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第14話:そんな君が愛しくて
ドキドキする。緊張……。治弥はただ。
「泊まりにおいで」
と言っただけ、そう、それだけじゃん? 意識しまくってる自分が、ちょっと、恥ずかしくなる。俺は治弥に誘われて、母親に隣で寝ると伝えてから、治弥の家に来た。治弥は自分の部屋に着替えに行った。俺は治弥の家のリビングで待ち、ソファに腰を下ろし、周りに視線を流し見渡していた。
「……明?」
「うわぁっ!? は、治弥!?」
突如、部屋から戻って来た治弥に、声を掛けられて振り向こうとすると、治弥は俺の背後のソファの背もたれからジャンプをして、俺の背中と背もたれの間に体を滑り込ませ、俺を後ろから抱きしめてきた。
「明、可愛い」
「か、可愛くないって!?」
立ち上がろうとすると、治弥はお腹辺りをきつく抱きしめ離れない。
「明、顔赤いよ?」
「うっ……るさい!?」
大人しく治弥の腕の中に収まっていると、治弥は俺の顔を覗き込み笑顔を作ってそう言ってきた。
「明って、なんでそんなに可愛いんだ?」
「し、しらないし! 可愛くない!」
冗談なのか、本気なのか解らない表情で治弥は、後ろから俺の顔を覗き込みながら問い掛けてくるから、俺は顔を逸らして答えてしまっていた。顔を逸らしても治弥は、俺の頭をゆっくりと撫でてくる。
「お風呂入る?」
「う、うん」
治弥は俺から腕を離し、お風呂に入る様に促してきたから、俺は立ち上がり素直に頷いた。お風呂場に向かおうと足を踏み出すと、治弥に腕を引かれて振り向いた。
「な、なに?」
「一緒入る?」
「入んない!」
俺は治弥の体を思いっきり押してから、風呂場へと駆け足で急いだ。もう!? 俺をからかって遊んでるんだ!!
-1-
どうしよう? 今までにないくらい、最上級に明都くんが可愛いです! 真っ赤な顔をして、緊張で顔を強張らせていて…………。 花火大会の時も、尭江先輩に嫉妬してる明が可愛くて、もっと一緒に居たくて、泊まるように誘ったんだけど。
やべぇ……、俺、止められるかな……。
俺は、ソファに座ったまま、右手で口を押さえては、明が向かったリビングの入り口に目を向けた。 風呂……、ついていったら、怒るかな? 怒るよなぁ……。 気を紛らす為、リモコンを手にして、テレビを点けた。テレビを呆然として見る。テレビ画面には、夏休みの特集番組がやっている。お笑い系のバラエティー番組。目に焼き付けているだけで、頭にはまったく入って来ない。
つうか、頭に入んないから! 無理です! 気は紛れません!?
俺はそのままソファに身を沈めた。届かない天井に手を延ばす。去年の今頃は、明とこんな関係になるとは、思いもしていなかった。好きな気持ちを、今も隠し続けていると思っていた。去年の夏休みも一緒に過ごしていたけど、志望校のレベルを上げた明は、勉強一色だったな……。
「もー、治弥……、邪魔しないでよ」
「え? 邪魔してないけど」
傍に居て、漫画本読んでただけで、邪魔扱いされたっけ。
「近くで読んでたら、俺も読みたくなるじゃん」
「……明の意志の問題だろ……、それ」
「受験終わるまで、治弥も漫画本読んじゃだめ!」
「なんで……」
「俺も読みたくなるから」
受験勉強のストレスを思いっきり当たられてたなー。そんな明もなにもかも愛おしくて、しょうがなかった去年の夏。今は、明に好きだと言われて、明を手に入れた。絶対に離さない。
俺は、天井に向けていた手をきつく握りしめた。握りしめ、その拳に目線を向けていると、風呂場の方から、リビングまで響く音が聞こえてきた。
「え? ……あ、明?」
-2-
お風呂とかって……、緊張するんだけど? 誕生日の時も先にシャワー浴びてからだったから、それと同じ。体を洗い、頭を洗い……、その後、湯船に入っては、お湯を口まで浸けて、ぶくぶくぶく……。
「ぷっはぁ!?」
バスタブに頭を乗せて、俺は風呂場の天井を見上げた。
っていうか、治弥はその気がないかもしれないのに、俺だけ緊張してんのって、馬鹿みたいじゃない? 直接、言われた訳じゃないし……。……でも、二人きりという状況は、なんか……、`緊張´の二文字。……俺、期待してるのかも?
