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第9話:愛の証明

 深く口付けをしたあと、瞼を開けると目の前には治弥の優しく微笑む顔があった。俺は、そんな治弥の肩に両腕を回す。腕を回すと治弥は、俺の頬をゆっくりと撫でてきた。 「いっぱい触りたい」 「いいよ……、いっぱい触って?」  治弥が、すごく愛おしそうに言ってくれるから、俺はそれが嬉しくて、そう笑みを向け答えた。答えると治弥は、俺に軽く触れるだけのキスをした。 「明……、愛してる」  キスをしたあと治弥は呟くように言うと、再び唇を重ねてきた。今度は深く重なる唇。治弥に唇を舐められ、自然と俺は自身の唇を微かに開かせていた。 「んん、……ん」  開かせた唇を割って、治弥の舌が自分の口の中に入ってくるのを感じる。治弥は俺の歯裏を舐めると、俺はその舌先の感覚に吐息が漏れてしまった。口の中で治弥の舌が俺の舌に絡まる。舌の生暖かい感触が、自身の胸を昂ぶらせていた。 「ん、……はるっ」  一度唇が離れて、目を開けると治弥と目が合い、治弥の名を呼ぼうとしたが、再び唇は塞がれて深く重なった。自身の舌に絡まる治弥の舌を、必死になって俺自身からも絡めてやる。動き回る治弥の舌に付いていくのだけで、俺は精一杯になっていた。 「はぁ、はぁ」  漸く離された唇からは、荒れた息しか出すことが出来なく、俺は息を整える。治弥とするキスは、気持ちよくて頭の中を朦朧とさせられる。 「可愛い……」 「可愛いくないって……、もう」  息を整えながら、唇を離した治弥を見ていると、そう呟くから恥ずかしくて否定した。治弥はそんな俺を見て笑っていた。 頬に宛てられていた治弥の手は、俺の首元へと移動していき、着ていたバスローブをはだけさせられた。それを見ていると、胸の高まりは激しさを増して、思わず両目を瞑っていた。 -1-  バスローブの袖を脱がそうと思い、首に回されている明の腕を下ろしてやると、明は目を開けて不思議そうに俺を見てきた。明の頬は赤みを帯びていた。 「ん?」 「……、くっついてたいなって」  首から下ろした事で俺に抱き付けなくなったのが、不服だったのか、明はそう言葉を漏らしていた。 「んー……、嬉しいけど、あのままだと服……、脱がせられない」 「!?」  素直に言うと、というか明は遠まわしに言っても気付いてくれないから、はっきり言った。明は俺が意図している事を理解したのか、赤くしていた頬を更に耳まで赤く染めていた。なんだかそれが、凄く可愛くて、愛しかった。 「あとでいっぱい抱きしめてあげるから」 「ん、うん」  俺は袖を明の腕を通し脱がせながら、そう言い聞かせると、首を何度も縦に振り明は答えていた。明は、元々肌が焼けにくい体質で露わになった腕は細く白かった。明の手を握り、手を上げさせ、俺はその二の腕にキスをする。 「んんん」  そこに舌を這わせると、くすぐったいのか明は身を捩った。その反応が逆に俺を昂ぶらせていった。二の腕から脇の下へと舌を這わせていく、明の全てを触りたいと思った。明の事は昔から知ってるけど、まだ、もっと知りたい。その欲はどこまでも続いていく。 「は、治弥……、そこ、汗かいたかもしれないし……、臭う……かも」  脇の下に舌を這わせていると、明は言いづらそうにそう言葉を告げた。 「そんなことない、いい匂いだよ」 「へ……! へんたい!」  俺は言いながら、明の脇の下を確認するように、匂いを嗅ぐと、明は俺を軽く睨みながらそう言ってきた。そんな事を言われても、もう可愛かったってしか感じない俺は、相当の明都マニアなのかもしれない。 -2- 「あ……、あん」  いっぱい触りたいと言った治弥は、その通りに俺の身体はまんべんなく舐め回された。今はバスローブの腰元にある紐を外されて、露わになった俺自身を、治弥は丁寧に形を確認するように舐めている。そんなところを舐められる経験なんて、もちろん俺にはなくて、その舌の感覚だけで簡単に俺自身を張り詰めていた。 「も、だめだって……、そこやだぁ」 「や……なの?」  治弥の頭に手を添えてそう訴えると、治弥は俺を見上げ問い掛けてくる。俺自身の先端に舌を這わせたままで、見上げてくるから、その光景が目に入り恥ずかしくて、俺は両手で自身の目を隠して枕に頭を埋めてしまった。 