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第4話
「おい!ここで何をやっているんだ?!」
扉を揺らしていると思われる、男の声がトイレに響いた。
「た…助けて…助けてぇっ!!」
僕の頭がその声で一気に覚醒し、大声が出た。
「しーーーって言ってるのに…何でもないよ!恋人のコトに口出すなよ!向こうへ行け!!」
オヤジがなぁと肯定しろと言う目で僕を睨みつける。
「お兄さん、殺されたいの?」
外にいる男性に聞かれぬよう耳元で囁かれ、その手が首にかかった。
「ひっ!」
恐怖で声が裏返った。
「どうした?何をやってるんだ?!」
「だ…だい…だいじょ…っぶ…です…」
最後の方は消え入りそうな声で答える僕に、それでもオヤジはにんまりと笑うと、
「ほらな。お前の勘違い!分かったら、邪魔しないでさっさと出てけよ!!」
扉の向こうの男性に、声を荒げる。
一瞬躊躇していたつま先が、扉の前から消えた。
「あ…」
無意識に声が出る。待って、行かないで、助けてと心の中では大声で叫んでいるのに、オヤジへの恐怖から声を出せず、絶望の淵に追い込まれて行く。
もう本当にダメだ…。
床にぽたぽたとシミが出来ていった。
「引くぞ。」
扉の向こうから低い声がしたかと思うと、扉が鍵ごとガンと大きな音を出して開いた。
「え?」
一瞬の出来事で、扉に寄りかかっていた僕の体が倒れそうになる。
それを「よっ!」と言いながら抱き抱えられた。
いきなり開いた扉にオヤジも驚きのあまり目を丸くして、言葉にならない言葉を上げながら、僕と男性の横を走り抜けて行った。
「あ、待てよ!」
オヤジを追いかけようとする男性の腕をギュッと握ると、
「やだ!行かないで!!」
そう懇願する僕に、男性は分かったよと言って背中を静かにさすってくれた。
その手の温かさに助かったんだと言う安心した気持ちが身体中を駆け巡り、涙と嗚咽が止まらなくなる。
「よく頑張ったな。もう大丈夫。」
優しくかけられた言葉に、何度も頷きながら子供のように泣き続けた。
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