お風呂だってさ……、なんかこれからしますって感じの準備というか……、いや、寝る前にお風呂に入るのと同じ事を、今しているだけで。治弥もそのつもりで入っておいでって言ったんだし……。
「あー……、もー」
いつまでも、お風呂に浸かっていても、緊張してるのは取れないし、俺は意を決してバスタブから立ち上がった。湯船から出ようと足を上げたその時、軽い立ちくらみを起こし、頭を抱えた。
あれ……、湯舟に浸かり過ぎた……?
もう一度、屈んでやり過ごしていると 立ちくらみは、直ぐに治まった。大丈夫だと思い湯舟を出て、風呂場のドアに手をかけた時、再び目の前が暗くなり立ちくらみが起こる。
うわっ……。
それと同時に頭を鈍器で殴られたような衝撃を受けて、今度はやり過ごすことが出来なくて、風呂場のドアへとぶつかりながら、倒れ掛かってしまう。ドアにぶつかった時の音が頭の中に響いては、そのまま何も聞こえなくなってしまった。
そんな中、治弥の声が頭の中へと届いてきた。体が宙を浮いてるような感覚がして……、なんかフワフワしてて、気持ちよかった。
「明!?」
-3-
「明!?」
お風呂場の扉を開けると、明が倒れてて、正直焦った。脱衣所に用意していたタオルで、明の身体を覆ってやり、水分を拭ってから俺は明を抱き抱える。どうしたんだろう? 逆上せただけならいいけど。そのまま俺の部屋に連れていき、自身のベットへと横にした。青ざめた顔色の明を見下ろして、様子を伺う。額に手で触れれば、ほのかに熱を帯びていた。
水……飲ませた方がいいかな?
俺は階段を駆け降り、ダイニングから水を汲んで、冷たく濡らしたタオルと共に手にし、また急いで部屋に戻った。明の額にタオルを乗せてやると、明の瞼が微かに動いた。
「……んっ」
「目、覚めた?」
虚ろぎみに、俺を視界に捉えた明は、黙って首を縦に振った。
「水飲むか?」
そう聞くと、また黙って頷いたから、水を口に含ませ、口移しで飲ませてやる。明はそのまま俺の首に腕を回してきていた。
「治、弥?」
「どうした?」
俺を呼び 俺の目をじっと見てから、虚ろ気味な瞼を閉じて明は、唇をそっと触れさせてきた。突然の事に思考回路がついていかなく、瞼を閉じてる明の目を見てると、唇を離して明は目を開けた。
「…………」
口をぱくぱくと開閉させては、何かを言いたそうに口籠る明。俺は明の口に自身の耳を寄せては、それを聞き取ろうとした。
「ん?」
「……しよ?」
一度息を飲むと、明は消え入りそうな声で、顔を真っ赤にさせながら、確かに俺にそう言った。毎度の事だけど、明都くん、それは反則ですよ?
-4-
「んん…っ」
頭が朦朧とする中、俺は治弥に言ってしまった。頭が朦朧としてたから、なんか自然に言葉が出てきていたんだ。そんな俺を見て治弥は、そのままベッドに横になる俺に覆いかぶさり、唇を重ねてきた。唇が重なる前に、治弥の優しく微笑む顔が視界に入って、俺は目を瞑り、治弥のキスを受け入れた。
「ん、ん……、ん」
治弥は俺の頬に手を添えながら、指は耳たぶを弄られる。それに反応してしまって、口を軽く開くと、治弥はそのまま俺の口の中へと舌を忍ばせる。治弥の生暖かい舌が、俺の口の中を這いまわっていた。俺は治弥の背中に腕を回して、少しでも治弥の体温を感じたかった。
「……ん」
耳の中に指を入れられ、耳の筋を確かめるように治弥の指は動く。深く重なっている口付けは、歯並びにそって舌が這う。治弥の舌が、俺の舌を捉えた時、互いで絡ませ合っていた。俺の口先からは、だらしなく唾液が垂れていたけど、そんな事に気にしている余裕がないくらい、俺は治弥とのキスに夢中になっていた。
「んん……、はぁ、は、るみ?」
「好きだよ」
