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王子さまはお断りします_3

 それぞれの性的特徴が顕著になるのは、生物的に成熟する十八歳あたりらしい。  だから俺のような半端者の性判定はその歳に確定されるし、生まれつき性が定まって居る者も二十歳前にぐっと印象が変わることが多い。 「はれ……ここ、どこ?」  ぼんやりと霞がかかったような頭を振ると、くらりと目眩がする。覚えのある酩酊感。アルコールに弱くはないが、ミスを犯さないよう仕事の時は口を湿らせる程度と決めている。それなのに、明らかに酔いが回って状態の身体に、ぼんやりとした頭で首を傾げる。  どうやら寝かされているらしいと、全身を包む心地よい柔らかさから推察できた。ちょうど良い圧力で沈み込むのが気持ち良すぎて、このままもう一度寝落ちしてしまいそうだ。 「亮ちゃん、寝るのはいいけど水飲んで」  すうっと遠ざかりかけた意識が、ぺちぺちと頬を叩かれて引き戻される。起きてと言われて重い目蓋を持ち上げると、すぐ目の前に懐かしい友人の顔があった。 「あれ、翔だ。ははは、ひさしぶりだなぁ」  すっかり音信不通になってしまったつれない幼馴染みを、けらけらと笑いながら抱き寄せる。ほんの少しあった違和感は、押しつけた鼻先に感じる匂いによって霧散した。間違いない、これは榊翔平だ。 「ちょっと、そんな犬みたいに人の匂いを嗅がないでよ」 「ん、らって、翔なんか雰囲気ちがうから。れもやっぱり翔だな、翔の匂いだ」 「……そんな匂い、昔から感じてたの?」 「うん、おれ半端もんだから、じゅーはち過ぎてからなんか感じるようになった。あ、れも翔平らけは、昔からいい匂いすんらよな、なんれらろ」  まだアルファでもオメガでもなかった頃から、翔平に近づくといつも不思議な匂いがした。だから俺は、翔平の気配だけは少し離れた場所からでもすぐに分かった。どんな遊びでも負け知らずの翔平が、俺に隠れんぼでは負けていたのはそのせいだ。 「へー、知らなかった。ねぇ亮ちゃん、ちなみに抑制剤とかちゃんと飲んでる?」 「は? よくせーって、なんれらよ」  俺はアルファだぞ。そりゃあ正真正銘アルファの血以外入れていない榊家の人間から見れば、中途半端で情けない半端者かもしれないが、性判定でアルファと認定され、その身分証も受け取ったのだ。  これまでだって、ベータやオメガに言い寄られることは多くても、アルファには振られ通しだったのだ。抑制剤が必要なフェロモンが出ているなら、逆にアルファを引き寄せているはずだろう。 「うん、まあそうなんだけどさ。なんていうかその、さっきから匂うんだよ」  ふいと視線を逸らす翔平の顔が、先ほどより赤くなっている。なんだろうと思って寝ていた身体を起こして距離を詰めると、ひゅっと息を詰められた。 「亮ちゃん」 「なんら」 「誘ったの、そっちだからね」

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