14 / 28

クズ

自分たちの初恋を実らせる為に、犠牲になる孫達。 いきなり連れてこられたホテルで、人生初のお見合い。 あり得るか? あとは若い者で。 本当にそんなこと言うんだなってのが感想。 俺の目の前には、不貞腐れた顔の男。 何でもお爺さんと金の絡んだ約束があるらしい。 こっちとしては何でも良いよ。 定期的に会って上手く言ってるアピールをするらしい。 何そのめんどくさい事。 とりあえず、連絡先を交換して別れた。 残業中に震えるスマホ。 1ヶ月前に会ったお見合い相手の名前があった。 「なにか?」 『爺ちゃんから、上手く言ってるのか、催促が来た。明日時間ある?今からでも良いけど。』 「どこに行けば良いんだ?」 『今からなら、◯◯駅近くのクラブに居る。明日なら』 「少し会ってれば良いんだろ?そこに行く。」 あ〜夢にしといてくれよ。 ふざけんな。 終わりかけだった仕事を早々に片付けて向かう。 人生初のクラブは、パリピの巣窟だった。 そこら中から、タバコと酒の匂い。 体を絡ませ合い、ホテル行けと言いたい。 「マジかよ…そんな格好でここ来る?はぁ〜ないわ〜」 俺を見るなりため息を吐きながら隣の女の子と思ったら男の頭をナデナデ。 俺をケラケラ笑う周りの奴らと一緒に、ダサいだの何だの。 こちとら仕事上がりのサラリーマンだぞ。 よし、此処に来て座って5分経った。 帰ろう。 「えぇ地味男さん、帰るの〜」 立ち上がった俺に、揶揄ってくる女男。 「は?!ふざけんなよ今来たばっかじゃん!」 「5分も居たんだからいいだろう。爺さんに報告しとけ。」 何か喚いて居たが無視して店から出る。 周りの奴らとよろしくしとけ。 こんな感じで、あいつとは最長でも10分会って帰るを月に2、3回して居た。 モテるのだろう。 毎回、誰かといちゃついて居た。 今日は行くとキスしながら相手の体を弄って居た。 マジでホテル行けよ。 こんな奴と結婚とかする奴は気が触れてると思う。 浮気し放題野郎と一生一緒には無理だろう。 いつも通り5分経ったので店を出ようと出口に向かう。 「あれ?イノちゃん?」と腕を掴まれた。 「……!ミッチーじゃん!久しぶり。」 大学時代の友人との再会に気分が上がる。 「帰えんの?久しぶりに飲もうよ。」 「俺の用は終わったから、良いぜ。」 ミッチーが俺を連れて行ってくれたのは、落ち着いた雰囲気の個室があるバーだった。 静かに乾杯をし、久しぶりに見たミッチーは大学時代のヤンチャさはなりを潜め落ち着いた大人の男になって居た。 「イノちゃんの噂は結構聞いてたよ。」 「俺の噂?」 「スーツ姿で来て直ぐに帰っていく男ってね」 「あぁ月に何度か、あそこで会う奴が居てさ。」 「なにそれ、ふふっ」 「笑い事じゃないんだよ、こっちわさ。爺さん達の初恋を孫に託すとかボケた事言い始めてさ。あいつも爺さんと金の約束があるらしくて。月に何度か会ってんの。」 「マジかよ。すっげぇな。」 「何かを話す訳でも無く、あいつが誰かと乳繰りあってるのを見て帰るって感じ。」 俺の愚痴を静かに聞き流して、美味しい酒をゆっくり飲むミッチーは、楽しそうに笑ってる。 気が付けば2時間経って居た。 楽しい時間は経つのが早い。 ミッチーと別れ、タクシーを待っているとあいつから電話がかかってきた。 「もしもし?」 「今、どこ?」 「◯◯のタクシー乗り場」 「行く」 と通話は切れたが、アイツは飲み過ぎているようで、呂律が回って居なかった。 酔っ払いの相手とか、めんどくせぇな。 現れたアイツからは相当飲んだのか、よく歩けているなってくらいに酔っ払って居た。 一緒について来た、いつぞやの女男はホテルに行こう?俺の家でも良いからと腕を絡ませて、誘っている。 俺はなにを見せられているのだろう? さっさと帰ればよかった。 止まったタクシーに乗り込むと、アイツも乗って来た。 「ちょっとどこ行くの?」 「うるせぇ!はなせ!」 女男の絡んでいる腕を払いのけ、タクシーに行き先を告げる。 ついた先は、マンションで俺を引きずるように最上階の部屋に入っていく。 俺よりもガタイのいい男の酔っ払いほどめんどくさいものはない。 抗うもアイツには一切効かずに、俺は犯された。 初めての体験で、俺は軽く天国を見た。 さすがはヤリチン。 