心感をくれる。その言葉を信じたい……。  そして――出来ることならば真吏と番になりたい。  今はまだ言えないその言葉を静かに呑み込んで、貴滉は彼の胸に顔を埋めた。彼の鼓動が少しだけ早くなったような気がして、貴滉はその音に耳を傾けたままそっと目を閉じた。  *****  体は鈍りのように重かったが、心は幾分軽くなっていた。  真吏は、夜が明けると共に浅香に連絡を入れ、克臣がSNSに書き込んだと思われるコメントをすべて保存するように手配した。もし、裁判になったとき、重要な証拠として役に立つ。 「お前、そんな体で会社に行くなんて無理だ」 「三日も休んだから、行かないと……。それに、克臣にまた何をされるか分からないから」 「警察に相談しろ。お前が嫌だっていうんなら俺が掛けあう」 「大丈夫。これ以上、真吏さんに迷惑かけられないよ。俺の問題だし……」  スーツに着替えた貴滉はネクタイを締めながら小さく笑って見せた。  不安がないなんて嘘。本当は会社になんて行きたくない。  でも、こうでもしないと真吏と離れることが出来なくなる。ずっと甘えていたい。ずっと触れていたい……。その衝動を払拭するためにも部屋を出る必要があった。  あんな真似をした克臣でも、さすがに社内で貴滉に手を出すことはないだろう。社内では、なるべく一人にならないように心掛ければいい。  貴滉はGPS機能が作動したままのスマートフォンを掴むと、真吏に深々と頭を下げた。 「ありがとうございました」 「なんだよ、その他人行儀な感じは?」 「――まだ、他人ですから」 「貴滉……?」  わずかに瞠目したままじっと見つめる真吏の視線から逃れるように、貴滉はリビングのドアに手を掛けた。  たとえ真吏と想いが通じ合っても、この体には克臣の遺伝子が宿っているかもしれない。そう思うだけで、一緒にいてはいけないような気がした。  そばにいたい。でも、社長である真吏をこれ以上面倒なことに巻きこみたくない。それは、会社の信用問題につながる可能性があるからだ。 「先に部屋を出て下さい。克臣がいるかもしれないから……」  振り返ることなくそう言った貴滉だったが、不意に後ろから強く抱きしめられて息を呑んだ。 「ふざけんな……。他人とか……絶対言うな」 「真吏さん……」  トクン……。心臓が大きく跳ねた。同時にバスルームでの事を思い出し、体の芯が熱くなっていくのが分かる。  彼がうなじに唇を押し付けるたびにふわりと香る甘い匂い。その香りは貴滉の心を離れがたいものに変えていく。 「――誰にも渡さない」  野獣が呻くような低い声でそう呟いた真吏は、貴滉のうなじに犬歯を強く押し当てた。 「あぁ……っ」  じゃれ合いで押し当てる強さとは違う。その甘い痛みに貴滉は思わず吐息を漏らした。しかし、真吏の牙は白い皮膚を食い破ることはなかった。  痛みから察するにわずかに血が滲んだ程度だろう。そこに舌を這わせ、荒い息遣いを繰り返している真吏に貴滉は言った。 「やっぱり、真吏さんも分かっているんですよね。俺たちの境界線(ボーダーライン)……想いが通じても越えられない」 「違う……。今の俺はお前を幸せに出来ない。だから……もう少しだけ待ってくれ。この傷が消える前に必ず迎えに行く……約束する」  顔を見なくとも心に直接伝わってくる重みのある言葉。今、彼が言える精一杯の告白。そして、うなじに残された真吏の浅い咬み痕がこれから訪れるであろう幸福を予感させ、貴滉を守ってくれるように思えた。  貴滉の頬に一筋だけ涙が流れた。それに気づいた真吏は、貴滉の体をもう一度強く引き寄せると、その涙を舌先で掬った。 