「んぁ、んん、……あぁん」  そんな俺の様子を見た治弥は、俺自身を口の中に咥えては、その中で抜き差しを始めた。きつく吸い上げられて、はち切れそうな感覚に見舞わせられる。 「あん……、んん、も、イキそ」  我慢は限界で治弥にそう訴えると、口の中での出し入れの速度は速められる。きつく吸い上げられて、口の中では舌が俺の先端で尿道口を割らせられた。 「んやっ! ……あん、んんあぁあ!」  治弥から与えられる感覚に耐える事が出来ずに、俺は治弥の口の中に果ててしまっていた。 「はぁ……、はぁ……、あ」  俺が果てると、最後まで絞り出されるように、治弥は俺自身を吸い上げてくる。絶頂を迎えたばかりの俺には、その感覚は刺激が強すぎて、治弥の頭を両手で抑えていた。 「もう……、無理……」 「ん」  俺がそう言うと、治弥は漸く俺から離して顔を上げたが、顔を上げた治弥は口元を拭っていた。それを見て、俺は治弥の口の中に果ててしまった事を思い出す。 「……、飲んだ?」 「んー? うん」 「もー! 汚いって!」  確認すると、治弥は平然として答えてきた。俺は恥ずかしくて、治弥に文句を投げかける事しか出来なくてそう言うと、治弥はそんな俺を抱きしめてきた。 「俺は、明の全部が欲しいよ」 「んん……、うん」  抱きしめてくると治弥はそう耳元で呟いてくるから、治弥の背中に腕を回して俺は頷いていた。 「明、大丈夫?」 「うん、大丈夫」 「ちょっと、待ってて」 「ん? うん」  治弥はそう言うと、ベッドから降りて自分の荷物が置いてある、ホテルの部屋の机へと向かった。   -3-  これがないと、また明に痛い思いさせてしまう。それを思い出した俺は、入れてある荷物へと向かった。 鞄の中からそれを取り出して、明の元に戻る。 「これ……なに?」 「痛くしないようにする、道具?」  俺が手にしているチューブタイプの潤滑油を見て、明は不思議そうに問い掛けてくる。一応と思って、鞄に入れておいた自分を褒めたい。チャンスが来た時にまた今度、とかになるのだけは避けたかったから。俺は明の問い掛けに答えながら、明の膝に手を掛ける。 「冷たいかもしれないから、我慢してね」 「ん、うん」  明に声を掛けてから、明の膝を開かせる。明の隣に身体を横倒らせては、左手にチューブから潤滑油を絡ませる。俺の方に身体を向かせてくる明の頭を、右手でゆっくりと撫でつける。撫でつけると明は安心したように、目元を緩めて笑みを浮かべた。頭を撫でながら、明の尻孔へと潤滑油を塗り付けた。 「んぁ……」  塗り付けると冷たいのか、明は小さく声を漏らす。俺の首に腕を回してくる明が、凄く愛しかった。明は身体を横向きにさせてくるから、足が閉じないようにと自身の足を挟めて支える。尻孔の周辺に塗り付けてから、ゆっくりと人差し指を押し込んだ。潤滑油の効果は思っていたよりも絶大で、俺の指をすんなりと明は受け入れてくれていた。 「んん、……ん」  侵入してくる異物感に明は耐えているのか、俺の首に抱き付いて、肩に顔を埋めながら小さく声を漏らしている。その声は俺の耳元の間近で、俺自身はさらに興奮を感じていた。指をゆっくりと奥まで侵入させると、明の中は熱く火照っていた。 「明?」 「ん……んん、はぁう」 「大丈夫か?」 「ん、ん」  俺が問い掛けると、明は顔を上げないまま、頭を上下に振り答えた。明の様子を確認しながら、中をゆっくりと掻き乱し解いていく。 「あ……!」  明の中のある一点を指が掠めると、明は大きく声を漏らしていた。これか……。それはきっと、前立腺。運動会の後に、和から教わった性感帯。俺はその一点を、執拗に指で弄り始めた。 「んぁん……、ひぁ……! やだ、そこ! な、に……んあ!」  明は頭を左右に振りながら、俺の肩に顔を押し付けてくる。何度も一点を攻めていると、明の上げる声は激しさを増していた。懇願しているうちに、中に入れている指の本数を増やす。指の本数を増やすたびに、俺に抱き付く明の腕の力が込められていた。 「ん、あん……、あ、ん、も、やぁあ!」  指の本数が三本に達した時、俺は明の中を出し入れ始めると、明の声は甲高いものへと変わっていった。 -4- 「はる……み、もうだめ、……あぁ!」  俺は治弥の指の動きに翻弄させられながら、再び身体の感覚は上昇していき、射精感に堪えられなくなっていた。でも……、俺ばっか、やだ。 