同意なしに始まった事だが、かなり気持ち良かった。 気付けば朝で、眠った男を放ったままで家に帰ってきた。 あれから3ヶ月変わりなく時たまアイツと会う生活を過ごしてきた。 あの日の事をアイツは全く覚えて居なかった。 何もなかったと嘘をついて、やり過ごした。 そして俺は婦人科に来ている。 あの一回で無事に?おめでたです。 性事情に疎かった俺は、中に出されたら避妊薬を飲むと言う事を本気で知らなかったのだ。 最近吐き気が有るなぁ、仕事を詰めすぎてたなぁと軽く考えて内科に受診して、婦人科にまわされたのだ。 手の中には白黒のエコー写真。 小さいエイリアンの物体が写っている。 アイツにはどう言おう? 子供手帳を貰い、相手の名前を書く欄を見る。 …………。 あいつが旦那は無いな。 幸い、貯金もそれなりに有るし、シングルで育てよう。 あいつに妊娠を伝えると罵られた。 爺さんズの前で、それは盛大に。 アイツがいるのに他の男に抱かれる様なビッチだの、これは裏切りだの、避妊もしないクズに抱かれて逃げられたからって俺は面倒見ないから!とね。 いやほんと、耳が痛く何ねぇのかな? うちの爺さんは泣いて居たが、あいつの爺さんが肩を抱き慰めて居たので放っておこう。 おかげでこのふざけたお見合いは終了した。 自分の素行は棚に上げて俺の妊娠はダメとか。 アイツは何様だ。 俺の腹が外からも見てわかるくらいデカくなってきた頃、またミッチーとアイツと再開した。 仕事で。 ミッチーはビックリして居たけど、アイツは睨んで来た。 仕事が終わり、ミッチーに誘われいつぞやのホテルの今度はレストランに。 何故かアイツもいる。 ミッチーの元で仕事を覚えているらしいけど、プライベートについてくる意味よ。 「まさか半年ぶり?にあったらお腹がデカくなってるとか思わないよ。」 「俺も最後の仕事で会うとは思わなかったよ。」 「この仕事で産休か。で?相手は?結婚したって聞いてないんだけど?」 「なーいしょ。シングルで育てていくから。その辺詳しく聞いてくれるな。」 今はやめろ。 相手はミッチーの横で俺を睨んでいるんだからな。 「これ美味いな。」 食事の話に話題を切り替えようとして居るのに。 「相手居ないなら俺にしとく?」 「……?」 「俺は浮気しないし、子供も好きだし、社長してるし、優良物件ですけど?」 「もし次にお前の子が出来たら、この子も同じように可愛がれないだろ?」 「俺はイノちゃんの子なら問題なしだよ。」 アイツは、面白くなさそうに不貞腐れて居るけど、そんな顔をする意味がわからない。 「さて、そんな茶番は終わりにして本題は?」 俺の質問ににこりと微笑んで居るミッチー。 嘘って事はお見通しなんだよ。 だてに4年も一緒に過ごしてないわ。 「うーん。やっぱりダメかぁ。相手の事を何かこぼすかと思ったのに、残念。」 なるほど。 相手の目星が付いてるわけね。 「おせっかいな奴だな、相変わらず。」 アイツは困惑した顔で俺とミッチーを交互に見てる。 「俺の事より、自分の方だろ?」 「イノちゃんの事を世話して、恩に着せて俺の結婚に協力して貰おうとしております。」 「たっく、そんな奴だよミッチーは!」 俺に恩を着せる事を失敗しながらも、ミッチーは俺にして欲しい事を要求して颯爽と帰って行った。 俺も一応名家出身なので仕事の面で顔は効くし、恋人を囲うためにも力を貸して欲しいらしい。 10割恋人だな。 本当にミッチーは優良物件だわ。 全力で愛して貰えるって羨ましい。 俺も帰ろうと立ち上がると、軽い貧血を起こしてフラついた。 俺を支えて、椅子に戻してくれたのはアイツだった。 「直ぐに治るから、帰ってくれ。」 無言で横に立ってるアイツ。 離れていく足音を聞いて、やっと帰ったとホッと息を吐く。 思っているよりも緊張して居たようだ。 よし!落ち着いたので帰ろう。 仕事も無事に引き継ぎを終え、今日から産休だ。 お見合い失敗後から実家から縁を切られたので、仕事も辞めようと思ったのだが、引き止められ産休になったのだ。 ミッチーは無事に恋人とうまく行き、来年結婚するってよ。 兄貴が式に参加するみたいだから俺は参加しない。 先に結婚祝いを二人の顔見て渡せたので十分だ。 長い陣痛に耐えやっと出てきた我が子を見て、遺伝子の凄さを思い知った。 髪色も目の色も顔の特徴も完全にアイツ。 