「この涙は俺だけのモノ……そうだろ?」 「真吏さんには、泣かされてばかりいる……」 「お前の涙は俺のモノ、この体も心も……俺のモノ」  クイッと口角をあげた真吏は顔を傾けると貴滉の唇を奪った。舌を絡ませ、角度を変えて何度も求めあう。その心地よさに貴滉は両手を彼の首に絡ませると、唇を触れ合わせたまま囁いた。 「真吏さん……好き」  貴滉の言葉に瞠目した真吏だったが、すぐに満足げな笑みを浮かべて唇を啄んだ。  先に部屋を出る真吏の背中を見送るように、玄関ドアが閉まるまで見つめていた。その直後、貴滉のポケットの中でスマートフォンが振動し、克臣からのメッセージ着信を告げた。  現実に引き戻された貴滉は、震える指先でメッセージを開いた。 『お前、俺を裏切ったな。アイツ、殺してやる』  短い文面ではあったが、貴滉を戦慄させるには十分だった。  克臣がマンションの近くにいる。もし、真吏が彼に見つかったら……。  貴滉は慌てて玄関から飛び出すと、エレベーターホールへと走り▼ボタンを連打した。なかなか来ないエレベーターに焦れ、すぐ横にある階段を一気にかけ下りた。 「真吏さん……逃げてっ」  祈るように呟きながら一階まで足を止めることなく下りる。エントランスを出た貴滉の目に映ったのは、怒りを露わにした克臣の姿だった。  足を止め、息を呑んだまま見つめた彼の手にはナイフが握られていた。 「克臣……っ」 「あんなに愛してやったのに、まだ足りなかったのか……この淫乱Ωが。アイツを部屋に連れ込んで、どんだけヤッた? ケツの穴がガバガバになるくらいヤッたのか? 見せて見ろよ……ここで、広げて見せろ。アイツが出したモノ、自分の指で掻き出して俺に許しを乞え!」 「何を言ってる? アイツって誰のこと?」 「とぼけんなよ……。漆原、ここにいたんだろ?」 「知らない……」  激しく首を横に振った貴滉の二の腕を克臣の手が掴み寄せる。そして、耳元に荒い息を吹きかけられ恐怖に身を強張らせると、彼は忌々しげに唇を歪めて言った。 「――なんだ、これは? 番の真似事のつもりか? 知らないなんて嘘も大概にしろ……」  貴滉のワイシャツの襟を力任せに広げ、うなじに残された真吏の浅い咬み痕を凝視した。それに触れようとした克臣の手を貴滉は力任せに振り払った。 「触るなっ!」 「なにっ?」 「真似事なんかじゃない! 俺は漆原さんとセックスした……。お前となんか番にならない……」  すっと目を細めた克臣はニヤリと下卑た笑みを浮かべると、黒い瞳に妖しい光を湛えて貴滉との間を詰めてきた。彼のその目は今までに見たことがないほど狂気に満ちていた。  貴滉を捉えているにも拘らず、そこには何も映ってはいなかった。 「じゃあ、アイツが出した精液を全部出さないといけないな……。俺の子供産めなくなっちゃうもんな」 「来るな……っ」 「子宮の中、綺麗にして……俺の精子でいっぱいにしてやらないと。これで、抉じ開けて……直接、注いでやるよ……」  手にしたナイフを貴滉に向けると、彼は舌なめずりをしながら近づいてきた。こんな状況でありながら、スラックスの生地を押し上げる勢いで自身のモノを勃起させている。  もとよりそういった嗜好だったのか……。それとも、嫉妬に狂い何らかのスイッチが入ったのか。  貴滉は、マンションの入口の植え込みを乗り越えて逃げようとしたが、足が縺れて上手く動かない。手足に負った擦り傷が痛む。でも、今は逃げることしか頭になかった。長身で大柄、筋肉質の克臣に押えこまれたら最後、暴れても逃れることは不可能だ。 「これで下腹抉ったら、死んじゃうかもな……。