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浮気
今日もカッコよく決めちゃってさ。
「今日はごめんな!また埋め合わせすっから!」
ちょー良い笑顔で玄関から出て行こうとするコイツに、いってらっしゃい、とは言わない。
笑顔で手を振って送り出すだけ。
このドアが閉まれば俺は忙しいのだ!
高校からの付き合いでもう5年?6年になるのか。
大学進学と同時に同棲して上手く行ってたと思うんだけどなぁ。
半年ぐらい前から俺はただの同居人になった。
一緒に食事も取らなくなったし、一緒にデートも無くなったなぁ。
はは、セックスなんていつしたっけ?
最初はさ、忙しいんだなぁって思ってたんだよ?
体調崩したら大変だからって気を使ってさ。
3ヶ月前かな?俺見かけたんだよ。
俺の彼氏と仲良く恋人繋ぎで歩く二人を。
そしてホテル街に消えていった。
そこから考えた。
なんで浮気したんだ!?って問い詰めるのか。
素知らぬフリをし続けるのか。
何も気にせず俺も浮気?するのか。
なんて本当にしょうもないこともいっぱい考えた。
結論は、ネトゲ旦那!
俺に新しく彼氏なんてできる気がしない。
コイツと付き合うきっかけもコイツからの告白から始まった。
あの頃は幸せだったなぁ。
毎日俺と昼飯食って、くだらない話しして笑い合って、放課後どっちかの家でダラダラして。
居心地が良くて、付き合うって言われてキスして。
「そんな日も有ったね〜と♪」
パソコンの電源入れてヘッドセットを頭につけて〜。
ゲームを立ち上げて〜ロッグイーーーン!
俺がやっているのはMMO RPGのオンラインゲーム『リックル』って言うやつ。
ンフフ。ンフフフフ。んはははははは!
俺はこのゲームで結婚をしているのでーす♪
言うてね、中身は相手も男♂
キャラは俺が女キャラだからゲーム内で結婚が出来たんですわぁ。
この子ね、めちゃくちゃ良い男なの。
最初はダンジョンでヒーラーとしてパーティ組んだのが始まり。
そこから何もせずに喋りまくって、気がつけば起きる時間になってた。
寝ずに学校行った時は、まじでキツくて帰って速攻で寝た。
起きたらまたログインして、ゲームして喋って。
聞き上手過ぎなんだよこの子。
おかげでね、彼氏の事なんて気にならなくなった。
もう別れても良い。
と言うか俺もう彼氏じゃ無いんじゃないかなぁ?
そんな感じで俺は最近ゲーム内旦那に会うのが楽しくて仕方がないんだよね。
これって浮気に入ります?
入りませんよね?
だって、俺は浮気男は要らないし、なら家から出て行けって?大丈夫。
来月の更新しませんって管理会社に言ってあるから。
ログインして喋りつつ、荷物を片付けていくのだ。
新しい所はバイト先でそのまま就職予定だからその近くで見つけたし。
来週の日曜日に引っ越ししてこの家の鍵を彼氏に渡してそれで俺たちは終わり♪
「よし、箱詰めはあらかた済んだかな」
『お疲れ〜近所なら手伝いに行くのにね』
「ホントだよ、手伝いに来て欲しいよ!」
『これから一人暮らしだし、遊びに行こうかな』
「まじで?来ちゃう?良いよ良いよ、来い来い」
ワイヤレスヘッドセットだから動き回りながらでも、会話ができるって良いよね。
片付けも終わったし、パソコンの前に座ろうと思ったけどジュースが無いや。
「ちょっと飲み物取ってくる」
『いてら〜』
ヘッドセット外して、ついでにトイレ済ませておこうと部屋を出た。
浮かれた気分で鼻歌まで出ちゃうよねぇ〜♪
新しい新生活が始まるのです!
