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第6話:体育祭
学園生活も慣れてきた時期、体育祭まであと一週間となっていた。体育祭実行委員は各クラスから選抜され、体育祭の進行を行ってくれるにしても、毎年選抜で実行するため不慣れなので、補佐として生徒会執行部が援助を行う。そのための会議を実施中。
「あ、あのね……治弥」
「ん? 何? 明」
隣に座る明は俯き小さい声で、ぼそぼそと俺に何かを訴えてきている。何かと思い、明の顔を覗き込みながら問いかける。覗き込み明の顔を確認すると、頬を紅潮させて目線だけを俺に向けてきた。
「んっと……」
それでも小声で、何か言いたそうに言葉を詰まらせる明。
「幸せを噛み締めてるのいいけど……、会議に参加してくれない? 治弥?」
いつの間にか生徒会の注目を浴びていた俺は、平良先輩の声に周りを見渡してしまった。
「恥ずかしいから……、手、離して」
「ご、ごめん」
明に言われて会議中にも関わらず、俺は無意識に隣に居る明の手を握っていた事に気付く。無意識ってこえーと思いながらも、俺は明に謝りながらその手を離した。
「まったく……、そんなに集中出来ないなら、よし! 判った!」
そう言いながら平良先輩は、徐にホワイトボードに大きく見出しかの様に”治弥と明ちゃんの恋愛計画”と書きなぐった。その下には 付き合って一週間後にキスだの、三ヶ月後にエッチだの、好き勝手に平良先輩は書き綴っている。何がよしなのか判らないが、平良先輩の思いっきりのドヤ顔の表情が視界を奪う。
「これでどうだ!!」
「何が、どうだなんですか……、それよりも、俺、三か月も待てませんが……」
そのドヤ顔がなんとも憎たらしく、俺は冷たい目線を平良先輩に送ってしまうが、それよりも何よりも、三か月後にエッチが気になって仕方がない。もう、幼い頃から明を好きだった俺は、今、気持ちが明に受け入れられた事により、嬉しくて仕方がないんだ。明への気持ちを抑えて隠していく必要はないんだ、明も俺を好きだって言ってくれてるのが、とてつもなく嬉しい。長年、明に手を出したいのを堪えて来たんだ、俺の思春期中学時代。
もう隠す必要がないのに、三か月も待てない。俺は正直な気持ちを口にしていた。
「は、治弥ー!?」
はっきり言い過ぎた俺は、明に怒鳴られながら、手の甲を思い切りつねられた。これ、地味に痛いです。
-1-
もー……、治弥ってば、皆の前で何言ってんの!? 恥ずかしい。皆の会話を聞きながらも、ホワイトボードに書かれた文字を目線で追えば、気恥ずかしくなり、俺は俯いてしまった。
「へー……、平良達は三か月後だったんだ?」
咲先輩もホワイトボードを見ていたのか、平良先輩に向けてそう問い掛けていた。その言葉で俺は平良先輩の方に顔を向ける。
「…………、さー、会議再開しようかー?」
平良先輩は目を一度見開き暫く無言でいると、何も無かったように書かれたホワイトボードの文字を消し始めた。その動作を見てか、生徒会のメンバーは和くんに視線を集中させた。
「ん? あー……、俺らの場合はみっか」
「か!? かーーずーーー!!」
視線を集めた理由と、皆何を期待したのか和くんは理解してか、言葉を発するも途中で平良先輩に遮られていた。遮っていたけど、俺でも和くんが言おうとしていた言葉は理解出来た。
「へー……、三日後ねー、平良先輩もなんだかんだ言いながら、やることはやってんじゃん?」
そう、三日後って言いたかったんだ。三日後……、三日後!?
「……後で見てろよ……はるみぃい」
治弥がからかうように平良先輩に告げると、平良先輩はこれでもかってくらい、顔を真っ赤にさせ、治弥を睨みながら言い返していた。そうだよね、そんな話題されたら恥ずかしいに決まってるじゃん。
「…………俺」
「明?」
「俺! 治弥とエッチなんてしないから!!」
恥ずかしさのあまりに俺は、そう皆の前で宣言してしまっていた。とにかく、この話題から逃れたい。
「よしよし、明都おいでー」
半分涙目になっている俺に、昭二が声を掛けてくれたので、俺は素直にそれに甘えて、手を広げている昭二の胸に飛び込んだ。
「しょうじーー」
「あーあー」
「え? なんで……、なんでそうなんだよ……」
その光景を見て、生徒会の笑い声と、朋成くんの呆れた声と、治弥の情けない声が耳に入ったが、恥ずかしくて俺は昭二の胸に顔を埋めたまま上げる事が出来なかった。
-2-
生徒会の会議も終了し、あんな話題をしていたから、そんなに進んだ気が全くしないが、あの後はなんとか五十嵐から離れてくれた明はずっと俯いたままだった。帰りも口を聞いてくれなく、終始無言の明は、怒っている様子ではあるものの、寮に帰ってから明は何故か俺の部屋に直行して、俺のベッドに潜り込み出てこなくなった。
「あーきー?」
「恥ずかしい……」
ベッドに潜り込んでいる明の背中を布団越しに撫でながら、何度も声を根気よく掛けていると、漸く微かだけど返事が返ってきて、そのままで明の様子を伺う。
「ごめんって、明ー」
「……、皆の前でもう言わない?」
そっと布団から顔を出した明は、俺を睨みながらそう問いかけてきた。明の頬をゆっくりと俺は撫でながら答える。
「ん、言わない」
「なら、いい」
ようやく布団から出てきて明は俺に抱き付き、そう告げてきたのが、物凄く可愛くて俺はそのまま明を抱きしめ返した。もう、本当、可愛い。
「痴話喧嘩はなんとやら」
「犬も食わないだっけ?」
「そう…、それ」
その様子をただ見ていた朋成と五十嵐の会話を聞いて、部屋には二人も居た事を思い出した。正しく言えば夫婦喧嘩な……。
「ん?」
