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王子さまはお断りします_4【R18】

 言葉の意味がうまく繋がらずぼんやりとしていると、強い力で肩を掴まれてそのままベッドに押し付けられる。  見上げた翔平の顔は、逆光になっていて表情がよく分からない。上から覆いかぶさられると、鼻腔を刺激する匂いがより一層強くなる。 「っ、ふ……っん」  それを甘いと感じた途端、ぐらりと脳が揺さぶられて、意識が飛びそうになった。  アルコールのせいだとばかり思っていたが、なんだか妙だ。これまで感じたことのない奇妙で抗い難い酩酊感に、わずかに残った理性が逃げろと警告している。 「亮ちゃん、いい匂い」 「あ、あっ」  脇腹をシャツ越しに撫であげられただけなのに、びくんと跳ねた身体の反応にただ戸惑う。首筋に顔を埋めた翔平が、くんと鼻を鳴らすのが分かって恥ずかしい。それなのに、こちらを柔く圧迫してくる甘い香りに、全身が震えてうまく力が入らない。 「ごめん、ちょっと……我慢とか、無理そう」  はぁっと吐かれた息が、熱い湿気と共に耳を刺激する。翔平、翔平、翔平。頭の中で繰り返したと名前が声に出ていたのか、同じ数だけ返事が返されて、亮ちゃんと囁く口に噛みつかれた。 「ん、んン、ッは」  敏感な上顎を舌でくすぐられると、ゾクゾクと走る震えに無意識に腰を押し付けてしまう。熱い、熱くてたまらない。混じり合った唾液が溢れると、飲んでと促されて喉を動かす。  薄っすらと目を開けると、この上なく整った青年の瞳が潤んでいるのが間近に見えた。可愛い、と素直に思う。  翔平は俺が知る人間の中で、いっとう可愛くて綺麗だったのに、そのうえカッコ良くまでなったらフルコンプリートじゃないか。  ぺたぺたと滑らかな頬を触りたくっては唇を押し付けると、いつの間にかシャツの下に潜り込んでいた手に腹から背中、そして背中から胸へと撫でまわされる。  まるで電流でも流されたみたいに、身体の奥深くがキュンと疼いて腰が跳ね上がる。こんなんじゃ足りない。もっと、もっと触って欲しい。もっと深く甘い味のするキスをしたい。もっと、もっと奥に、欲しくてたまらない。 「あ、っあ、翔、翔ッ」  経験したことのない疼きと飢餓感に、助けを求めて目の前の身体に抱きついた。この匂いだ、この人間だ、彼しか駄目だと本能ががなり立てている。  とろりと何かが溢れて伝う感触に、怖いと思うより先に早くと口が動いた。早く、早くと身体が急かしている。一度溢れたそれはもう止められなくて、先に興奮していた雄を差し置いてきゅうきゅうと中が疼く。 「ひッ」 「すご……もう、こんなに濡れてる」  背骨から尾骨をなぞった指が、そのまま苦もなく体内に入り込んでくる。浅く深く中を探りながら拡げられて、濡れた音が恥ずかしいのに何も考えられないくらい気持ちが良い。 「ンや、あ、ぁあッ、そこ……やぅッ」 「亮ちゃん、ねぇ、いれていいよね。亮介のここに、おれ……ッ入りたい」 「あ、あっん、ンん、ッれて、きて、しょッへが、いいッ、ぁあ、あっ、あっ」  訳がわからないまま手に触れる背中に縋り付くと、くの字に曲げられた指がぐっと引き抜かれて軽くイってしまう。前から吐き出された精液と、後ろから垂れてくる濡れた感触に、ひくひくと内腿が震えて止まらない。 「亮介、好きだよ。ずっと、ずっと亮介のこと俺のにしたかった」 「ふぁっ、や、そ……もう、っらすな、よぉッ、ンあっ」 「ん、うん……はっ、あーくそッ」  ぬちぬちと行き来していた熱くて固いものが、ぐっと入り口を突いて中に侵入してくる。気を使うような優しい動きが、逆に焦ったくて腰が動いてしまう。もう大丈夫なのに、翔平にならどんな無茶をされたって、この身体は喜んで受け入れるのに、どうしてそんなに躊躇うんだ。 「ちょ、りょうちゃ、まっ」 「ぁん、やら、も、っあ、ぅごいてぇ」 「ッ、し、らないからな」  はやくはやくと強請る腰がしっかりと掴まれると、ひと息に奥まで突かれて息が止まる。  しかし初心者には乱暴すぎる扱いにも関わらず、すでにたっぷりと濡れていたそこは痛みもなく熱く滾る雄を受け入れて、きゅうきゅうと嬉しげに締め上げる。 「ひぁッ、あっ、あぁッ、っげし、ぁうッ」  初っぱなからごんごんと奥を突かれて、開きっぱなしの口からは意味不明の鳴き声と唾液が漏れるだけだ。  もう何も考えられない。ここが何処かも分からない。ただむせ返るような匂いがさらに本能を刺激し、狂ったようにこの行為の先を求めるだけだ。 「りょう、りょうちゃ、ん、ッかに、だすよっ」 「っして、だしてぇ、もっぁあ、あ、とおくッ、っくにほし、いィ」 「ん、うん、うん、りょうッ、おれのこ、孕んでッ」 「ひゃっッ、ああっ、あ、あん、おぐっ、ぁああっ」  腹の最奥に叩きつけるように注がれる熱に、ぶるりと大きく震えが走る。翔平を咥え込んだ場所が、最後の一滴まで搾り取ろうと蠢くのが恥ずかしいのに、わずかに残る自我を意にも介さず腰が揺らめく。  中を満たす精液の感触に、うっとりとするような充足感と幸福感が湧き上がってくる。これが欲しかった、ずっと欲しかった。でもまだ足りないんだ。もっと、空っぽになるまで全部注いで、俺の中から溢れるくらい満たして。  うわ言のように恥ずかしい台詞を並べていると、再び固さを取り戻した性器に中をかき回されて背中がのけ反る。  圧倒的な本能の前には、理性なんて薄っぺらな紙切れ以下だ。食欲や睡眠欲を我慢しつづければ人は狂うように、性欲を無視することなんて所詮不可能なのだ。 「そこ、ぁあッ、いイッ、っもちイイっ、もっと、もっとして」  完全にタガが外れた本能のままに求めあって、何度イったか忘れるくらい濃いアルファの精液を注がれ続けた。脳みそも身体も形が残っているのか分からないくらいどろどろで、全身で感じる翔平の匂いと味に酔った。  俺にとって榊翔平という個体が特別なものであることくらい、馬鹿にだって分かるだろう。生物学的にはアルファが濃い俺の性を歪めてしまう程の圧倒的な存在。この世界にある、理性を駆逐する番という恐ろしいシステム。 「……絶対に、ごめんだ」  すやすやと汚れたベッドで幸せそうな寝息を立てる翔平を見下ろすと、俺は滝のように流れる冷や汗を拭いながらこっそりとホテルのスイートルームを後にした。

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