冷蔵庫には〜昨日買っておいたヤツが有るのです〜♪
トイレ済ませてペットボトル持ってパソコンの前に戻った。
途中でカップ麺食ったり、ダンジョンで狩りしたり旦那とイチャイチャしながら過ごしてた。
気が付けば外は真っ暗で、時計を見れば9時を過ぎてて、旦那ともう9時じゃん!って意味もわからずに笑ってた。
「あ〜狩り疲れたなぁ、ちょうど良いし風呂でも入って来ようかな」
『じゃあ俺と一緒に入ろうか』
「まじかぁ襲わないで居られるかなぁ?」
『俺が襲われるの?嫁さんに喰われるのかぁ、それも良いかも』
「ははは、据え膳食わぬは男の恥って言うしな!」
『よし、じゃあいただきます!』
「おかしいから、俺がいただくから!じっとしててくれよ」
『それは無理かなぁ、俺が旦那だし、譲れませんから』
「それ言われると、どうしようかなぁってこんな事言ってたらいつまでも入れないから!」
『あはははは、ゆっくり入っておいで』
「ん、じゃあ入ってきます」
一回ログアウトして俺は机に突っ伏した。
旦那様!その声で、甘く囁くんじゃ有りません!
腰に腹の奥にジーンと来るから!!
「あぁ、抱かれてぇなぁ」
ふぅって吐き出す空気の重い事。
甘い言葉と優しい気遣いをくれるけど触れる事も出来ない相手。
ログアウトする度に、押し寄せる虚しさは言葉にできない黒くて重い気持ちが腹に溜まっていくんだ。
でも仕方ないよね。
体が触れ合えるほど側にいるのに、触れてももらえない。
好きって何だっけな?
恋人って何だ?
浮気ってどこから?
手を繋いだら?
キスしたら?
抱き合ったら?
セックスしたら?
他に気持ちが浮ついたら?
何度も考えたけど、いつも答えが出ない。
沈む考えを熱めのシャワーを浴びて流してしまう。
タオルで髪を拭きながら、パン1で冷蔵庫を開けたけど、もう飲み物無いじゃん。
仕方ない、コンビニ行くか。
Tシャツジーパンにサンダル姿で、肩にタオルかけてオッサンだなぁって思ってしまった。
ジュースと軽い食料も買ってコンビニの帰り道。
アパートの近くでカップルがキスしてた。
あまり見ない様に通り過ぎようとして失敗した。
だって、目があったから。
彼氏と。
いや、もう元彼かぁ、なんて思ったらニヤけた。
軽く会釈してそそくさと去る俺。
そっかぁ、もう俺、彼氏じゃ無いのかぁ。
クソだなぁ、涙で前が見えないよ〜
笑えねぇよ………、クソッタレが。
「おい、………あの「おめでとう!!新しい子?前ホテル行ってた子と違うじゃん。いや〜モテる男は違いますねぇ」
入ってきたコイツと話する気なんて無いのに、なんだろうね?ヤケクソって奴かな?もうね、口が止まらないの。
「あーここに呼ぶのは再来週からにしてね!俺来週の日曜日に出て行くし、元彼?いや俺が浮気相手か?まぁなんでも良いや。お幸せにどうぞ。俺も新しい旦那と幸せにやって行くからさ。俺の話なんて興味無いか、なんでも良いや。もう良いや……」
涙止まんないし嗚咽まで出だすし、ホント最悪。
何も言わないコイツに段々と腹が立って来て、胸ぐら掴んで押し倒してた。
「なんか言えよ!てめぇが始めた関係だろうが!終わりくらいきちんとしてから他に手ェ出せや!クソ野郎が!何なんだよ……。クソッタレが……」
「可愛い……」
「は?何言ってんだてめぇは!!この期に及んで!」
「俺、浮気してないよ?ごめんね?タカにちょっとヤキモチ妬いて貰いたかったのも有るよ?けどね、大好きなのはタカだよ?世界で一番愛しているよ」
ひさびさに見たデレッデレの笑顔で、コイツの腹の上に跨がる俺の腰に手をわして、Tシャツの中に手を入れて不審な動きをしだすコイツは誰ですか?
意味がわからなくて、涙が止まった。
「あぁ計画が狂っちゃったけど、こんなに不安にさせてダメだね俺。」
と言って腹筋使って俺ごと起き上がりやがった。
しかもそのまま俺を抱きしめたまま立ち上がりやがった。
不安定感に怖くなって思わずコイツの首にしがみついた。
上機嫌でコイツの部屋に連れて行かれて、クローゼットの奥の方から紙袋を出してきた。
紙袋の中から出て来たのは、ビロードの小箱と記入済みの養子縁組の紙。
「俺、会社立ち上げて今いい感じになって来たんだよね。ここを更新せずに引っ越そうと思って新しいマンション買ったんだよね。その時に、えーっと、その、プロポーズしようと思って」
思考停止中の俺は、え、あ、へ、って意味のない返事しか出てこない。
俺を大事そうに抱き締めて、頬を赤らめて恥ずかしそうに鼻の頭をかいているコイツは誰ですか?