笑うしかなかったよ。 そんなに似る必要あるか? 俺に似たのって鼻くらいじゃね? けど、可愛い。 もう本当に可愛いしか出てこない。 この幸せをくれたアイツには感謝しよう。 1ミクロンだけな! 乳もしっかり飲んで、チビはスクスク育って、やっと3ヶ月。 首が座り、よくあぶあぶ言っている。 俺とチビの検診を終え、たまには良いかとベビーカーで散歩して帰る。 これが良くなかった。 どうして直ぐに帰らなかった俺。 天気がいいから、散歩しましょうねぇ。 じゃねぇわ。 歩いている側の店のドアが開いたから止まると、中から出てきたのはアイツとその恋人。 無愛想な顔のアイツに、もたれかかる様に腕を絡めている女性。 俺に気づいてベビーカーの中でご機嫌なチビを見て、何かに気づいたアイツ。 そのまま4人でホテルの1室に連れていかれたのだ。 「その子の相手誰だよ。」 「誰でもいいだろ。そちらの女性は?」 「んな事どうでもいいんだよ!!」 どうでもいいってお前、そういうところだぞ。 「どうでも良いってなに!?私、婚約者だよね!?」 キンキンと金切声をあげて、アイツの腕を揺すって怒っている女性はやはり新しい婚約者か。 寝て居たチビが、女性に驚いて起きてしまった。 すまんなチビ。 抵抗しようにも、アイツの威圧にビビってしまったのだよ。 「うるせぇ!帰れよ!こっちは大事な話があんだよ!」 「あぁびっくりしたな。ごめんごめん、大丈夫だからな。」 子供の前で何してくれてんだ。 自分でも驚くくらい低い声で睨みつけると二人とも大人しくなった。 二人から隠すように授乳用のケープの中で乳をやる。 満足したのか、でっかいゲップとオナラを出してまた寝始めた。 いやぁかわいい。 寝ながらもチュパチュパ唇が動くのを見るのが、最近のお気に入りだ。 視界に入った二人で今どう言う状況か思い出して真顔になる。 二人に向き直り、さっさと終わらして帰る算段を立てる。 「二人は婚約してるんだろ?なんで元婚約者の俺がここに連れてこられなきゃ行けないんだよ。」 「だって、どう見てもその子、俺じゃん。」 「で?」 泣きそうに俯いていたアイツは勢いよく顔を上げて唖然としている。 「お前に似ているからって、だからどうした?身に覚えも無いだろ?ただの空似だ。」 「いや、だってその青味がかった髪だって、茶色の目だって顔の作りだって俺じゃんか!!」 「大きな声出すなよ。ごめんねぇ、もう少しで帰るからねぇ。」 「あ、ごめん。教えてくれよ。その子は俺の子だろ?」 「じゃあ聞くが、婚約者であるその女性はどうすんだ?どうせ家柄みだろ?俺とのお見合いで盛大に俺を罵って自分は被害者だと言ったのはお前だろ?次はどうすんだ?」 「あれは・・・・、知らなかったし、その・・・。」 「そうお前は何も知らない。だから大人しくその子と結婚して、二度と俺とチビに関わらなければいいんだよ。」 「そんなの、違う、いや、あの。」 ん〜びゅりゅるるぶじゅ! 盛大に空気を打ち破ったのはチビの豪快なウンチとオナラの音だった。 「ふふふっ、いっぱい出たなぁ。あぁ背中までいってるな。悪いけど、シャワー借りるぞ。」 「え、あ、あ〜。」 着替えとオムツを持って、浴室に連れて行く。 後ろをペンギンのように着いてきて、ドアを開けっぱなしにするアイツ。 「冷えるから閉めろ。」 なんでお前まで入ってきて閉めてんだよ。 シャワーで気持ち良くなっているチビは、起きてご機嫌よく親指を吸っている。 出すもの出して、ちょっとお腹空いたか? 「スッキリしまちたねぇ。気持ちいいでちゅかぁ。」 もっちり肌の頬に、すりすりして乳臭ぁぁい匂いを満喫。 バスタオルに寝かしたままで、チラ見しながら汚れた服と風呂場を洗い後始末をして片付ける。 あ、オムツ入れのビニール袋忘れた。 「手慣れてるな。」 「当たり前だろ、俺しか居ないんだから。」 まだ居たのかよ。 アイツの前を通り過ぎて、ソファーに置いてあるカバンからビニール袋を取り出す。 「うわぁ、くっさ。ちょっとそんな汚い物見せないでよ!!早く帰ってよ!」 女性の怒り声で、ビックリしたチビがまた大泣きを始めた。 無視だ無視! 後ちょっと待ってね、おチビ。 「お前が帰れよ。邪魔なんだよ。」 女性の腕を掴み部屋から出そうと引きずって行くアイツ。 