「ん、俺も好き」
ようやく唇が離されると、治弥は俺に覆いかぶさったままで、目線を絡ませてくるから、見上げて問い掛けると、そう告げられた。それが嬉しくて、俺は自然と答えていた。
「明……、べーってして?」
「べー?」
「いいから、ほら」
べーって、舌を出せって事みたいで、治弥は自身の舌を見せながら俺に言い聞かせる。不思議に思いながらも俺は、治弥を見上げながら舌を軽く出した。
「んん!?」
舌を出すと、治弥はその出した舌に、自身の舌を絡ませてきた。そのまま俺の舌に吸い付いてくる。俺は驚き目を見開いてしまった。
「ん、ん、ん」
俺の舌は、治弥の口の中で出し入れされていく。時折、吸い付かれては、自分の意識はそこに注がれていた。俺の舌を丁寧に舐める、治弥の表情は憂いを帯びていた。
「はぁー…、ん」
「かわいい」
「もー……」
口を離されたかと思ったら、治弥はそう言ってくるから、恥ずかしくて目線を逸らしてしまった。
-5-
今まで明に掛けてあげていた、俺のベッドのタオルケットは、今は足元に無造作に置いてある。お風呂上りだった明の髪はまだ微かに水分を含んでいて、冷たく感じた。その髪をゆっくりと撫でながら、俺は明の首元へと顔を埋めた。
「んん……」
明はそんな俺の頭に手を添えていて、髪の毛を指に絡ませてきた。首元に舌を這わせると、明は擽ったいのか唸り声を上げながら、身を捩らせている。そんな明の首元に吸い付き、歯を立てる。
「んっ……、いっ!?」
「ごめん、痛い?」
「ん……、何したの? 今」
歯を立て、吸い付き、明の白い肌には簡単に内出血の痕が残る。問いかけてきた明に、顔を上げ、俺はその内出血の痕に指の腹を這わせた。
「キスマーク付けた」
「え!?」
俺が答えると、明は驚いた表情を見せては、その俺が指の腹でなぞっている痕を自身の手で摩り確認しているようだった。
「ここ……、見えちゃうよ?」
「……ダメ?」
「んん……」
明は眉を下げて、困惑の表情を俺に向けては言い告げてくる。俺は明の頬にキスをしながら、問い掛けると、明はゆっくりと首を左右に振り答えていた。
「寮に戻る頃には……、消える?」
「たぶん……、消える前にまた付けたいけど」
「……見えないとこにして」
俺が明の問いにそう答えると、明は恥ずかしそうに目線を逸らして、頬を紅潮させるが、甘えるように俺の首に両腕を再度回してはそう言ってきた。それだけで、俺は十分幸せです。
-6-
「あぁ、んん、……んん」
見えないとこにって言った俺に対して、治弥は俺の身体中に吸い付いてくる。時折、歯を立てられて、俺の胸元や腹には治弥の痕でいっぱいになっていた。身体中にキスをしながら、俺に覆いかぶさる治弥の手は、俺自身を捉えている。治弥のキスのお陰で、既に反応を示してしまっているそれは、硬く反り返っていた。
「んん、あぁ……、はるみ」
「ん?」
治弥の名を呼び手を伸ばせば、治弥は俺に口付けてくれた。俺の意図に、気付いてくれた治弥の行動が凄く嬉しかった。
「……きもち?」
「やだ……、んん」
「きもちいいって言って?」
「やっ、ん、あぁ」
俺自身を掌全体を使って握り締め、そのまま手の中で激しく擦られる。治弥の視線は間近にあって、問い掛けられるが、そんな事恥ずかしくて、口になんて出来なくて、俺は首を左右に振りながら答えるが、与えられている感覚には身体は正直に反応している。声は気持ち良さに、簡単に漏れてしまう。
「明の……、先走り出てきて、気持ちよさそうだよ? 言って?」
「やぁ! ばか、あぁ、……ああ、ば、かっ」
自分の状態がどんななのかって、判り切ってくらいに反応してるんだから、そんなの一々口にしないでよ! ばか、治弥!