明には難しい事だったみたいで、首を傾げていたけど。そのまま、部屋の中央にあるテーブルを四人で囲っていると、俺のスマホからメールの通知を知らせる音が耳に入り、俺はポケットからスマホを取り出し、メール内容を確認する。メールの相手は、あいつ朱美だった。朱美に言うの忘れてた、明に告白して成功している事を……。ケリ付けなきゃいけないな……。
「あ、俺ちょっと出てくる」
「……どこ行くの?」
メールを確認してスマホをポケットにしまい立ち上がりながら三人にそう告げると、明は怪訝そうに見上げながら問いかけてくる。
「えっと……」
朱美にヤキモチを妬いていたって言ってた事を思い出し、俺は明の問い掛けに言葉を詰まらせてしまった。
「また、あの子?」
「あ、まー」
いつもは鈍感なくせに、なんでこういう時は気付くんですか、明都くん。ムッとした表情を隠さずに明はそう聞いてくる。その表情で機嫌が悪くなったのは一目瞭然。戸惑いながらも俺は素直に答えた。
「いってらっしゃい」
でも返って来た明の返答は予想外なもので、俺は呆気に取られてしまった。
「え? あ、うん。すぐ戻る」
俺は明が気がかりだったけど、そのまま部屋を後にした。
-3-
「あれ……、朋成と五十嵐は?」
「……、ご飯食べに行った」
戻って来た治弥は、俺一人しか部屋に居ない事を疑問に思ったのか、部屋の中を見渡しながら問いかけてくる。ご飯に行くのを二人に誘われたけど……、もー……、気持ちがもやもやして行く気になれなかったのも正直な気持ちで。治弥を待っていたい気持ちも正直な気持ちで。
「明は?」
「治弥待ってたんだけど……、だめだった?」
それなのに、俺はなんで行かないのか? みたいな言い方で聞いて来た治弥になんか腹立って……。違うね、俺、またヤキモチ妬いてるから、もやもやも苛々もしてるんだ。
「なんか……怒ってない?」
「怒ってない」
そんな俺にすぐ気付いた治弥は、部屋中央のテーブルの前でベッドの柵を背もたれに寄りかかっていた俺の隣に来ては、俺の髪の毛を掻き分けるように何度も触りながら問いて来た。それでも、なんか素直になれなくて、俺は治弥のその手を払いながら答えてしまう。
「本当の事言って?」
それでも治弥は、俺が意地張ってるのに気付いているのか、俯いてる俺の顔を覗き込みながら、さらに問い掛けてきた。
「……やだ、なんで?」
俺は俯いたままで、目線を伏せたまま治弥の問いに答えていた。
「なんで?」
「俺の事好きって言ってくれたのに、なんであの子のトコ行くの?」
俺が正直にそう言えば、座ったままで治弥は俺の腕を引いて、治弥の両足の間に身体を引き寄せられると抱きしめられた。それを俺は抵抗することもなく、身を任せて治弥の肩に顔を埋めていた。
「俺……、正直に話すな?」
「ん……、うん」
治弥は俺の髪をゆっくりと指で通しながら頭を撫で付けて、片耳に髪を掛けると治弥の肩に顔を埋めていた俺の耳元に口を寄せて、小さく呟いていた。
「朱美は……、俺が明を好きなの知っててそれでもいいって、付き合ってから好きになってくれればいいって言われて、それに甘えて付き合ったんだよ」
「え?」
俺が頷くと治弥は話を続けたが、続いた言葉は俺が予想していた言葉とは予想外の言葉で、驚いて思わず治弥の肩に埋めていた顔を上げて、治弥の顔へと向けていた。
-4-
全部、話した。明にそれで呆れられてもいいって思って、明がいつまでも朱美の事を負い目に感じて、いつまでも嫉妬心で苦しめたくなかったから。俺の顔を驚いた表情を浮かべながら、明は顔を上げ俺と目線が絡み合った。
「えっと……、あの」
目が合うと、気恥ずかしいのか明は目線を泳がせ、しどろもどろに言葉を発する。
「気になる事全部聞いていいよ、隠さず話すから」
そんな明が可愛くて、俺は自身の頬を明の額へと摺り寄せながら言い告げた。
「……科学館で」
「科学館?」
「うん、あの子が言ってたの聞いて……、治弥とその……エッチしたって」
俺を見上げながら明は、小さい声でそう聞いて来た。科学館……、科学館ってあの時か。
「…………もしかして、明それで、その後おかしかった??」
「ん……、んー。聞きたくなかった、けど気になる」
あの時明の様子がおかしかったのは、それでという事が判ると、本当……、嬉しい事この上ない。明が本当に俺の事好きで居てくれて、気になってくれている事がこんなに嬉しいなんて……。
「これ話すと俺すっげー情けないんだけど……、いい?」
「え? わ! え?」
ただ、この事話すのって、ちょっと……、いや……、かなり情けないんだよな……。俺はそう明に問い掛けると、明の後頭部に手を添えれば、そのまま床へと明と共に横たえた。
「んっと……、聞きたい。ずっと、もやもや矢駄」
横にすれば明は俺を見上げながら言葉を繋いで問い掛けてくる。俺は明の顔の横に肘を付き、自身の身体を支えながら反対の手で愛しい明の頬をゆっくりと撫でた。
「朱美に誘われて、こういう風にしたんだけど、キスしようとしたら……、明の顔と重なった」
そう言い告げれば、そのまま明の唇に自身の唇を重ねて、触れるだけのキスをする。明の唇はやっぱり柔らかくて暖かく、自身を昂ぶらせるのは十分過ぎるものだった。
「んっ……んん?」
「そっからは、もう明の事しか考えられなくて、無理だった」
あの時、明の事ばっかで、明にこうしたいとか、明に触りたいとかそんなんばっか頭を巡って、朱美には本当申し訳ないけど、それが頭から離れなくなってしまったんだ。
「あぁ、ん……、は、るみ?」
俺は明の首筋に顔を埋め、筋を這うように舌でなぞると、明の甘い声が耳元で聞こえてきた。俺の肩に置いている明の手を握り、俺は……。
「俺……、明が相手じゃないと、反応もしない……みたい」
明のその手をこの状況だけで、反応してしまっている自身へとズボンの上から添えた。
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!!!?!?!?!?!?