「いいよ……、イって」 「ちがっ! あぁ! んん、だめっ!」  俺をイかせようと治弥は、指の抜き差しのスピードを速めていく。自身の奥に治弥の指を感じると、更に身体の高鳴りは激しくなっていく。俺は今の状況が恥ずかしいから、治弥の肩に顔を埋めていたけど、どうしても伝えたくて顔を上げた。身体全体が熱をもって、熱く感じてるから、きっと顔も赤いけど。治弥の顔をジッと見た。もう、我慢できない感覚のせいで、視界は揺れて滲んでいた。 「はる、み。んん、あぁ……ん、待って」 「ん?」  漸く俺の訴えに気付いた治弥と、目線が絡み合うと、恥ずかしくて俺はその目線を伏せてしまった。治弥の指の動きは、中に入ったままだけど、止めてくれて、俺はようやく話す余裕が出来た。 「んん、治弥も……、今度は一緒が、いい」 「……もう一回、イッた方が楽じゃないかな?」 「やだ……、はぁ、ん、一緒が、いいの」  俺がそう言うと、治弥は目を見開いたが、直ぐに嬉しそうに目を細めて笑った。 「ん……、痛かったら、言って」 「う、ん」  治弥はそう言うと、俺から指を引き抜いて、身体を起こし俺の上に覆いかぶさるように移動させた。俺の両足を抱えて持ち上げてくると、俺のそこにすでに反応を示している治弥自身を宛がってきた。 「うっ……んん」  俺は侵入してくる異物感に耐える為、息を飲んで身構えた。 「明……」 「んん?」 「ゆっくり息吐いて……」  言われるままに俺はゆっくりと息を吸い込み、そのままゆっくりと息を深く吐いた。息を吐くと自然と身体の力は抜けて、治弥の顔を見上げた。目が合うと、治弥は笑って身体を倒し俺の身体に近寄らせてくる。その近寄ってくるのと同時に、治弥自身は俺の中にゆっくりと侵入してきていた。痛みはなかったけど、指とは違う圧迫感に俺は目を瞑っていた。 「んん……んう」 -5-  俺は、明の尻孔に自身を宛がった。深呼吸をした明を確認してから、ゆっくりと自身を明の中へと押し込む。明の内壁を擦りながら、ゆっくりとゆっくりと腰を進めていった。 「んん……、はぁ……ん」  明が息を吐くタイミングで自身を押し込んでいく、俺はこれでもかってくらいの時間を掛けて明の中へと押し込めていった。明の様子を見ながら、少しでも痛がる素振りを見たら、腰を止めるつもりでいた。少し腰を進め、明の中に自身が馴染むのを待ち、馴染んでくればまたゆっくりと腰を進める。そのたびに、明は小さく声を漏らしていた。 「んぁ、んん」  明の中は暖かく、俺をきつく締め付ける。どくどくっと明の鼓動が耳に届いているみたいに、脈を打っているのが伝わって来た。その感覚に何度も気が遠退きそうになるのを、俺は、ぐっと耐えていた。ようやく、俺の全てを明の中に収めると、俺はそのまま覆い被さるように明を抱きしめた。 「んん、……はぁ、は、るみ?」  明を抱きしめると、明は俺の名を呼び掛ける。俺は明を抱き締めながら、その頭をゆっくりと撫でた。 「全部……、入ったよ」 「え? ん、うん……、んん、治弥の……あっつい」  明の言葉を耳にすると、自分自身が脈を打つのを感じた。……なんて事、言うんですか。明都くん。危なくこのままでイくとこだったじゃないですか。無意識って怖いですね。虚ろ気味な明の瞼に、俺は唇を落とした。 「明……」 「ん?」 「動いても平気? 俺、結構限界なんだけど」 「え!? あ、……う、ん。……うん」  明の返事を聞いて、俺は腰を引き、明の中で自身の抜き差しを始めた。明の内壁と自身が擦り合う感覚は、簡単に快楽を感じる事が出来た。 「あぁ、んん……あ」  ホテルの一室に明の甘い声と、肉質の擦り合う卑猥な音が響いていて、更に俺を興奮させた。 -6- 「あ、……んん、ひっ、ああ」  治弥が腰を動かし始めると、自身の中を治弥が何度も行き交う。声は勝手に漏れて、もう恥ずかしいとか考えてる余裕がないくらいに、俺は治弥から与えられる感覚に酔いしれた。快楽に涙で滲んだ視界に映る、俺の上で揺れる治弥の顔は、俺と同じで余裕がなく歪んでいた。 「あ、……ぁあ、んん、は、る……みっ」  必死になって治弥の名を呼ぶと、治弥と目線が絡み合った。 「あい、してるよ……、あき」 「んん、お、れも……あい、してる」  目線が絡み合うと、治弥は目を細め微笑みそう告げられる、こんな時だと恥ずかしげもなく言えるのが、不思議だった。