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第3話

「さあ、こっちだよ。」 僕の手を握り、先ほどよりも強い力で引っ張られて無理矢理歩かされる。 もう、どうにもならない…諦めた気持ちで心を閉じかけた時、公衆トイレが見えた。 「僕といいコトしようね。」 ニタァと笑う、男の口の中に見えた汚い黒い歯…あんなのが僕の体を這うのか? あんなのと口を合わせるのか? 嫌だ、嫌だ、嫌だ!!! 諦めかけていた頭と心が再びここから逃げなければと奮起する。 両手で男の手を外そうとするが、やっぱりびくともしない。腰を落としてしゃがむようにしても、そのままズルズルと引きずられて行く。 大声を出したら…しかし、騒いだら何をされるかわからない、最悪殺されるかもしれないと言う怖さがあり、唇を噛んで我慢する。 「往生際が悪いよ、お兄さん。」 そう言って男はしゃがむ僕の腰に手をかけて抱き抱えるようにトイレに入って行く。 もうやっぱりムリなのか。 すでにズボンの上からでもわかるくらいに股間を盛り上げ、鼻息も荒くしている男が、慣れた手つきで僕を一番奥の個室に押し込んで、バンと扉を閉じた。 「たす…けてよ。誰か、助けてぇ!!!」 我慢していた声が、あまりの恐怖によって僕の口から突いて出る。 「しーーーってば。怖くないよ。楽しいコトだよ。気持ちいいコトだよ。僕がしてあげるからさぁ…しーーーーっ!」 男の手が僕の口を塞ぐ。 口を開けると下水のような匂いがして吐きそうになる。 「んーーーーーっ!!!」 なんとか声を出そうともがくと、男が僕の顔を扉に押し付けた。 そのままシャツの上から体を(まさぐ)られ、乳首を痛いほどにつねられて、うぅと声が出る。 「気持ちいいんだね?」 ブンブンと首を振るが、勝手に勘違いした男はその指に一段と力を入れた。 「いたいっ!」 「気持ちいいの間違いだろ?嘘つきはダメだよ。」 そう言うと口の中に指を突っ込んできた。下水の匂いが口の中に広がり嘔吐(えず)く。 「汚いなあ。」 僕のよだれでベタベタになった手を口から引っ張り出すと扉に擦りつけた。 「僕の手を汚すなんていけないお兄さんだなあ。」 そう言ってシャツの合わせを両手で持つと勢いよく左右に引っ張った。 シャツがビリビリと音を立てて破れ、ボタンが床にこんこんと落ちてコロコロと転がって行く。 それをぼーっとした頭で眺めていると、扉の前で急に何かにぶつかるようにして倒れて止まった。 そこに黒い靴のつま先が見えたと同時に扉がガタガタと揺れ出した。

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