嬉しいんだけど……、恥ずかしい。だって、治弥によって俺の手は、治弥のその……、あれを触らされてて。触らされてる治弥のそれは、硬くなってるのがズボンの上からでも確認できた。
「明……、ごめん、俺、我慢出来ない」
治弥は俺を見下ろしながらそう告げると、そのまま俺の頬に唇を添えた。顔中に治弥はキスをした後、そのまま俺の首筋に自身の顔を埋めて、俺の制服のネクタイを器用に外せば、ワイシャツのボタンを一つ一つ丁寧に外し始める。
「は、はる……みぃいんん!」
俺がそれに動揺していると、治弥はそのまま俺の胸元に舌を這わせる。その感覚に俺は思わず治弥の名を呼ぶ。治弥は顔を上げると、自身を支えている腕とは逆の手で俺の上唇を人差し指でゆっくりとなぞった。その時の治弥の表情は、前に怒った時の表情とはまったく違くて、すごく憂いを帯びていた。その表情を目にして俺は、そのまま黙って瞼を閉じた。
「明……、大好きだよ」
「……ん」
治弥の声が耳に届くと、唇に柔らかく暖かい感触がして、小さく短い声が漏れてしまう。治弥は俺の唇に自身の唇を重ねると、唇の間を割って治弥の舌が侵入してくるのに気付いた。治弥は俺の口内を隙間なく丁寧に舐め回し、次第に俺の舌を捉えて絡ませてくる。俺はそれに答えるため、必死になって治弥の舌に自身の舌を絡ませる。
「はぁ……んぁんっ!!」
治弥とのキスに夢中になっていると、突如、治弥は俺の右胸の突起を親指の腹で撫でてきた。それに反応してしまって、俺は重なる唇の隙間から無意識に声が漏れる。
「は……んん、はん……」
舌を絡ませあった後、歯の列を一つ一つ丁寧に舐められ、それと同時に胸の突起は治弥に弄り続けられ、そこは硬く立ち上がっていた。漸く唇を離されると、俺は目の焦点が合わなく治弥の顔を呆然と見つめてしまっていた。
「……、明……、その顔エロい」
「エロっ!? ばか!」
俺を見下ろし治弥は目を見開いて驚きの表情を浮かべると、胸を弄っていた手を離して自身の口を抑えそう言葉を漏らした。自分がどんな表情になっていたのか、判らないけど……、だって気持ち良かったんだもん……、治弥とキスするの。
「ごめん……、もう俺、我慢できない」
「……え? はる、んん!」
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あの時は、凄く自分が情けないって思った。情けないっと思った分、明がどうしようもなく好きなんだと実感した。明の全てが欲しい、手に入れたいと心底思ったのはあの時かもしれない。
「治弥……、ま、待って!」
「ごめん、待てない」
「ちーがーうーーー!!!!!」
明の静止を遮り、胸元に顔を埋めそこへ何度もキスをしていると、明は俺の頭を抑えて叫び訴えてくる。
「ん?」
「あのね……、ベッドがいい」
明の訴えを聞こうと胸元から顔を上げると、明は頬を紅潮させて恥ずかしいのか、目を伏せながらそう言葉を口にした。これは……、なんとも言えず、可愛いの一言。可愛過ぎるだろう、明都くん。そんな明に俺はうんと一つ頷き、明を抱きかかえて、俺の二段ベットの下段へと移動する。明は身を任せてくれているのか、俺の首に腕を回していた。
「……ん」
そのまま明を押し倒しながら唇を重ねると、明の静かな吐息が耳に届く。今まで抑えてきた分何度でも明にキスがしたいし、沢山触りたい。腕の中に居てくれる明を確かめたい。俺は唇を重ねたままで明の胸を再び弄り始めた。
「はぅ、……んん」
胸を触り始めると吐息交じりに声を漏らす明が、とても愛おしく、俺の行為に感じてくれている事が凄く嬉しい……。胸を弄っていた手をそのまま指の腹でなぞりながら徐々に腹の方へと移動させた。その行動で次の段階が予想出来たのか、明は微かに身構えているのを感じた。俺は唇を離して、明の顔を見つめると、明の視線も俺を見ていて、目線が絡み合った。
「治弥……」
「ん、大丈夫」
目元へ唇を添え、不安げな表情を浮かべる明にそう囁いていた。明の顔中にキスを降らせていると、明の身体の力が抜けるのを感じて、俺は明のベルトへと手を掛け、ゆっくりと外してやる。それに気付いた明は、俺へと任せてくれているのか、腰を軽く上げてくれていた。ファスナーを下ろしそのまま制服のズボンを脱がす。
明の下着の中へと手を忍ばせると、明の身体の力は一気に強まったのに気付いた。
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膝の部分まで下ろされたズボンが、なんか……、凄く恥ずかしい。治弥は俺の下着の中に右手を差し入れて、そのまま俺自身をゆっくりと撫でてきた。俺は思わず、両足に力が入り足を閉じようとしてしまうと、治弥は自身の足を俺の両足に挟めてそれを阻止してきた。覆い被さり俺を抱きしめてくる治弥の背中に腕を回して、俺はきつく治弥に抱き付いた。一旦、下着から手を抜き取ると治弥は俺のズボンと下着を脱がし、俺の下半身は外気に晒される。
「んん……」
それが恥ずかしく、俺は治弥の肩に顔を埋めて、表情が治弥に悟られないように隠した。見えてなくても治弥は気付いているのか、俺の耳たぶにゆっくりと舌を這わせる。
「明……、可愛い」
「かわ……いく、ない」
舌を這わせながら治弥は耳元でそう呟くから、意固地になって俺は答えてしまう。俺の耳をしつこく舐めながら、治弥は俺自身を優しく握り、形を確かめるように五本の指の腹で撫でる。
