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第30話

「っう…あ…」  威軍は、予告も無しに志津真の首筋から胸に、唇と指を這わせた。飾りのはずの乳首を舐め、チュっと吸い上げた。上目遣いで恋人の反応を確かめた威軍は、満足して先を続けた。  一瞬、指先で赤味を帯びた突起を擦って、そのまま両掌で横腹に触れると、志津真がピクリと体を震わせた。 「ここが、感じるんですね」  志津真が、威軍の身体を知り尽くしているほどには、威軍は恋人の機能を把握していないようだ。 「腹の上で喋んなや」  くすぐったそうに、志津真は笑った。 「じゃあ、先に進みましょう」  威軍も誘われるように笑いながら、志津真の腹にリップ音も高らかに口づけた。そのまま舌を使って、でろでろと舐めながら下へ下へと降りていく。 「ふ…っ」  志津真が息を詰めるほどに、唐突に威軍が志津真の物を口に含んだ。いつものように、ためらいがちに先端を舐めるのではなく、ずっぽりと大きく咥え込んだのだ。 「無理…すん、な」  労わるように言って、志津真は威軍の髪を撫でた。そんな事にも気付かぬように、威軍は熱心に舌を使いながら唇で締め付け、扱いた。  咽頭の奥の方まで迎え入れ、苦し気に眉を寄せた威軍が、堪らなく艶めかしく、無意識の内に志津真の腰が動いた。 「!」  その動きのせいで、喉の奥を突かれ、反射的に威軍の頭が逃げた。しかし、髪に触れていた志津真の手がそれを阻んだ。 「ぅぐ…っ」  苦し気な声を上げるが、威軍も最愛の相手のために必死に努力する。  力づくで締め付けるだけでなく、少し緩めて舌をれろれろと動かし、刺激を与えると志津真のモノがぶるぶると反応した。そのまま舌を這わせ、ゆっくりと志津真の根元から先端を目指した。先端からは苦い液が溢れ始めていたが、迷うことなくそれをジュっと吸い上げた。 「なんや…、エラい巧くなって…」  押し殺したように、志津真が囁くと、黙れとでも言うように、威軍が先端を甘噛みした。 「ん、あ…」  お仕置きされて、志津真は黙り込んだが、充血した場所がジンジンと痛んだ。 「ちょ、ちょっと…今日は、早、い…かも、しれへん」  志津真の告白に、威軍は勇気が出たのか、ますます激しくしゃぶり始めた。  目の前の、口の中の、それが愛しかった。これまでは、愛する人が望むことだからと強いられてした行為だった。それなのに、今は、この凶器とも言える太い物が欲しくて、悦ばせたくて、夢中だった。 「イ、イキそう…」  堪らず、志津真は威軍を引き離そうとしたが、威軍はそれを拒んだ。その意図を察し、志津真は本能に任せることにした。  充血した先端を堪能した威軍は、舌を添わせながら刺激を与え、根元では唇で繰り返しちゅっちゅと吸い上げた。  そして、志津真がすっかり余裕を失い、終焉を迎えようとしているのを確かめると、もう一度喉の奥深くまで、それを呑み込んだ。威軍が上手に出来たことを褒めるように、志津真が息を詰め、次の瞬間、威軍が待ち望んだ白濁を喉の奥へとたっぷり放った。 「ん、あ…ぁ!」「う…ぐっ、…ん」  脱力した志津真に、ぐったりした威軍が縋りついた。 「まだ…、終わりじゃない…です、よ」  甘えるようにそう言って、威軍は身を起こした。 「なら、コレ…使って」  志津真が枕の下から取り出したのは、志津真がここのところ気に入っている催淫性のジェルだ。いつの間にそんな周到な準備をしていたのか、威軍には思いも寄らなかったが、決して拒む理由はない。  大人しく手の平を開いて志津真の前に差し出すと、威軍はたっぷりとピンク色のいかがわしいジェルを受け止めた。 「こんなにいらんやろ?」  すでにほぐれているであろう威軍の身をからかいながら、志津真はその細腰を掴んだ。 「ダメ…。手伝わないで下さい」  威軍が自分の腰を支える志津真の手を払った。 「けど…、ウェイの肌、気持ちいいから、触っていたいんやけどな」  払われた手で、そのまま腰から大腿を撫でまわした志津真は、満ち足りた表情で恋人を見た。 「なら…、ここを触って下さい」  うすく微笑んで、威軍が志津真の手を取って導いたのは、まだ半ばしか目覚めていない前の(しるし)だった。  志津真が熱い手でそれを握ると、嬉しそうにそれはピクピクと反応しながら大きくなった。  片手で威軍の弱味を握りながら、一度手放したジェルを引き寄せた志津真は、威軍の物と自分の手にジェルを注いだ。 「ぁあ…ん」  その刺激だけで身悶える敏感な恋人が愛しくて、優しく、そして次第に激しく彼の物を扱いた。 「あ…、ぁあ…、志津真…」  双丘に寄り添うような志津真の部分を感じ、威軍は物欲しげな声を上げた。 「こ、これ…」  官能が高まりすぎて、虚ろな眼差しで、無意識に腰を動かしている威軍だったが、それでもソノ気になった志津真を捉え取り込もうと努力を始めた。 「入れたい…」  熱のこもった、、性愛の興奮が直接感じられる、この上ないセクシーな声で志津真が囁いた。 「っふ、んっ…」  その声だけで、達してしまいそうになった威軍だが、欲しい物を得るために巧みにコントロールした。 「ぁあ…ん!」  自らの手で、志津真の先端を後ろの入口に導いた。そして、すっかり準備が整った中へと、少しずつ呑み込んでいく。 「ぃ、っや…、あ、さっきより…」  それ以上言えずに、キュッと唇を噛んでしまった威軍の恥じらいが、胸が締め付けられるほど愛しくて、思わず志津真は下から突き上げてしまった。 「停(やめて)!不行(ダメ)!」  心づもりよりも、早く、深く受け入れたことで、威軍は思わず母国語で泣き言を放った。 「確かに、さっきより狭いな」  楽しそうに志津真が恋人を見上げながら言うと、羞恥のあまり顔を背けた威軍だったが、その首筋から耳への火照った肌の色が誘惑的だった。 「ほら…、好きなようにしてくれるんやろ?」  焦らすように威軍の肌を弄びながら、志津真はふざけて言った。  快感が強すぎて、まるで志津真の存在感を中心に全身が痙攣を起こしたように威軍には思えた。 「お…、願い…。志津、真…」  自力ではどうしようもなく、泣く泣く威軍は志津真の協力を求めた。  そのまま、志津真は激しく下から突き上げ、威軍も(たしな)みも忘れて自らの快楽を貪って、淫猥に腰を振り続けた。

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