死んだら、泣いてやるから……。いい相棒でした――ってな」  ナイフを振り回した克臣を目にした貴滉は、恐怖で体が動かなくなってしまった。 (本気だ……)  頼りになる同僚であり友人だった克臣はもういない。そこには嫉妬に狂い、報復として貴滉を殺そうとしている殺人鬼がいるだけだ。 「いやだ! 来るなっ!」  貴滉の叫び声は静かな住宅街に響いた。しかし、マンションの住人はおろか、誰も出てくる気配がない。なにかと面倒な事に巻き込まれるのを嫌う風潮がある昨今、誰かが殺されそうになっていても助けることもしない。  朝露で濡れた冷たいアスファルトの上に倒れ転んだ貴滉は、すぐそばまで迫った克臣を睨みつけた。 「なんだよ、その目……。それが番に対する態度か?」 「お前なんか番でも何でもない! 警察を呼ぶ……っ」 「呼べるもんなら呼べばいい。その前にお前の腹を抉ってやるから」  震える手でポケットを探るが、スマートフォンが取り出せない。イラつきながら必死に引き抜こうとした貴滉の頭上に克臣が振り上げたナイフが光った。 (もう、ダメだ……っ)  ギュッと強く目を閉じ覚悟を決めた時、すぐそばで車の急ブレーキが聞こえ、ドアが開く音が聞こえた。 「やめろっ!」  アスファルトに響く二つの靴音。声に怯んだ克臣が車の方を見た瞬間、ドスンと鈍い音がしたあとで彼の体が大きく傾いた。そして、恐怖で強張った貴滉の体を抱きしめる者の存在……。 「お前……。お前が貴滉をたぶらかしたから、勘違いしちゃっただろ? 貴滉が愛してるのは俺……俺なんだよ」  克臣が憎しみを込めた声で言った相手は、貴滉の体を優しく抱き起していた。そして、克臣を見据えながら抑揚のない声で言い放った。抱きしめる腕の優しさとはまるで異なるその強い声に、貴滉は恐る恐る目を開いた。 「いい加減にしろ! 勘違い野郎はお前の方だろうがっ!」 「し……しんり、さん?」  すぐそばにある端正な顔……夢なのではないかと何度も瞬きを繰り返す。だが、彼が身じろぐたびに香る甘い匂いは間違いなく彼のものだった。 「もうすぐ警察が来る。俺がこいつの気を引きつけている間にお前は車に走れ。あとは俺と浅香が何とかする」 「危ないですっ。彼はもう……正気を失ってる」 「大丈夫だから」  耳元でそう囁いた真吏は、貴滉を背中に庇うように克臣の前に立つと、以前のように傲岸な態度で目を細めた。 「よくもクズだのヤリチンだのと拡散してくれたな。お前が書き込んだヤツは全部保存してある。これって名誉棄損のうえに威力業務妨害。ついでに精神的苦痛を強いられたってことで慰謝料たんまり請求してもいい案件……。貴滉の裸晒したのも罪に問われるだろうなぁ……。お前の方がよっぽどクズだろ」 「なんだとっ! お前さえいなければ、貴滉は俺のモノになったのに……」 「はいはい。ストーキングに拉致監禁、レイプ……。どうしようもないな……」 「αだからって、いい気になってるなよ! Ωを手懐けてヤリまくるなんて……お前らの方が裁かれるべきだろ」 「はぁ? 手懐けてるのはαだけじゃないだろ。お前だって……ヤリまくってたくせに、自分のことは棚上か? Ωはセックスドールじゃない。ちゃんと意思がある人間だ。それを道具みたいに思ってるお前の方がよっぽど……」 「うるせーっ!」  飄々とした態度で克臣を煽った真吏は振り返ることなく叫んだ。 「貴滉、逃げろ!」  その鋭い声に弾かれるように、縺れる足を必死に動かして車の方へと走る。そばにいた浅香に抱きとめられた時、克臣がナイフを振りかざして真吏に襲い掛かった。 「真吏さんっ」  貴滉が声をあげた時、真吏の蹴りが克臣の脇腹に叩き込まれていた。