「ふ、ぅん……」
指で撫でられると俺自身は反応を示して、硬く反り快感を感じて、勝手に声が漏れてしまう。硬く反応した俺を治弥は握り、そのまま上下に動かし始めると、声はもう止める事が出来なかった。
「ああ、んん、は、るみ……あん」
とめどなく漏れてしまう自分の声が耳に届く度に、恥ずかしさでどうにかなってしまいそうで、治弥にこうされるのは今回が初めてじゃないけれど……、あの時とは違う。治弥の手付きが凄く優しいから……。余計にそれが快楽に導いている気がして、身体は簡単に反応してしまう。徐々に早まっていく治弥の手に翻弄されながら、背中に回している手に力を込めていた。
「やん、はぁあ、んん……!」
「明、可愛い……、もっと聞かせて、明の声」
「ばかっ……、あん、耳! 舐めちゃ、だめ……、あぁ」
動かしている手はそのまま動きを速められている中、治弥はまた俺の耳を舐めながら耳元で囁くから、背筋が震えて余計に快楽を感じてしまう。快楽で目頭に涙が溜まってきて、視界が歪み始める。
「やだ……、はる、もう、だめ……イキそう……、あぁ」
「いいよ、イって」
「まって、やぁう、ん……、はぁあん、あぁあぁああ!!」
もう本当、限界で、治弥にそう訴えたけど、俺を握る手は力を込められ、更に動きを速められてしまった。身体がビクッと反応すると、目の前に火花が走り、俺は呆気なく絶頂を迎えていた。
「はぁ、はぁ……、はぁ…、は、るみ?」
絶頂の余韻で息を整えていると、治弥は起き上がり俺の両足の膝裏を持つと足を広げられ、その間へと治弥は自身の身体を移動させた。その状態のまま、片足だけ持ち上げられ、反対の手は俺の尻孔を指でなぞった。
「ひゃあ……!」
俺だって、男同士のエッチで、なんとなくどこを使うのか大体は判っていた……、実際に治弥がそれをしようとしている事が判ると、どうしても身体が強張ってしまった。治弥は何度かそこを撫でると、人差し指をそこへとねじ込み始める。その瞬間、痛みの衝撃が俺の身体中を走った。
「~~っ!? いたっ!! 治弥、待って! 痛い!」
「え? あ、ごめん……!」
-8-
「明ーー? ごめん。大丈夫か?」
冗談抜きで痛かったんだろうな……、と思う。明都くんが俺の布団の中に潜って出てこなくなりました。本気で痛かったんだよな……、俺めちゃくちゃ頭叩かれたし。指一本でそんなに痛がられるなんて思いもしなかった。そこから徐々に慣らしていくもんだと思ったんだが……、違うのか。
「…………」
返事のない、終始無言の明の背中を、布団の上から撫でながら俺は声を掛ける。
「ごめんな? もうしないから……、布団から出てきて?」
「……違う」
「え?」
ゆっくりと撫でながら言葉を発すると、明は小さく聞き取れない声で、やっと口を開いた。聞き取れなかったから俺は思わず聞き返す。聞き返すと明は布団から顔を出し、俺の方に向き直してくれた。
「そうじゃなくて」
「そうじゃなくて?」
明が言わんとしている事が全く予想が出来なく、再び俺は聞き返してしまう。
「嫌じゃなかった……、その、治弥とスるの」
「え!? あ、明!」
これでもかというくらいの真っ赤な顔で、はっきりと明はそう言ってくれた。言ってくれた事が嬉しく、俺は布団ごと明を抱きしめたく両腕を伸ばすが、明の腕によってそれは遮られる。
「で! でもね!!」
「んん……、うん」
「痛いのはいや」
俺を睨むように鋭い目付きで、見据えながら明はそう告げる。
「うん、ごめん」
うん、本当、ごめん。痛い思いさせるつもりはこれっぽっちもなくて……。俺が素直に謝罪の言葉を口にすると、明は目を細めてやっと笑みを見せてくれた。両手を広げてくるから、俺はそのまま明に覆い被さりながら抱きしめていた。
「だから、ちゃんと勉強して」
抱きしめると明はそう言葉を繋いだ。
「あ、はい」
勉強ね……、得意ですよ、俺。誰に教わるよ……。
-9-
体育祭当日、天気陽光の中、次々と競技が進められている。
駿河学園の体育祭は、縦割りにクラスで別けられ、一年から三年までのA,Bクラスが赤組、同じように2クラスずつ。白組、青組、黄色組と別けらた。 一年A組の俺と治弥と朋成くんと昭二に加えて、咲先輩が二年B組なので、同じ赤組。一年D組の和と二年C組の牧先輩、尭江先輩が白組。平良先輩は、二年F組なので、黄色組。 色対抗で、競い合う。
「楽しそうだな……」
出番がない中、観客席で種目を見ていると、隣に居る昭二が声を掛けてくる。
「……え?」
「いや……、明都ってこういうイベントとか好きだよな」
「……ただ勉強するのが嫌いなだけ」
「あぁ……」
ちょっと……、納得しないでよ、昭二。イベントとか勉強しなくていい行事の日は、好きだけど……。でも運動は苦手だから、どっちかというと文化祭の方が好き。
「明都は何に出るんだっけ?」
「俺? 俺足遅いし、運動苦手だし、50m走だけ。昭二は?」
今は三年生が徒競走を実施していて、三年生の先輩方に知ってる人が居なく、教室も遠いで面識がない分、なんだか色んな人が居て新鮮な感じがする。
「明都……、応援合戦……、いや、なんでもない。俺は、リレーと障害物だったと思う」
「応援合戦とか知らない。昭二って運動神経いいんだね」