繋がり合った開放感と、愛されて満たされている自分がいた。治弥は一度、腰を自身が抜ける寸前まで引くと、一気俺を貫いた。 「ひぃ、ひゃあん……!」  その貫いた治弥の先端は、先ほど指で弄られた時、変な感覚がした箇所を突き刺し、俺は悲鳴にも似た声を漏らしてしまう。俺のその反応に気付いたのか、治弥は腰を引いては何度も俺の奥を突き刺してきた。 「いや……! だめ、それ、あぁん……ひぃあ」 「きもち? 明、凄いっ、締め付けてるけど」 「だめ……、やっあ……あぁ」  そう言いながら治弥は俺の反応を確かめるように、何度もそこを狙って突き刺してくる。俺はその耐えられない快楽に、首を何度も左右に振り、いやいやと駄々をこねる子供のようになってしまった。快楽に、涙が溢れてくる。 「ああ、ん、ん、ひあ」 -7-  悲鳴にも似た声を上げる明が、とてつもなく可愛くて、反応を示したそこを何度も刺激させれば、明は首を左右に振り出した。それでも執拗に突き付けていると、明は俺の背中に腕を回して、俺の胸に顔を埋め始めた。俺にしがみ付き、背中に回った明の手は、力が込められている。 「は、るみ……! はぁん、んん、ひぁ……、イっちゃい……そ」  胸に顔を埋めている明は、吐息交じりにそう限界を訴えてくる。明の内壁はそれを伝えようと、何度も俺を締め付ける。その感覚に俺も限界を迎えそうだった。俺は、明に打ち付けている腰の動きを速め、無我夢中で快楽を求めた。 「あ、や……、はや……いぃ、はう……んん、あぁ!」  明は身体を震わせ、開いている両足に力がこもるも、立ち上がっている明の中心部からは一向に射精が見られない。明よりも早くイくとかカッコ悪く、射精感を何度も腰の動きをコントロールしながら受け流していた。感じて締め付けてくる明は、声を上げるばかりで射精しない。 「あ、……明? きもち……よくない?」 「ぁあ……、んん、ひぃあ……あぁん」  抜き差しを繰り返しながらも俺は問い掛けると、明は首を左右に降り、否定の意を表す。身体を何度も震わせ、気持ちよさそうに俺を締め付けてくるも、言葉を発する余裕もないみたいなのに……。 「あぁ、あん。あ、……のね……、ひぃう」  やっとの思いで、明は言葉を発する。俺は胸から顔を離した明の様子を伺う。頬は紅潮し、目は虚ろ。快楽でなのか、うっすらと瞳を潤わせている。 「ずっと……、ぁあ……、イッてる……感覚、なん……あぁあ!」  ずっと……、イってる感覚? 俺は明に喋る余裕を与える為、動かす腰のスピードを緩めた。緩めると、明は深く深呼吸をして、俺に目線を向ける。 「はぁ……、あぁん……、なん、かいもイってる……はぁはあ、けど」  明の言葉で納得したと同時に、運動会の後の和の言葉を思い出した。 「尻だけでイく事、ところてんって言うんだけど、どんなに相手が上手くても初めての奴には無理だから。一緒にちゃんと前も触ってやれよ。快感で苦しいだけだから、そうさせたいならそれもありだけど」 -8-    快楽の海は何度も押し寄せてくるのに、イけない。仕舞いには、波打つ快楽は常に感じてる状態のままで、気持ちいいけど、その気持ちよさが苦しい。治弥は腰の動きを緩めてくれたから、俺はなんとか、治弥に訴える事が出来た。ゆっくりとした動きでも、敏感になってしまっている俺の身体には、簡単に快楽の波は押し寄せる。 「あぁ……、んん、はぁ、はぁ」  声は勝手に漏れて、息をするのもままならない。俺は治弥にしがみつく事でしか、その快楽を耐えるすべがなかった。そんな俺を治弥は、ゆっくりと腰を揺らしながら、頬を撫でてきた。 「明……、ごめん、今、イかせてあげるから」  快楽で零れた涙を治弥は舌で舐めて拭い、そう俺に言い聞かせると、再び抜き差しのスピードが速まった。 「ひぃあ、んん、……だめ、やぁあ!」  治弥の腰は俺を何度も打ち付けてきて、それは俺を再び快楽の海へと誘う。 「いや……! だめ! それだめ! あぁああっ」  俺の頬を撫でていた治弥の手は、激しさで揺れ、快楽で硬く立ち上がっている俺自身を捉えられた。中を抜き差しされるリズムに合され、それは吐き出せないでいた射精を促すように、絞り出される。治弥自身から突き立てられ与えられてる感覚と、はち切れそうな俺自身への愛撫の手によって、俺はその快楽から逃れたくて、夢中で首を勢いよく左右に振っていた。 