それでさらに逆上した克臣が咆哮をあげながら闇雲にナイフを振り回し、それが真吏の右腕を掠った。  上着とシャツがすっぱりと切られ、そこから赤く染み出すものを目にした貴滉は泣きながら叫んでいた。 「真吏さん! 真吏さんっ」  取り乱したまま真吏のもとへ走り出そうとした貴滉は、浅香に思い切り腕を掴まれた。「離して!」と暴れる貴滉の耳にパトカーのサイレンが聞こえてきた。 「落ち着いてください!」  浅香の声にハッと自我を取り戻した貴滉は、その場に崩れるように座り込んだ。 「浅香! 押えるの手伝えっ!」  真吏の声に浅香が克臣のもとへと駆け寄った。そして、羽交い絞めにされた彼の手から血の付いたナイフを奪い取ると、そのままアスファルトに押し倒し馬乗りになった。そこへ到着した数名の警官が克臣を取り押え、手錠をかけた。  複数のパトカーが来たことで、何の騒ぎかと近所の住民が集まってくる。揉め事に関わるのは嫌なくせに野次馬根性だけはあるようだ。  克臣はパトカーに連行され、その場で事情を説明している真吏は痛々しげに右腕を押えている。その指の間からも絶え間なく血が溢れ出し、克臣が持っていたナイフの殺傷能力をまざまざと見せつけられた。  もしかしたら自身があのナイフで下腹を抉られ、血塗れになっていたかもしれないと思うと、今になって体がガタガタと震え出した。  警官の「救急車を呼びますか?」という問いかけを笑いながら断った真吏が、ゆっくりとした足取りでこちらに歩いてきた。そして、アスファルトに力なく座り込んでいる貴滉に微笑みかけると、不遜な態度で言った。 「誰にも渡さないって言ったろ?」  どこか甘さを含んだ低い声に、貴滉の涙腺は崩壊した。 「真吏さん……」 「ほら、さっさと病院行くぞ。その顔、警官にも見せたくないからなっ」 「バカ……」  血に染まった左手で貴滉を抱き起した真吏は、腕の傷が痛むのかわずかに顔を歪めた。それでも、態度を崩すことなく後部座席のドアを開けて貴滉を押し込むと、自身も続いて乗り込んだ。そして、貴滉の頬を伝う涙に唇を寄せ、心から安堵するように優しく微笑んだ。 「お前が無事で良かった……」  貴滉は小さく頷くと、真吏の頬に手を添えて唇を重ねた。チュッと小さな音を立てて啄んだ真吏は唇を綻ばせてから、窓を開けて大声で叫んだ。 「浅香! とりあえず病院っ!」  警官と話していた浅香が真吏の声に反応し、急いでその場を切り上げると車に戻ってきた。  運転席に座りながら、ルームミラーで後部座席に座る貴滉と真吏を見て言った。 「いろいろ聞きたいことがあるとのことなので、落ち着いたらお願いします。貴滉さん、その際……あの男との関係とか監禁されていた状況とか聞かれると思うんですが……大丈夫ですか?」  いつの時も気遣いを忘れない浅香に、貴滉は力強く頷いた。 「話します。全部……話します」 「分かりました。――社長も、面倒だからって適当に済まそうとか思わないでくださいね」 「分かってるよ! ちゃんと話すから……さっさと車を出せっ」  貴滉の前で釘を刺されたのが嫌だったのか、バツが悪そうな顔で窓の外に目を向けた真吏。彼の端正な横顔を見つめていた貴滉は、一つだけ自分に罰を与えることを決めた。  自分のせいで怪我を負わせてしまった彼への罪悪感は拭えない。シャツの袖を染める彼の血からすっと目を逸らすと小さく息を吐いた。  もう恋はしない。出来損ないのΩ性に戻ろう――と。

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