なんか、余計なのが聞こえてきたけど、聞かなかったことにしよう……。そういえば、昭二って体育の授業とかも、普通にこなしてたなー。運動神経いいのって羨ましい。
「花沢ほどじゃないけどな」
「あはは、治弥はいやいや登録させられてたね……って、なんか平良先輩居るし、なんか騒いでる」
「……本当だ」
治弥の席の方に目線を向けながら言葉を返すと、そこには平良先輩の姿も目に入った。平良先輩、なんだかんだ言って、治弥の事大好きだしなー、なんかまた、構いに来たんだろうな……。話してる内容は聞こえないけど、朋成くんも交えて、なにやら三人で騒いでいるのを見ながら、俺は昭二と話をしていた。騒いでる感じなの平良先輩だけっぽいけど……。
-10-
「赤組には、負けないさ!?」
突如、赤組の応援席に来て、言い放ったのは、言わずも知れた奥村平良先輩。こやつは本当、突如変な事を言いだす。
「和は白組だからあっちにいるぜ?」
俺と朋成が座る席の後ろで、騒がしく言ってくる平良先輩の相手をするのが面倒なので、とりあえずとばかりに和が居るであろう白組の応援席の方を指差し、平良先輩に告げる。
「か……、和は関係ないだろ?」
最近、平良先輩の扱い方が分かってきたかも? 何でもいいから、和を出しとけばいいのか。和の話題出せば、この人照れるわ。恋する乙男になるんだな。
「治弥!! 俺と賭けしようぜ?」
また……突拍子もないこと言い出したよ、この人は。腰に両手を当て、平良先輩は俺達を見下ろし、誇らしげにそう言い告げた。
「賭けってなんの?」
「自分の組の優勝を賭けて!!」
賭けねぇ……。あっ! いいこと思い付いたかも。俺はジャージ姿の平良先輩を、頭から足の先へと目線を走らせながら、答えると平良先輩の返答をヒントに思いがけない事が閃いた。
「俺が勝ったら、平良先輩に聞きたい事あるんですけど?」
「おぉ!! 先輩に何でも聞きなさい」
賭けに俺が同意したのが嬉しいのか、平良先輩は意気揚々と答えると、明の座る席の方に移動していった。その姿を見ながら、朋成は不思議に思ったのか問いかけてくる。
「何を聞くつもりなんだ?」
「男同士のやり方」
さぁーてと、運動会とか怠かったけど平良先輩のお陰で楽しめそうだ。賭けの為に本気出しますか。
-11-
「うわっ、かなり本気入ってるよ。治弥」
何故かそのまま赤組に居座り続けている平良先輩は、種目に出ている治弥を見て言葉を述べていた。
「奥村先輩……覚悟してたほうがいいですよ?」
「え? ……何?」
「和に言っておきます」
「え? だから、何を!?」
そんな朋成君と平良先輩の会話を横で聞きながら、俺は校庭を見ていると、大きな歓声が上がる、今だに衰えることのない、治弥の人気。 その歓声に嫉妬をしつつ、治弥を眺めた。トップでコースを曲がってくる治弥。うわぁーー!! 凄い断トツじゃん。
「わあぁ…………」
「本当に好きなんだね? 治弥の事」
「え??」
真剣になって種目に参加している治弥を見ていると、会話をしていたはずの朋成君と平良先輩が俺の方に目線を向けていた。治弥を見ていたというか……、見惚れていたって言った方が正しいかもしれない。
「二人が収まった事によって、落ち込んだ人間は多いだろうね」
平良先輩が言うもんだから、なんだか恥ずかしくなり両手で自分の耳を塞いでしまっていた。もー……、恥ずかしい。二人だけじゃなくて、よく観客席を見渡すとクラスメイト達からも視線を集めている事に気付いた。そんな俺……、見惚れてたのかな……、は、恥ずかしい……。
「確かに…当の本人は、明都君とのエッチの為にあんなやる気になってんのに」
『ええぇぇえ!?』
なんか朋成君の口からとんでもない言葉が出てきて……、思わず声に出して驚いちゃった……。でも、平良先輩も一緒になって驚いてるから、それにも驚いて平良先輩の方に目線を向けてしまう。平良先輩を見ると、顔がみるみると赤くなっていっていた。
「賭け? ……の内容ってもしかしてそれか?」
「細かいとこまで聞かれますよ」
「最近の治弥は嫌いだぁ!」
治弥本人が居ないのにも関わらず、平良先輩はそう叫びながら、自分の組の応援席の方へと走り去って行った。それは凄い速さで……、平良先輩そんなに早く走れたんだ……。
「面白そうじゃん…しょうがない。俺も頑張ってやるか?」
「咲先輩は赤組で一緒ですもんね?」
いつの間にか来ていた咲先輩は、笑みを浮かべながら、平良先輩が走り去った方に目線を向けそう言っていた。なんか……、咲先輩がすごく満面な笑顔なんだけど……、笑顔が逆に怖いって言ったら、咲先輩もっと怖いから、聞こえてないふりしよう。
-12-
俺は100メートル走を走り終えて、明達が居る観客席に戻る途中、本部テントの横にある得点表を見上げた。
今のところ優勝は、うちだな? 得点表を眺めていると、背後から物凄い勢いで突進してくる奴がいた。誰が? だって? そんなことする人物は一人だけだ。
「ぐへっ!! 平良先輩!?」
突進してきたかと思ったら平良先輩はその勢いのままで、振り向いた俺の腹に体当たりをしてきた。どっから助走を付けてきたのか判らないが、あの小さい身体なのに、衝撃がすごくて俺は思わず、その場に腰を下ろしてしまった。見上げれば、顔を耳まで真っ赤にさせた平良先輩。
「俺は、絶対!! 負けない!!」
「もう無理ですって」