「ひゃぁあ……、あぅ、んん、はぁ、あぁあん」  一層高い快楽の波が俺を押し寄せると、俺は視界に火花が散らばった。視界に火花が散らばると、治弥自身は俺の奥で脈を打つ、擦り合う肉質の感触が奥深く貫かれた。 「いやぁ! も、だめっ! いやいやぁあ! ひぃあん、ひゃあぁあ!」  俺自身を治弥の指の動きが絡まり、きつく握り込まれて、それと同時に俺の身体は跳ね上がり、ようやくと待っていた射精感が訪れ、俺は治弥の手の中へと白濁の液を飛ばしていた。 「はぁ、はぁ、んん……、まって! はる、もうだめっ!」 「ごめっ、明! 俺も……、イきそ」  俺の中心部から手を離した治弥は、そのまま俺をきつく抱きしめ、今までよりも一層腰を激しく打ち付けられた。   -9-  明をイかせる事に専念していたら、自身も限界地点に到達していたが、なんとか明を先にイかせる事に成功した。イかせる事が出来た事に安心していると、俺自身は脈を打ち、射精した明の中は何度もきつく締め付けてくるから、俺は快楽を求め激しく腰を打ち付けていた。 「あぁあ、はる…み、いいよ! イって!」  明は俺の限界に気付いたのか、しがみ付き俺が与えている快感に耐えてくれる。 「あ……いや、はる…、だめ! その、まま!」  射精感が到達しようとした時、腰を引き抜こうとしたが、明は首を振りいやいやと素振りで訴えられた。もう……、なにそれ、反則なんだけど……。俺は明に甘えて、そのまま明の最奥で果てた。 「はぁはぁ、……はぁ」 「んん……、は、るみ」  俺は荒れた息を整えながら、ゆっくりと腰を揺らして、最後まで明の中へと精液を流し込めば、そのまま倒れ込むように明を抱き締めた。 「やば、い……、俺このまま死んでもいいや」 「ば……! ばか! だめ!」 「うそ……、それぐらい幸せだって事」 「んん」  俺が言った事が恥ずかしいのか、明は身を捩り唸っていた。そんな明は可愛いけど……、今の状態で捩られたら……、まだ、入ったままだから明都くん。 「明……、締め付けないで、またシたくなる」 「し……! 締め付けてない! ばか!」 -10-  結局、あの後、反応を示してしまった治弥によって、再度快楽の渦へと誘われました。 「んー……」 「ん?」  今は、再びシャワーを浴びて、身体を綺麗にし、ベッドの中で余韻に浸り、俺らは二人抱き合っていた。 「……恥ずかしい」  行為をしている時は、快楽に夢中で、恥ずかしいと思ってる余裕はなかったけど、今治弥に擦り寄っていると恥ずかしさは甦ってくる。 「可愛かった」 「んん……、可愛くない」 「可愛いよ、凄く」  治弥の腕に乗せている俺の頭を撫でながら、治弥は甘い声で囁く。 「もー……」 「幸せすぎる」  嬉しさと恥ずかしさとで、治弥の肩に自身の頭を押し付けていると、治弥の声が耳に届く。見上げると、本当、幸せそうに笑ってくれていた。 「ん、俺も幸せ。あのさ……」 「ん?」  俺は治弥の頬を人差し指で、二、三度突き言い告げると、治弥は俺に目線を向けてきた。 「恥ずかしくて、あんまり言えないし、また、やだって言っちゃう時あるかもしれないけど……、ちゃんと治弥の事好きだから……、もう自信なくさないでね」  ちゃんと、伝えれる時は伝えようと思った。ちゃんと治弥に俺の気持ちが伝わるように、安心してもらえるように。 「明……、うん、ありがとう」  治弥は頷き答えると、俺の口にリップ音を発てて、触れるだけの口付けをしてきた。 -11-  ベッドの布団の中で、何度も触れるだけのキスをし続けた。何度も触れるだけのキスは、キスをする度に幸せを感じられた。 「あ、そうだ」  飽きずに何度もキスをしていたが、ふと俺は思い出し、布団から出て、自身の鞄へと向かった。そんな俺に目線を向けながら、明は上半身を起こして、上部を背もたれにしてベットに座り直していた。 「ん?」 「これ……、これも誕生日プレゼント」  プレゼント用にラッピングされた小さい箱。それを明の手に乗せ渡し、俺は明と同じようにベットの上部を背凭れにして、隣へと腰を降ろした。シャワーを浴び終えてから、俺達はとりあえずと下着だけは身に纏ったが、上半身はそのままだった。俺の視界は、俺が付けたキスマークが散らばる明の肌。嬉しさは込み上げ、渡したプレゼントを開けている明を構うようにキスマークを指で突いていた。 「もっ! ん? ……これ……、指輪?」  