はっ!と意識が戻ったら浮気の数々の怒りが再熱して来た!
「ふざけんな!じゃあ仲良く手を繋いでホテル街に消えていったのはなんだよ!家の前まで連れてきてキスしてるとか、クソ野郎じゃねぇか!騙されないからな!」
「うわぁそんなに見てたのに、なんで何も言わなかったの!?タカの方が俺の事要らなくなったんじゃ無いの?普通ヤキモチ妬くよね!?なんでだ!?」
「てめぇみたいにな!男前の奴にはあーゆー可愛い子がお似合いなんだよ!こんなふっつうううの男が隣にいる方がおかしいんだよ!やっと目が覚めたんだなって夢みたいな時間ももう終わったんだなって思って諦めたんだよ!!悪いか!?」
悔しくてコイツの肩に涙と鼻水擦りつけてやった。
「うわぁ……タカ俺の事大好きじゃん」
何言ってんだ!てめぇは!
って言えなかった。
だって、首までも真っ赤になってるコイツが目の前に居てさ。
片手で口元押さえて、視線なんて右往左往してるし。
「まじで何なの……」
ダメだね、コイツが可愛すぎてもう何で怒って居たのか忘れてる俺が居る。
少し冷静になってからこの半年の話をし始めたから聞いてやった。
立ち上げた会社ってのが、恋人を求める1人の為の、マンネリ化したカップルや夫婦の為の、デートプランを考えたり、エスコートの仕方や、マナー講座であったりとカップルが幸せに過ごせるお手伝いをする会社らしい。
うん、俺にはよくわからん。
これがかなり需要があるようで、講師にはホストやホステス、マナー講座の講師、後ウェディングデザイナーも居るらしい。
この世の中、何が受けるのか分からない。
「俺だったらタカとこういうプランが良いなぁとか、考えながらウロウロして居たのを見たんだよ。全部データにする必要があったから会社の人と一緒に居て、さっきのは…、家に送り届けたらこんな感じですかねぇってキスする振りだったんだけど、タカの姿が見えて動揺しちゃって…動いちゃったらキスしちゃって……。本当にごめん」
俺の耳に息が掛かるように喋るのやめろ……大事な話なのに、変な声が出そうになる!
「ふふ、所でさ………、旦那って誰?」
部屋の温度が一気に氷点下になった。
ふぇ!?って変な声でだけど、コイツの背中をガッチリ抱き締めて、隙間が開かないように力を入れた。
顔なんか見れる訳が無い。
「驚かそうとして黙ってた俺が悪いのはわかるけどさ、旦那って誰?しかも日曜日に引っ越すってどこに?ねぇ、タカ…………ちゃんと話出来るよね?」
甘い声で優しく言い聞かすように言ってるけど。
この俺の震えは部屋の寒さのせいじゃ無い。
だってこの声を出す時は、ガチでキレてる時のヤツだ!
俺の頭の中で警告音が鳴り止まないよ!どうしよう!
「ふ〜ぅ、明日はせっかくの休みだし、タカも休みね?」
そこから始まった久しぶりの性行為。
きっちりこの半年の俺の行動を全部洗いざらい、快楽地獄の中で色んなものと一緒に出させられた。
出し終わったら日付が変わってて、、、。
そこから日が登るまでお仕置きされて。
浮気を疑ってた俺に告ぐ!!
ちゃんと話せ!!
あの時にちゃんと話し合って居たら、こんな地獄は回避できたはずだ!!
高校時代のコイツの絶倫具合を思い出せ!!
コイツなりに気遣ってくれて居たんだって思い知らされるから!!
「タァカァ、潮吹いちゃってかぁいいねぇ」
って、嬉しそうに言ってるコイツの目は昏くてちっとも笑ってなかったからな!!
浮気を疑ったり不安に感じたらちゃんと話し合いを!!!!!
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