赤組が382点、黄色組が302点。差は歴然。今一度得点表を見上げ、点数を確認しながら俺は答える。
「朋成に聞いたんですか?」
真っ赤になっている平良先輩がなんだかおもしろくて、ズボンに付いた砂を払いながら立ち上がると、平良先輩を見下ろし問い掛ける。
「俺も手伝うし」
俺が平良先輩に近寄ると、平良先輩は後退るも、その背中は咲先輩が捉えていた。
「さ……咲!!」
平良先輩の両肩に手を置いては、咲先輩はわたわたとしてる平良先輩を気にせずに、そのままで俺に話し掛けてくる。
「治弥君……その話してるとき、俺も混ぜてね」
「別にいいっすけど……、咲先輩って今更感があるんですが」
白昼堂々といつでもどこでも牧先輩を襲っているという噂の咲先輩には、とても男同士のヤリ方とかもう既に熟知しているのではないのだろうか……。
「俺の場合はいつも無理矢理だから、誘って貰えるような仕方を……、ね」
「俺は、負けない!! 和と牧と尭江にも手伝ってもらうからいいよ!」
俺と咲先輩とで、平良先輩を間に挟んだまま会話を交わしていると、平良先輩は己の主張を叫んだかと思えば、そのまま走り去って行った。
それにしても、牧先輩と尭江先輩と和は、白組じゃん? 手伝ってもらうって……、得点表を再び見上げると白組は369点。あぁ、赤組とはだいたい十点差。 自分の組は諦めたな平良先輩。賭けは優勝だからな、赤組が優勝しなければ賭けは、俺の負けって事になるもんな。
-13-
「お疲れ」
「ただいま」
種目を終えようやく観客席に戻って来た治弥は、すぐに俺の席へと来てくれた。俺が声を掛けると治弥は答えながら俺の頭を軽く撫で、空いている俺の隣の席に座った。
「そういえば、平良先輩が白組の応援始めたけど?」
「ん……、相当、負けたくないんだな」
そんな治弥に朋成君は、タオルと飲み物の入った水筒を手渡しながら話し掛けている。それを受け取り、水筒の飲み物を飲むと汗を拭きながら治弥はそう答えていた。
「自分とこの応援合戦いいのか……」
白組の応援をしている平良先輩を唖然としたように目線を向け、昭二は呆れたように言い告げた。
「あぁー……、自分とこ放置してんな」
「そろそろ応援合戦だ」
応援合戦の単語が出てくると、三人共俺の方に目線を集めている。嫌な事、思い出した。
「……やりたくない」
「選ばれたんだし、しょうがないよ」
「俺、結構楽しみだったんだけど」
「俺も」
慰めの言葉を掛けてくれている朋成君はいいとして、治弥と昭二は、もう……、馬鹿。知らない。二人の言葉に俺は首を勢いよく左右に首を振り、否定の意を表した。
「朋成も一緒にやれば? 似合いそう」
「……確かに」
「そこの馬鹿二人、余計な事言わない」
馬鹿二人、いい事言ってる。
「朋成君一緒にやろう……、一人よりいい」
俺は朋成君の袖を引っ張り、もう本当一人でやるよりは恥ずかしくないんじゃないかと思い、神にも頼る勢いだ。
「……え?」
「やろうよ」
「いや……」
それでも、やっぱり朋成君も嫌だよね……、なかなか、うんって言ってくれない。
「明……、もうひと押しだ」
「治弥……、明都くんを嗾けないでよ」
朋成君も一緒にやってくれないかな…………。
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結局、朋成も明には弱く、明が必死になって頼むもんだから、負けて一緒に着替えに行った。朋成はもう開き直ったのか堂々として戻って来たが、明は朋成の影に隠れている。朋成もそんなに身長が高いわけでもない、俺よりは確実に低いから、朋成の後ろに隠れていたとしても、明の姿は目に映すことが出来た。
応援合戦での恰好は、さすが駿河学園だというべきか、昔から女装が主流らしく、伝統行事にもなっているらしい。それに明は選ばれたのだが、うちのクラスが選んだ衣装は、ミニスカートのチアガールの衣装。その衣装はなんだか、なにこれ……、鼻血でそう。
「……鼻血出そう」
「お前がかよ!?」
思わず、鼻を摘まんでいたら隣にいた五十嵐が、俺の心の声を代弁したかのように言葉を発した。
「そこの変態二人組……、顔が今までにないくらい緩んでるんだけど」
「…………」
それをいつもの様に呆れた表情を浮かべながら、朋成は言ってのけたが、姿はチアガール。明は明で、まだ朋成の後ろに隠れたままで居る。まあ、明と朋成がチアガールの姿だから、応援席に居るクラスメイト含め、赤組の連中から注目されているからな……。
「それは明が可愛いから仕方がない」
「もう……、やだ、帰りたい」
やっと、朋成の後ろから出てきて、俯いたままで俺の傍に来ては、そう言葉を発した明が物凄く可愛い、恥ずかしいからか、頬はほんのり赤く染まっている。この上なく可愛い。
「これさ……、ちょっと皆に見せたくないから、朋成一人で頑張ってくれないか」
「俺、軽く道連れなのに、それはあんまりじゃないか」
当たり前のように、俺の願いは、朋成に足を蹴られ拒否られました。
「……昭二?」
しばらく黙ったままでいた五十嵐が気になったのか、明は五十嵐の方に向かい、顔を覗き込んで問い掛けていた。
「あ、ちょっと、待って。明都、そんな至近距離に来たら……、保健室行ってくる」
「おまっ、本気で鼻血出すなよ!?」
