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第6話

「ほら、大丈夫だから立てよ。」 辰巳が僕の腕を取って立たせ、ジャケットの前のボタンを止めてくれながら、 「もう一回、学校に戻るぞ。多分あいつのなら木島でも大丈夫だよな…シャツのことは大丈夫だから、さっさと行くぞ!」 独り言のように言ってから、僕の腕と鞄を持って歩き出した。 公園を出て、学校に向かうと言っていたが、それとは違う道をすたすたと慣れた足取りで歩いて行く。 「辰巳君、これってどこの道?」 「ん?ああ、大丈夫。学校への道だから。」 そう言って歩き続ける。 辰巳が握る僕の腕の部分が気になって、そこだけ熱を持ったように感じる。 「あ、鞄ありがとう。もう持つよ?」 「大丈夫だから、こう言う時くらい甘えとけよ。」 「あ…ありがとう。」 「素直でいいな、木島は。」 「え?」 「俺はこんなんだから、素直ってのが一番苦手でさ。つい言われたことに反抗して、周りに嫌な思いをさせてしまう。分かってはいるんだけど、出来なくてさ。だから素直なお前が羨ましいって話…ほら、着いたぞ!」 見ると、錆びた扉のような門がある。 「これがこの学校の裏門。今は使われてないけどな。」 そう言って、ポケットから鍵束を取り出すと、迷うことなくその中から一本を取り出して、鍵を開けた。 辰巳が力を入れて門を押すとギギギギギと錆びた音を立てながら門が開いていった。 「その鍵って?」 「悪ーい先輩からの置き土産。」 そう言ってにっと笑うと、ポケットに鍵を戻す。 僕の背中を押すようにして扉から二人で入り、門を閉めると手で鍵を回して、僕の元に戻ってくる。 「行こう。」 そう言って僕の肩を抱いて歩き出す。 横を向くと目の前にある辰巳の顔がまともに見られず、下を向いて歩き続けた。 しばらく今まで見たことも来たこともない学校の中を歩くと、辰巳の足が止まった。顔を上げると雑草の生い茂った中にポツンと立つ小さなアパートほどの建物の前にいた。 「ここって?」 「旧部室で、俺の隠れ場所。」 そう言うと、再びポケットから鍵束を取り出し、そのうちの一本を出しながら、入口に張ってあるロープを跨いでその鍵を開ける。辰巳に続くようにロープを跨いで入り口から入って扉を閉める。辰巳は部活ごとに使われていた部屋のそのうちの一つの前に行くと、違う鍵を取り出してその扉を開けた。

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