それがくすぐったいのか身を捩りながら、明は俺の指を払いつつも、プレゼントの中身を確認する。 「シルバーリング、さっきの文具店のファンシーコーナーに売っててさ」  文具店で見た時、どうしても明に挙げたくなった。なにも考えずにそれを手にして、俺は買っていた。 「……え?」 「え? いらなかった?」  俺が説明すると、明は目を瞬いて不思議そうに俺を見てくる。俺は思わず問い返してしまっていた。 「んーん、嬉しい……、いつの間に買ってたのかなって思って」  明は俺の問い掛けに、緩く首を左右に振り、隣に居る俺の肩に頭を寄り掛けて、そう呟くように言ってきた。 「600円とかっていう、すっげー安物だけど……、いつか、自分で稼いだら、ちゃんとした指輪あげたい」  俺は明の肩に手を回して抱き寄せ、その手とは逆の手で明が手に持つ、指輪が入った開けられたプレゼント箱も一緒に、包み込むように明の手を握った。 「ん、……お揃いで持ちたい」 「お揃い? ペアリング?」 「うん、いや?」  驚いた。明がそんな事を言ってくれるなんて、思ってもいなかったから。 「全然いやじゃない……、むしろ、これも実は、二つ買ったから、ある意味ペアリング」  そう、実はこれ俺のサイズのも買っていたんだよね。 -12-  治弥は、もう一つとして持っていた指輪を俺に見せてくる。俺が貰った指輪と同一のデザインのもので、シルバーリングの端に青い縁取りがされていて、装飾はないシンプルなデザインのものだった。 「……なんで、最初に言わなかったの」  俺は肩に寄せていた頭を上げて、軽く治弥を睨んでしまった。同じこと考えてたのは嬉しかったんだけど、それを最初に俺に言ってくれなかったのは、きっと理由は一つ。 「お揃いとか恥ずかしいって言われて、嫌がられたらショックだから、内緒で持ってようかなって思ったから?」  やっぱり……、俺が嫌がると思って、自信がなくてそうしたんだ。 「もー!」 「いた! あ、明! クッションでも何気に痛いって!」  俺は隣に居る治弥の顔目掛けて、枕元にあったクッションを投げ付けた。もう、そんなふうに思って欲しくないから、素直になれる時は素直になろうって思ってたのに……! 「ん……、これ、付けて」 「うん……」  俺の気持ちが伝わってるのか、クッションを払い除けて覗かせた治弥の表情は、申し訳なさそうに目線を揺らしていた。そんな治弥に、俺は左手と指輪を差し出し言い告げる。治弥は頷くと、俺の手を取り、薬指にその指輪を嵌めてくれた。自分の指に嵌められた指輪は、凄く気持ちをくすぐって、でも凄く暖かい気持ちになった。 「へへ……、治弥も」 「ん」  俺は治弥の指輪を受け取り、同じように治弥の指に嵌めてあげる。治弥の指に嵌めた指輪を指でなぞっていると、その指は絡まるように包み込まれ繋がれた。指輪に向けていた目線を上げると、治弥と目線が合い、手を繋がれたままでキスをされた。 「んん」  静かに重なった唇が離れると、治弥は額同士を触れさせ、間近で見つめられる。 「明……、もう一回してもいい?」 「ん、……うん」  俺が小さく頷くと、俺の身体は治弥に寄って、再びベットへと沈められた。 -13-  暗くなるまで、明を愛してた。飽きるほどの愛撫を何度も繰り返したが、飽きるなんて事はなく、ずっとこうしてたいって思いはいつまでも続いた。夜更けを迎える頃、俺達は漸く眠りについた。  チェックアウトの時間も近付き、寝起きの悪い明をなんとか起こして、俺らは部屋を出た。フロントに向かおうとエントランスを歩いていると、見知った相手の姿が目に入った。 「あれ? 南兄?」 「待ち伏せとか、趣味悪いな南兄」  それは、俺の兄貴で花沢 南飛。チェックアウトの時間を判っていたのか、その時間を狙って俺達が出てくるのを待っていた模様だった。 「ホテルの部屋を未成年じゃ取れないからって、助け求めてきたの、どこの誰だっけ?」 「兄貴……、それ言わない約束だったろ!」  そう……、明を自販機に待たせて、少々時間が掛かったのは、朋成達に連絡をしていたのも嘘ではないが、南兄に連絡を取っていたんだ。南兄は難なくネットからホテルの部屋を取ってくれて、今回ホテルに泊まる事が可能だったのだ。今の時代のネットワークは凄いと思った。 「治がつれなくするから悪い、会計も済ませてやったぞ」  ひらひらと南兄の手には、クレジットカードが揺れていた。