目線を合わせずに明から離れながら言葉を返すと、五十嵐は自らの首の後ろを軽く叩きながら足早に保健室に向かって行った。……あいつ、明で変な想像すんなよ……。
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「治弥!! 明ちゃん使うの卑怯!!」
「俺のせいじゃない、最初からクラスで決まってた事だし」
部活対抗リレーのため、生徒会役員が例によって平良先輩の放送により、体育祭本部テントに呼び出された俺達。集まると開口一番で平良先輩に治弥は言われていた。
「お前ら罰だ!! その格好で走れ!!」
平良先輩は余程賭けに負けてしまった事が悔しかったのか、チアガールの恰好のままでいる、俺と朋成くんに対してそう言い告げる。早急に集まれって放送するもんだから、着替えてる時間がなかったんだよね……。
「明ちゃんスカートなびかせて走るんだよ?」
「……、走りづらいですよ、絶対」
俺の姿を頭から足の先まで目線で確認すると、平良先輩はそう俺に言ってくるのに、なんだか真面目に答えてしまった。
「治弥にライバルがいっぱい出来ちゃえ!!」
「お前は、あほか」
そのまま平良先輩は俺を抱きしめたかと思うと、治弥に向かって意味の分からない悪態を付いていた。それを治弥は呆れた表情を浮かべ、俺の腕を掴み引き寄せると、平良先輩の頭を軽く叩きながら言葉を返していた。
「和……、ちょっと平良先輩抑えてて」
それを今まで黙って観察するように見ていた朋成君は、和君に目線を向けると困ったようにそう告げていた。
朋成君もさすがにこのチアガール姿で走るのは嫌なのか、言い告げると平良先輩を和君に預けて、俺に目線を送ってきた。着替えに行くのであろう事が伝わって来て、俺は朋成君と共に着替える為、教室に戻る事にした。
部活対抗と言っても、ほぼ、おふざけのリレーだから、各部活も様々な恰好や小道具を持って走る。体操着に着替えて戻ってくると、本部テントの脇には仮装行列なのではないかと、 錯覚するくらいの人だかりに囲まれていて、異様な風景だった。毎年恒例の体育祭種目らしいけど、違うとこに力入れ過ぎじゃないのかな、この学園の生徒は……。
負けたら許さないとか、平良先輩が言ってて、無理矢理に走らされていた治弥は、負けたら後で何言われるか判らないと走る前に言っていた。後から生徒会の先輩達に聞いた話によると、平良先輩はこの部活対抗リレーでもクラスで賭けをしていたらしく、負けるわけにはいかなかったらしい……。
平良先輩、賭け事するの好きだね……。
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あはは。平良先輩固まってる。体育祭の競技も、全て終わり。結果は見事に俺らの赤組が優勝。今日はほとんどのクラスがホームルームもなく、校庭で解散となる。俺はすぐさま平良先輩の元に向かった。ここで逃がすわけには行かない。まぁ、先に帰られても平良先輩の部屋まで押し掛ける気では居たけど。
「平良先輩?」
「おおおおお俺に聞いても………、分かんないよ?」
部屋まで押し掛ける必要もなく、俺は難なく平良先輩を捕獲することが出来、落ち着いて話が聞けるように生徒会室に向かった。
「咲先輩? 本当に混ざるんだ?」
「ネコの方の気持ちって聞いたことないからさ」
生徒会室に向かう途中で咲先輩に会うと、咲先輩はそのまま俺達の後をついてきた。俺に引き摺られている平良先輩は、付いてきている咲先輩を睨みながら文句の言葉を述べていた。
「咲いぃーーー……、話すこっちの身にもなれよ」
え? 明は? って? こういう話苦手なので、朋成と先に寮に帰りました。
「やっぱ………話さなきゃ駄目かなぁー?」
生徒会室に着くと、平良先輩はパイプ椅子の上に正座をして、懇願するように俺に問い掛けてくる。
「ダメです。賭けを持ち掛けてきたのは平良先輩ですからね、観念して下さい」
きっと、平良先輩に少しでも気がある奴なら、こんな女顔で眉を下げ懇願されたら、許してしまいそうだが、頬も若干紅く染まってるし、ただ残念ながら俺には通じない。
「え? 痛くないのか?」
観念したのか、俺の質問に対して顔を真っ赤にさせながら、平良先輩は答えてくれている。
「指だけなら……、痛くないよ」
「治弥君が急ぎ過ぎたんだね」
なんでだーーー? 明すっげー痛がってたぞーーー。何がいけなかったんだ、慣らすとかの問題じゃないはず……、慣らそうとした時に痛がられたぞ……。
「女と違って、使用用途が違うから、一気に指入れちゃだめだよ」
一気に……、俺一気に入れたかな……、さすがに指一本だったはず、二本とかそんな一気に入れたりしてないぞ。
「最初は痛いんじゃないの?」
「……ジェル……」
平良先輩は俯いたまま小さく言葉を返してきたが、耳に届かず俺は聞き返す。
「え?」
「ジェル使うとスルッと入ってくる」
早口でそう答えると、平良先輩はパイプ椅子から飛び降りて、生徒会室の扉に叫びながら走り出した。
「後は、勘弁して下さい!!」
なんだか、その素早い行動に呆気を取れらて、平良先輩をただ目線で追いかけていると、平良先輩がドアを開ける前に、ドアが静かに開いていた。
「和?」
ドアを開けたのは、平良先輩の恋人でもある和で、きっと朋成からでも話を聞いたのであろう、口角を上げて、目の前に居る形になってしまった平良先輩の頭をゆっくりと撫でつけていた。
