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圭吾と正一郎
俺と圭吾と初めて会ったのは5歳の時だった。
父の会社は表向きは国崎グループで、不動産やホテル経営などをしている。
裏は青龍会、国崎組の組長だ。
青龍会の会長である、横峯 芳市(よこみね よしいち)の息子夫婦が不慮の事故で5歳の息子を残して亡くなった。
その葬儀の参列する事と同い年だから5歳の息子の心の安定のためにという理由で、俺も一緒に行ったのだ。
両親の遺体の間でニコニコとしながらおもちゃで遊ぶ姿にみんな痛ましげに見ていたが、俺はそれどこじゃなかった。
この子は俺のだって思って、今すぐ手に入れないと誰かに取られてしまうと焦った。
圭吾のそばに行って覗き込んだ俺の顔を見た途端に、大泣きしながら必死に圭吾がお腹に抱きついてきた。
そのまま俺は圭吾の頸に噛み付いて、2人とも意識を失った。
目が覚めたら2人共、別々の部屋に寝かされていたんだけど、2人ともあの子はどこ?って泣き叫んでた。
ようやく引き合わされて、お互いに抱きしめながらまた眠った。
圭吾の両親の遺骨の前に2人で座って、圭吾はパパ、ママって俺に抱きつきながら泣いていた。
俺は圭吾の背中をさすりながら、『俺がずっと一緒いる。俺は圭吾ので、圭吾は俺のだ。だからこの先ずーっと一緒だ。』って約束した。
それから、小学生になるまでは圭吾の家で一緒に生活させてもらっていた。
まだ番になっているのかわからないし、性別検査も済んでいないからという理由で、小学校はそれぞれ地元で通うことになった。
俺は圭吾のそばに居たくて、会いに行くためのお金を親の手伝いをして稼いだ。
圭吾を守るためには、強くなくちゃいけないから、剣道と合気道を習った。
圭吾を養っていくためには、良い学校に行かないとダメだと思って勉強もしながら、稼ぎかたを学ぶ為に父さんの仕事の手伝いも頑張った。
連休のたびに圭吾に会いに行って、圭吾のお祖父さんに圭吾をくださいと許しをもらおうと頑張った。
性別検査を受けたら、やっぱり俺はアルファで圭吾はオメガだった。
中学に入るとやたら俺をアルファとして意識してくるやつが多くなったのが、正直うざかった。
発情期にわざと俺に接触してくるオメガも、父さんの会社を知って媚び売ってくるアルファやベータも、全てが煩わしくて。
その度に圭吾に会いたくて、声が聞きたくて、何であいつ携帯持ってないんだよって。
中1の夏に10歳上の兄貴が親父の会社を継ぐ事となったため、俺は裏の仕事を継ごうと決めた。
それからは母さんの手伝いをして、組に係わっていった。
組の祝い事や、会合には、必ず会長が参加するから圭吾も一緒にくる。
その度に、会長に圭吾を嫁にくださいと言うのが挨拶になった。
「ここにマンションを建てようと思うんだけど、正一郎なら周りに何を置く?」とある日、母さんに聞かれた。
圭吾と一緒に住むことを一番に考えて、花見ができるように公園が欲しい。公園中に水遊びが出来る場があれば子供と一緒に遊べる。落葉樹並木も有れば紅葉を楽しめるからなお良い。
図書館も病院も近いけどスーパーが遠い。コンビニよりスーパーだな。
色々と妄想して案を出したら、俺の意見がかなり通った。
それならここに住むと決めて、マンションについても部屋割りも決めてセキュリティ面も、入ってくる住民も、ちゃんと選別する仕組みを父さんと話し合って、圭吾と一緒に住む準備を進めていった。
会長から許可が下りた時の嬉しさと言ったら、言葉にできないほどだった。
圭吾には、毎月俺の作った問題集をしてもらっていたから、受験も難しくは思わなかったが、万が一にも落ちるなんて選択肢は無いので、リモートで勉強できるようにして2人で頑張った。
嬉しい誤算は、毎日顔を見て話ができるという状況。
おやすみと通話を切った後は、圭吾をおかずに自慰を繰り返す毎日。
