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ユキとの距離が近い。 駿:(しゅん)は落ち着かない面持ちで、隣に座るユキをこっそり見つめた。 騒動が起きて数時間後、皆は神社裏の真斗(まこと)の家に集まり、いつもより遅い夕食を囲っていた。 あの後すぐ、駿とアオを襲った妖は、ゼンと真斗によって捕らえられ、今は既に妖の世へ引き渡されている。 駿とアオが襲われた時、ユキは駿の元へ駆けつけたが、ゼンと真斗は、駿とアオを襲った妖の元へ向かっていた。 力が放たれた方角、妖の気配を辿れば、犯人はすぐに見つかり捕まえる事が出来た。 犯人の数は二人。問いただせば、塀の内側に植えられた木の上から攻撃したと分かった。 それを聞き、ゼン達は頭を抱えた。 神社内は安全の筈だったからだ。 真斗の家を遮るように張られた結界があるが、それよりも力は弱いものの、神社の敷地を囲うようにぐるりと結界が張られていた。 それは、外から神社へ向けての攻撃は吸収し、また神社内で想定外の妖の力が働けば、それがアオの盾を砕く前に消せる筈だった。だが、結界はその力に反応しなかった。それは、妖が放った力に、結界が作動させないような術を纏わせたのかもしれない。 今も、神社の敷地を取り囲む結界は、正常に働いている。 だが、結界を作動させずに攻撃するには、複雑に入り組んだ暗号を紐解くように、その結界にとっての隙を作らないといけない。それは簡単な事ではなく、破られる事は今まで無かった。 それにここには、スズナリが、スズナリ亡き後は、ゼンが居る。 スズナリは、人と妖の間に起きた大きな争いを止めた妖、ゼンは、妖達から恐れられる力を持っている。 二つの世の在り方や、ゼンの持つ力に反発する妖達が居るが、彼らは、力では敵わないと分かっているから、ゼンの周囲を巻き込もうとする。 なので、スズナリ川同様、この神社で騒ぎを起こそうとする妖は、ほとんど居ない。 この神社が安全なのは、そういった理由も含まれていた。 だけど今回、神社内に居たにも関わらず、駿が狙われ、結界も難なく破られた。 一同に緊張が走るも、その犯人は、数分後には呆気なく捕まってしまった。それがまた、ゼン達には不思議だった。 怯えて逃げた妖は二人、どちらも何の手応えもなく捕まえられたからだ。 結界を破り、アオが咄嗟にとはいえ作った盾を砕いた力。余程の強者かと思えば、その妖達からはそんな力の気配が感じられなかった。結界を破ったという術も、指示された道具を使ったのだという。 それは、腕輪のような物で、高度な術式がインプットされているというが、使い捨ての道具なのか、その腕輪からはもう何の力も感じられなかった。 そして、ゼンを前に怯えきった二人の妖は、シイナという妖に命令されたと、簡単に白状した。 シイナとは、駿を襲った蝶の妖がいたが、彼女が捕まった際、首謀者だと話し、既に牢屋に捕らえている妖の名前だ。 ゼンを良く思わず、ゼンを陥れる為に、度々騒ぎを起こしている集団のトップの妖。 もしシイナが命令を出したなら、守衛の隙をついて、誰かがシイナとやり取りしている事になる。先程捕まえた妖は、手紙で連絡を受けたらしく、誰が裏で手引きしているのかは知らないという。 だが、今回の事で、シイナが部下達に命令を出している事が分かった。 ゼンとリュウジ、ミオは部下を連れ、すぐにシイナの部下達を押さえに行った。元々、人の世に居た彼らの事はマークしていたらしく、押さえるのは簡単だったようだ。後は、この中の誰かが、今回の騒動について話してくれれば良いのだが。

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