婚約者の女性は痛い痛いと叫びながら抵抗も出来ずに部屋から追い出された。 戻ってきたアイツは、俺の前で土下座をしてきた。 「頼むから教えてくれよ。頼むから。俺の子だよな?」 「さっきも言ったけど、お前は何も知らないんだ。」 「そうじゃない!そうじゃないんだ。」 頭をあげたアイツはボロボロと涙をこぼしながら、俺に懇願するように見つめてくる。 「最初はイヤイヤだったよ。祖父達の意味わからない事に付き合わされて、お見合いさせられて。けどさ、道長(みちなが)さんと喋ってる、楽しく笑い合ってる祈(いのり)が可愛く見えてさ。俺と会う時は無表情か、面倒臭いって顔なのにって悔しくて。そしたら妊娠してるし、ふざけんなって思った。」 「そうだ。俺は尻軽のビッチで、後なんだっけ?あぁ、遊ばれて男に捨てられたんだっけ。それで良いじゃん?それが事実で俺は構わない。俺にはチビだけで良い。」 「だって、相手は道長さんだと思ってたんだよ。ちょうどそのくらいだと思ったから。そしたら久しぶりに会ったら、道長さんとは全く関係無さそうに普通にしてるし、俺の勘違いだったのかと思って。」 「ミッチーは高校からの親友が居たからな。両思いなのに、ミッチーの家を気にして恋人になろうとしてなかった子だ。だから俺を出しにして既成事実作って、逃げられないようにして手に入れたからな。本当にミッチーは敵に回したくないよ。」 「うん、道長さんはやり手だよ。だから道長さんに力を借りて調べた。」 うわぁ、ミッチー何してくれてんだよ。 最悪だわ。 「マンションの防犯カメラの映像確認したら、いのりと帰ってきてその5時間後にいのりだけが腰を庇いながら出て行ったのをみた。」 あぁ、確かに腰痛かったなぁ。 「道長さんに協力して貰って、病院で俺とその子が親子なのか調べた。」 スマホを取り出し、スピカーをオンにしてミッチーを呼び出す。 『もしもし、イノちゃん元気?』 「俺もチビも元気だ。そんな事より俺に謝る事ない?」 『んーどれだろ?』 「笑うんじゃない。はぁ〜〜〜。何してくれてんの?俺もう実家と関わるの嫌なんだけど?」 『あーごめんね。その辺は上手くやってくれるんじゃないの?直幸(なおゆき)君が。』 「いや〜上手くやろうと、どうやろうと、浮気やろうと一緒に居たくないんだけど」 『あ・・・・忘れてた。』 「チンコもげろ!」 通話を切ってスマホを鞄に戻し、チビと一緒にソファーに身を預ける。 チラッと直幸を見れば、唇を噛んで俺から何かを言い出すのを待ってる。 どうすっかなぁ。 溜息しかでねぇよ。 「さっきの聞いただろ?」 直幸は静かに頷き、口を開いて何かを言おうとしてやめるを繰り返し項垂れた。 「子供を見たから動揺しているだけだ。だから忘れろ。」 そのまま直幸を放って、俺とチビは俺達の家に帰った。 1歳になりチビはテコテコと歩くようになった。 しゃがみこんでは色々な物を俺に渡してくるようになった。 しゃがんだ時のお尻のラインが可愛くてたまらない。 カボチャパンツなる物を見つけた時は、速攻でポチったわ。 「いにょちゃああ!これーー!」 「なんですかぁ?」 したったらずに呼ばれる瞬間は、何者にも変えがたい。 「うわあああ!それはぽい!ぽいして!」 キョトンとして首を傾げる居る姿は可愛いが、握って居るのは確実にうんこだ! 急いで公園トイレに走り、手を洗ってやる。 マジで油断したわ。 最近仕事復帰をして、チビは保育所に通っている。 休日だからと公園に来たものの、このハプニングですわ。 子育て大変だけど、こうやって笑わしてくれるチビが可愛くて仕方ない。 ミッチーは、海外で仕事をしている。 もう直ぐパパになるって楽しみで仕方がないって言ってた。 直幸とは、うちの会社と仕事の関係が続いているようで復帰初日にすれ違った。 あの女性との婚約は破談して、今はフリーらしい。 会社の女性達が噂していたのを聞いただけなので、本当かどうかは知らない。 ぼちぼち買い物して帰るかぁ。 買い物袋をぶら下げたベビーカーの重さに、もう抱っこ紐だけで出掛けた方がいいような気がしてきた。 チビも重くなってきたからな。 チビはご機嫌に「いにょちゃん。もしもち〜?」電話のおもちゃで遊んでる。 「はいはーい、もしもし?」の繰り返し。 こんな日常がやっぱり幸せだと思う。

ともだちにシェアしよう!