早く抱きしめたい。自身を突っ込んでグッチャグチャにして俺しか見えないようにしてやりたい。
ただ、一緒に住む条件として、圭吾に発情期が来るまでは絶対に性行為をしない。があった。
5歳の時に頸を噛んだ為、圭吾は俺と番になっていたからアルファのフェロモンを嗅ぐ事はできない。
それでも通常のオメガなら体感としては感じる事が出来るはずだった。
一度、アルファの威圧フェロモンを浴びせられた時、普通なら番のいるオメガでも怯えるのに、圭吾はケロっとしていた。
なぜなら会長を筆頭に上位アルファばかりに囲まれて育ていたために、その辺のアルファのフェロモンを圭吾は感じることができない。
組の会合で上位アルファ同士の小競り合いがあった、その中でも圭吾はピリピリすると多少居心地が悪そうにしていただけだ。
その為に、身体がきちんと成熟するまでは禁止されている。
一緒に住み出してからは、早く発情期がきてくれ!と切実に神に祈った。
俺の理性は鋼のように硬かったから耐えれたけど、毎日拷問だった。
最近、圭吾から香るフェロモンの匂いがキツくなってきているのには、気付いていてワクワクしていた。
本人は多少ぼーっとしている時があったが普通に生活をしていたので、俺はまだかまだかと落ち着かない日々を過ごしていた。
今日は委員会で会が終わるまで少し離れていなければいけない。
気掛かりでは有るけれど、毎度15分くらいで済むので教室で待ってもらっていた。
もうそろそろ会が終わるか、というタイミングで圭吾につけてある盗聴器からクラスメイトではない声が聞こえてきた。
圭吾に呼びかけている声は非常に不愉快な声で、すぐにどこかに電話をかけているのがわかった。
「初めての発情期ぽいよ。あはは!やっちゃえー」という声が聞こえて俺はその場から走り出した。
「へぇ国崎の番がこれねぇ。何でも良いや頂いちゃいましょう。」と聞こえて怒りで体が震える。
近くの空き教室から圭吾の声が聞こえて、そのままドアを蹴破った。
青白く引きつった顔をしたオメガを蹴り飛ばし、圭吾の上にのっかかっていたアルファを鼻を潰すように殴ってから両腕を折って、しょんべんを漏らして俺は何もしていないと喚き散らしているアルファの腹を蹴り付け、股間を潰すように踏みつけた。
「何をしている!!」入ってきた教師に、「アルファの報復ですよ。俺の番に手を出したんだ。わかりますよね?」と言い圭吾に目を向けた。
意識が朦朧としているのか、震えながら、目の焦点が合わずに、正一郎と俺の名前を譫言のように何度も呼んでいる。
圭吾に上着をかけ震えが落ち着くまで抱きしめて、すぐに落ち着いてすぅすぅと寝息が聞こえてきた。
すぐさま父さんに連絡を入れて、圭吾に発情期が来たこと、発情している圭吾に手を出されて報復をした事を伝えた。
母さんにも連絡を入れて、フェロモンは濃いが落ち着いて寝ていると説明したら、病院に連れて行くように指示された。
完全な発情期なのかきちんと検査しないとダメだときつく言われ、圭吾の為にと言われると我慢するしかなかった。
アルファの抑制剤を注射して俺も落ち着いた頃に、迎えの車が来た。
病院について定期検診で世話になっている先生に敬語を預けてから俺はトイレで三回抜いた。
番のフェロモンに当てられたのに、この発散は辛すぎて父さんからの連絡が来るまで、トイレで泣いた。
検査の結果で、数日の間にきちんとした発情期が始まるから、一緒に居て安心させてあげてと先生からのお墨付きも貰い、我が家に圭吾を連れて帰った。
夜遅くに父さんと母さんがマンションに来て、玄関で2人の話を聞いた。
父さんからは発情期の間に必要なタッパに入った食料やスポーツ飲料、シーツやバスタオルにウェットティッシュなどと一緒にマニュアル的なものをもらい、母さんから圭吾を襲おうとした奴らの状況を聞いた。
2人に「後は任せろ」と言われ、こそばゆくなり頬をかいた。
貰ったものを片付けて、ソファに座りながらマニュアルを読んでみた。