大人って卑怯……。 「え? 南兄が払ってくれたの?」  そんな俺らの様子を見ていた明は、目を瞬かせて驚きの表情を浮かべている。 「俺からの、明ちゃんへの誕生日プレゼントだよ」  ニヤリと口角を上げては、得意げな表情を浮かべ言い切る、馬鹿兄貴。 「ええ!? あ、ありがとう」 「明ちゃんの為ならなんのその!」  俺の家族は、明溺愛者が多過ぎる。 「叶羽さんに迎えに来てもらおうっかなー……」 「ま!? 待て! 待って、治! この事は叶羽には内緒なんだから!」  俺は自分のスマホを取り出して、電話を掛けるフリをすると、南兄は慌てた様子でそれを止めていた。いつも明を構って、ヤキモチ妬いた叶羽さんに怒られている事を俺は知っている。叶羽さんとは、南兄の高校時代からの恋人で、今は絶賛同棲中である。  この慌てぶりは、どれだけ叶羽さんの尻に敷かれているのだ……。 -14- 「治ーー、頼むから、叶羽には言うなよ」 「……本当、叶羽さんには弱いな」  フロントに鍵を返して、俺達はホテルを出ようとエントランスを歩く。南兄はそんな俺達に付いて来ながらも、治弥に上手く言いくるめられてる。 「治弥……、南兄にちゃんとお礼しないと……」  俺はそんな治弥の袖を掴んで、そう伝えると、治弥は笑って俺の頭を撫でてきた。 「明ちゃんは本当、いい子に育ったのに、この我が弟は……」  俺の隣に来ると南兄は、いつもの事だからか、あまり気にした様子もなく、そう言葉を走らせた。 「ところで南兄、今日仕事休みなのか? 叶羽さんはいいの?」 「証券会社は、基本日曜日休みだしな……、叶羽は美容師だから日曜日に休みになる方がない、ほとんど合わないんだよ」 「良くそんなんで、続いてるな」  三人で歩きながら、ホテルの玄関を通る。歩きつつも俺の頭上で会話は飛び交う。 「最初の頃は予定合わなくて、喧嘩ばっかだったけど、今はお互い落ち着いたからなんとかなってる……、ってなんで俺、弟に心配されてんだ……」  項垂れるように言葉を発すると、南兄はハッとして更に言葉を続けていた。そんな南兄の事はまったく気にならないのか、治弥は更に言い続けていた。 「休みなら車でどっか連れてってよ、明、行きたいとこない?」 「え? 悪いよ!」  治弥の突然の言い出しに、俺は申し訳なく首を左右に振り、両手でも振って言葉を発する。 「叶羽が仕事終わるまでは、まあ、暇だし、いいよ、明ちゃんどっか行きたいとこある?」  でも、南兄は俺にそう言ってくる。目線を向けると、南兄と目線が合う。南兄の目線は優しく暖かい眼差しだった。 「えっと……、海に行きたい」 -15-  明の願いを叶える為に、俺達はホテルの駐車場に停めてあった、南兄の車に乗り込んだ。南兄の運転する車の、後部座席に俺と明は座っていた。 「南兄、腹減ったから、昼飯食おうぜ」  俺は後ろから運転している南兄に、そう提案とばかりに告げた。 「この辺に、なんかあったかな……」 「南兄! ハンバーガーがいい!」  時刻は昼過ぎを告げていて、朝食を摂っていなかった明も、腹を空かせていたのか明は、そう南兄に告げている。摂っていないというか、明は朝が弱く、ましてや昨日は遅くまで起きていた事もあり、起きれなかったから食べてなかったに過ぎないけど。 「よし、ハンバーガーにしよう」 「決断はやっ」  明が言うか否かのスピードで、南兄はハンバーガーショップを探し始めていた。 「だって、ほら、あそこにドライブスルーが出来るとこあるし」 「別に言い訳しなくっても、明に弱いの今に始まった事じゃないし」  そう、駿河学園に入学する前、中学時代のそのまた前。物心ついてる頃から、この明溺愛ぶりは続いている。もしかしたら弟の俺が産まれる事よりも、明が産まれた事の方を喜んだんじゃないかとか怪しむくらいに。 「俺、兄弟居ないから、南兄ととの兄居てくれて嬉しいよ」 「俺も弟居ないから、明ちゃんが居て嬉しいんだよ」 「それだったら、との兄と俺は誰の弟なんだ……」  一人っ子な明だけど、こんなにも末っ子みたいに育ったのは、きっと南兄ととの兄のせいなのかもしれない。 -16-  ハンバーガーを買って、海に行ってそれを見ながら食べて。水着なんて用意してないし、まだ海開きもされてないから、他に訪れている人もいなく。