「俺が詳しく教えてやろうか? 治弥?」
「ひひゃあ!」
優しく撫でつけていたかと思うと、和はその手を平良先輩の尻へと移動さて、体操着の上からそのまま何度か撫でていた。間違いなく、平良先輩をからかってるであろう和は、平良先輩の雄叫びを聞いて満足そうに笑みを浮かべていた。
「あ……後は、和に任せる!!」
そんな和を平良先輩は両手で押し退け、生徒会室から走り去って行った。この二人っていつもこんな感じなのだろうか……。
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「はぁはぁはぁはぁ」
体育祭が終わり、着替えを済ませ、治弥と朋成君の部屋で治弥の帰りを待っていると、勢いよく走って向かってくる足音と、息遣いが廊下から聞こえてきたかと思えば、部屋の玄関のドアが勢いよく開け放たれた。
「鍵閉めるの忘れてた」
朋成君……、気にするとこ違うと思うけど。開け放たれたドアの方に朋成君と共に目線を向けると、そこには体操着姿のままの平良先輩が、息を切らしながら顔を真っ赤に染め立っていた。
「明ちゃん……、覚悟してた方がいいかも」
そのまま平良先輩は部屋の中に入ってくると、徐に俺に抱き付きながらブツブツと独り言のように言葉を漏らしていた。だた言ってる内容が良く判らずに俺は首を傾げてしまう。
「和にバトンタッチして来ちゃったから」
バトンタッチ?? なんの??
「今頃……、治弥に色々伝授してるよ」
俺は、分からず朋成君に目で訴えてみた。
「エッチの? かな?」
朋成君の言葉を聞き、俺は目を見開いてしまった。確かに賭けの内容そんな話だったけど……。
「明ちゃんゴメン!! ……でも、次は痛くないはずだから!」
「なんで!? なんで平良先輩が知ってるんですか!?」
もう……、恥ずかしい……。なんで平良先輩そんな話知ってるの……。
「そんなに和ってテクニシャンなんですか?」
「俺部屋に戻ろっかなーーー」
俺と平良先輩の会話を聞き、おかしいのか朋成君は笑いながら、平良先輩に問い掛けると、平良先輩は俺に抱き付いたままでそう言っていた。
「俺……、和の部屋に泊まった方がいいのかな?」
朋成君が俺の背後にあるドアの方に目線を向け、そう口にするから、俺は思わず振り向き確認するとそこには治弥が笑いながら立っていた。
「そうしてくれると、有り難いかも?」
「は……治弥?」
治弥はそう告げるからなんだか恥ずかしくなってしまった。
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「おおおかえり、治弥」
「ただいま」
意識しまくりでおかえりを噛んでしまう明が、なんだか面白くて背後から抱きしめる。明に正面から抱き付いている平良先輩はもちろん足蹴にしてからだけど。
「……でも、今日はいい。明が緊張してるから」
抱きしめると顔がみるみる赤くなっていく明を見て、俺は朋成にそう答えた。
「平良先輩……、明から離れて下さい」
足蹴にしても明から離れない平良先輩を、無理やりにでも離そうと思い、抱きしめている明を更に自分の方に抱き寄せ、自身の両足の間に収め、明にくっついてる平良先輩はそのまま足で追い払う。
「おまっ……誰のお陰だと思ってんだよ!」
「和のお陰?」
「治弥なんか嫌いだ!!」
素直にというか、本当の事を告げると平良先輩は雄叫びのを上げるように言うと、勢いよく立ち上がり部屋の玄関に向かって行く。その平良先輩に和からの伝言を伝えべく声を掛ける。
「あ、平良先輩! 和が部屋で待ってるってさ」
「う……うるさい!」
伝えると平良先輩は一度立ち止まり、振り向くこともなく言い返してくると、そのまま部屋を出て走り去って行った。うるさいとか言いながらも、向かった方向は二年の部屋の方ではなく、もちろん和の部屋の方向。
「なんだかんだ言って、和を愛しちゃってるんだねぇ」
「治弥……、後で倍返しされても知らないよ?」
開けっ放しのままのドアを閉めに行く朋成は、笑いを堪えながらもそう忠告をしてくる。
「その時はその時」
今は気分がいいからそんな事はどうでもいい、この大人しく腕に収まってくれている、愛おしい存在がいる事がこの上なく幸せである。明を抱きしめつつ首元に唇を添える。
「はは治弥!?」
それに気付いた明は慌てて背後に居る俺の方に振り向く。振り向いた顔は頬を真っ赤に染めていた。もうこんな顔を見てしまったら、今度とか言ってる余裕はなくなるのは当たり前。可愛いじゃないか、明都くん。
「朋成? やっぱ……、今日にしてもらっていい? 明の気が変わらないうちに」
「きょ、……今日は、矢駄!」
「だってよ? 治弥?」
「わかりましたよ」
そう言われるとは思ってたけどね。俺は漸く明から身体を離して、体操着を着替えるべく立ち上がり、クローゼットへと足を向けた。
「ところで、五十嵐は?」
そういえば、五十嵐の姿が見えない。明がこっちの部屋に居る時は自分の部屋に居る事は少ない五十嵐。というより、帰りも見掛けなかったな……。
「保健室からまだ戻ってこない」
「え? 鼻血まだ止まらないのか……」
五十嵐……、あいつ、どんな想像したんだよ。明のチアガール姿で…………。
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