父さんのマニュアルは事細かくかかれている。
・番はアルファのベッドで寝かしておく。(死んだように寝てる時も有るがそっとしておけ。)
・オメガが忙しく動き始めたら声はかけちゃいけない。(自分の服を集めていく姿は可愛い。圭吾君も巣作りすると良いな。)
・出来上がった巣を絶対に否定するな!!絶対にだ!!正一郎が死ぬ思いをする事になるからな(否定されて、巣を壊されたオメガが自殺した話はいくつも聞いた)
・風呂は必ず水を巡回させながら溜めておくこと。(離れる事を極端に嫌う時がある。その時は本当に可愛い。シャワーは役に立たん。衛生的にも、怪我をさせない為にも大事だ)
・シーツの交換ができるようにベッドの横にソファを置いておけ(交換中に避難させておける。そのままソファでしても良いように防水用のシーツかけておけ。)
・ウェットティッシュとゴミ箱はベッドとソファに置いておけ(すぐに取れる位置が本当に大事)
・タオルは役に立たん。バスタオルの替えはシーツと一緒に置いておけ(これは体感すればわかる。ウェットティッシュの偉大さに惚れ直すぞ)
・寝室の冷蔵庫にゼリー飲料や、水分はいっぱいに詰め込んでおく。(キッチンの冷蔵庫まで取りに行く暇がない。)
・自分がいったら圭吾君に必ず水分を取らせる(脱水になるからな、スポドリ大事。後、口移しは至高)
・性行為に入る前に避妊薬は飲ませておく事。(速攻でラットに入る可能性があるからな。理性なんて一瞬で消える。妊娠中出来ないのは辛い。圭吾君の心と体がきちんと向き合えるようになってからだぞ。本当に妊娠中出来ないのは辛い。)
・発情期が来そうだと気づいたら、軽食を作って冷蔵庫に溜め込んでおけ。(グデングデンの番を火のそばに連れて行けない。作ってる間もチンコしゃぶって来るから、作れない)
など、他にもいっぱいかいてある。
普段、厳ついおっさん達相手にして組をまとめ上げている母さんから想像し難いけど、そういう事なんだろうなぁ。
とりあえず風呂とソファの移動とやる事いっぱいあるな。
料理は圭吾ができるからと思って、嫌々教えてもらっていたけど、この為に料理作りを教えられていたんだな。
色々、マニュアル通りに準備をして一息つこうとソファの場所見たけど、寝室に移動させてたのを思い出し、食卓のイスに手をかけた時に、寝室から物音がした。
圭吾が気になり、寝室にドアを少し開けるとやばかった。
圭吾のフェロモンに一気に意識が持っていかれそうになった。
急いでドアを閉め深呼吸で少し落ち着いてからもう一度覗くと、さらにやばかった。
クローゼットの中から引っ張り出した俺の服が散乱しているし、ベッドの上が俺の服で山盛りになってる。
これは本当に嬉しすぎる。俺を求めてくれているというのを視覚から感じ取れるのは素晴らしすぎる。
音を立てずにベッドに近づくと圭吾の甘い吐息が聞こえて来る。
少しだけ服をずらして覗いてみると、俺の服の匂い嗅ぎながら悶えている圭吾の顔があった。
「しょう、ふっ・・しょういっ、しょういちりょう・・・」
俺と目が合うと嬉しいが溢れんばかりの笑顔で、俺に手を伸ばし抱き寄せようとする。
そのまま一緒に巣に入って、圭吾をだきしめた。
「上手にできたね。作ってくれてありがとう。」背中や肩を撫でながら、顔中にキスをして褒めてやる。
「えへへ。うまくできた。しょういちりょう・・これ、このふきゅ、ちょうらい」
下ったらずで、俺の着ている服をねだって来る圭吾を前に、一気に熱が下腹に溜まって来るのがわかる。
「服だけでいい?俺はいらない?」服を全部脱ぎ圭吾に渡しながら聞いてみる。
両目にいっぱい涙を浮かべて必死に首を振りながら、先程渡した服を放り投げて俺の首に腕を絡めながら縋り付いて来る圭吾。
「しょうがいい!!しょうが欲しい!!」
はぁあぁぁ。これが発情期か!!俺の番が可愛すぎる。
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