南兄が待っててくれていたから、俺と治弥はズボンをまくり、足だけ海に入って遊んだ。時刻も五時を迎える頃、俺達は寮に戻って来ていた。 「おおー、懐かしいな、駿河学園の寮、俺の時より綺麗になってる」 「そりゃー、南兄ん時よりだいぶ経ったからな」  もちろん、南兄が送ってくれたんだけどね。寮の門の前に、車を横付けして停車し、南兄も車から降りると、懐かしそうな眼差しで寮を見上げていた。 「南兄って駿河学園の卒業生?」 「え? 明知らなかったのか?」 「うん、初めて知った」  南兄が、駿河学園の卒業生だったなんて知らなかった。南兄高校の時から、実家には住んでなかったのは覚えてるし、たまに帰ってくる南兄に嬉しくてくっついて歩いてたかも俺。 「まあ、全寮制だから、そんなに制服姿見てないだろうしな」 「俺ら、小学生だったしな」  そう、小学生だった俺は、高校生の隣のお兄ちゃんに、凄い甘えていた記憶がある。荷物を持ち寮の前で話していると、南兄は自分の車のボンネットに寄り掛かりながら、昔を懐かしみ話していた。 「あの頃の明ちゃんは、物凄く可愛かった」 「え?」  ボンネットに寄り掛かっていた南兄は何故かそう言いながら、俺の方に近づいてきた。 「女の子みたいだった」 「ええ?」  近寄ると俺の顎を掴み、上を向かせられた。なにしてるの……、南兄。 「……早く叶羽さんのお迎えに行け」  そんな南兄の背中を、後ろから足蹴にしている治弥が居た。 -17-    明溺愛ぶりを久々に見ては、あほらしくて俺はさっさと南兄を追い返した。遠ざかっていく車を、見えなくなるまで見送っていた。 「南兄、今度いつ会えるかな……」  遠ざかっていく南兄の車に、明はずっと手を振りながら、寂しそうにそう呟いていた。 「んー……、どうだろう、明が呼べばすぐ飛んできそうだけど」 「ん」  間違いなく仕事中だろうと、飛んでくるだろう。ホテルの部屋を頼んだ時も、俺がいくら言っても面倒って言われたのに、明が泊まりたがってるからと言えば、電話をしている間にホテルの部屋を取ってくれた。あの迅速さには、助かったけど呆れたものだ。 「寂しい?」 「……んーん、大丈夫」  南兄の車が見えなくなって、寮の部屋に向かい歩き出しながら、とぼとぼと歩く明に問い掛けると、明は首を振り答えた。 「よしよし」  俺はそんな明の手を繋ぎ、頭を撫でるわけでもないけど、口に出して言っていた。 「また、子供扱いするし……、あ、指輪……」  繋いだ手に目線を向けると、明は思い出したように言葉を漏らした。 「ん?」 「学校行くときは外さなきゃだめだよね……」 「あー……、これ」 「?」  手を繋いだままで、俺は逆の手で自身の鞄を探り、店のロゴが入ったビニール袋を取り出した。それを、そのまま明に差し出す。 -18- 「これなに?」  俺は治弥からそれを受け取ると、ビニール袋の上から中身が何か見えないかと、太陽に透かしてかざした。 「指輪売ってるとこで一緒に売っててさ、指輪を保管するための袋みたい」 「うん」  手を繋いでるから片手では、ビニール袋を開ける事が出来ずにいると、治弥はそう説明してくれた。それでも中身が気になって、俺は太陽に透かすのを止めずにいた。だって、どんなやつか気になるんだもん。 「これに入れとけば、持ち歩けると思って」 「治弥のもあるの?」  俺は寮の玄関で立ち止まり、気になってそう問い掛けた。 「あるよ」 「ずっと、持ってる?」 「そのつもり」  ずっと、一緒に指輪を持ってる。ペアのシルバーリング。心が繋がっているようで、凄く嬉しくて俺は、治弥の握ってる手を強く握りしめていた。 「……」 「え? いや?」 「違う……、嬉しい、ありがとう」  俺は嬉しくて、誰かが通るかもしれない寮の玄関口で、何も考えずに治弥の頬にキスをしていた。物心がついてから、ずっと一緒で、誕生日もいつも祝ってもらってて。今年も祝ってくれたけど、いつもと同じなのに、今年は違った誕生日だった。  産まれてから、一番嬉しかった誕生日だった。この日を俺は絶対に忘れない、特別な日になった。  この後、二人で指輪を付けて、寮の部屋に帰って来た俺達は、昭二と朋成くんに散々からかわれたけど。やっぱり……、バレてるのって恥ずかしい……。 -19-

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