「いじ……わるっ」
そんな事言われたら、恥ずかしくなるの判ってるくせに……、俺は治弥に目線を送り、言葉を言い告げた。
「ごめん、明が可愛過ぎて……」
俺の言葉を聞いた治弥は、申し訳なさそうにそう言ってくるのを見たら、なんだか愛しくなっちゃったんだ。俺自身を擦っている手を止めてしまっている治弥の手に、俺は自身の手を添えて、治弥を見上げた。
「んん……、きもち……、いいから、もっとして?」
「……!?」
恥ずかしいけど、俺は素直に言ったら、治弥は目を見開いてしまった。しばらく、俺の顔に目線を送ってくると、徐に身体を起こしたかと思ったら、治弥は自身の服を脱ぎ始めた。下着まですべてを脱ぎ去った治弥は、そのまま再び俺に覆いかぶさりきつく抱きしめてきた。
「……?」
「明……、今日、俺、余裕ないから……、本当、無理だったら、殴ってでもいいから止めてな」
「え? ぁあん、んん!」
治弥は一気にそう言い告げると、再び俺自身への愛撫を再開させてきた。言葉通りに先程までの、ゆっくりとした愛撫ではなく、激しくきつく擦られる俺自身。一気に快楽の渦へと、俺の身体は連れ去られていった。
-7-
ちょっと、明にちょっとでいいから、気持ちいいって言って欲しくて迫ったけど……、あそこまで衝撃的だと思わなかった。あの言葉だけで、触れてもいない俺自身は、はち切れそうになったのは、言うまでもない。
「んん……、あ、あ」
今日はゆっくり前戯をして、明をいっぱい触れようと思ってたのに、ゆっくりと弄っていたせいか、急に刺激を強くさせてやると、明は簡単に果てていた。明の尻孔へとジェルを丹念に塗り込み、明を抱き締めながら、その中へと指を入れ込む。指には、熱い明の体温が伝わって来た。
「ん、……はあ、んん」
指の異物感に、明はゆっくりと息を吐いていた。触れ合う肌質からは、激しくなっている明の鼓動が伝わってくる。中指を奥まで入れ込み、明の前立腺を探る。指を動かす度に、明は声を漏らして、反応を示してくれる。
「はる……、もっと……奥」
「待って……、ここ?」
「ああぁあ!」
明は恥ずかしいのか顔を真っ赤にさせながらも、目線は虚ろ気味にそう伝えてくる。中指を更に奥へと押し込むと、そのしこりを見付ける。それを指の腹で押してやると、明は声を出して反応した。
「いや……、あぁ、んん、あ、あ」
何度もその個所を指で突き刺しながら、穴を馴染ませるために指の抜き差しを始めれば、指の動きに合わせて、明は声を漏らしていた。俺の肩を、掴んでいる明の手には、力が込められているのを感じる。
「やぁ、んん、あぁ、あ、あ」
明は身体を震わせて、開かれている両足には力が込められ、刺激に耐えていた。甘く響く明の声に俺自身は、硬く自身を尊重してきていた。明の片足にそれは触れていて、それだけでも俺は快楽を味わっていた。中を指で抜き差ししている度に、揺れる明の足が俺自身を擦らせてくる。
「あぁ、んん、はるっ」
「あ、明!?」
自身の足に擦れている俺自身に気付いた明は、回していた腕を離してはそれに手を伸ばして、指の腹で撫でてきた。その行動に驚いて明に目線を向けると、微かに頬を緩め明は言葉を続ける。
「はる……み、も、んん……、あぁ、きもち、くなって……」
「あき……、ん、入れても……、いい?」
「ん、ぁん……、入れて、治弥の……入れて」
明に触れられたそれは、もう我慢の限界だった。一度、明の中に指の本数を増やして入れてやり、穴を押し広げて解してやってから、俺は指を引き抜いた。
「ん、……はやく」
指を引き抜いて見下ろすと、明は切なそうにそう言葉を漏らした。
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「あぁ、あん、んん」
「明……、ゆっくり息吐いて……」
「ん、はぁー」
俺の両足を抱えて治弥は自身を、俺に宛がった。ゆっくりと入ってくる感覚が、身体を貫いていく。息を飲むと治弥は俺の頬に手を伸ばして、そう告げられる。息を深く吸って、ゆっくりと吐くと、吐いてるタイミングで治弥自身は俺の中へと侵入してくる。肉厚が自身の中に感じると、一度止まっていた快楽の渦が蘇ってきた。
「んん、あ、んん」
ゆっくりとゆっくりと、押し込まれていく治弥自身は、擦れる内壁を辿って奥へと進んでいく。治弥の腰と俺の腰が合わさり重なった時、治弥自身の全てを俺は飲みこんでいた。奥まで押し込まれると、治弥はゆっくりと息を吐いているのが目線に映った。俺は、そんな治弥に両腕を伸ばしていた。
「明……、大好きだよ」
「ん、俺も大好き、キスして」
両腕を伸ばした俺を治弥は身体を倒して、抱きしめてくれる。治弥の背中に腕を回し、そう告げると、治弥は深く唇を重ねてきた。
「んん、ん」
深く重なり舌を絡ませられながらも、治弥の腰はゆっくりと動き始める。治弥の動きによって、俺の身体はベットの軋む音と同時に揺れていた。押し込まれた治弥のそれは、俺の奥を貫き、快楽を身体全体で感じていた。内壁を擦り合い、治弥自身が硬く張り詰めているのを感じる事が出来る。
「あ、ん、ああ」
唇を離して治弥は、俺の首筋へと舌を這わせる。俺の中を何度も行き交いながらも、丁寧に俺の首筋を舐めてきていた。
「はる……、あ、んん」
「き、つい?」
俺が名を呼ぶと、治弥は顔を上げて問い掛けてきた。俺は首を振り答えてから、そんな治弥の頬に手を添えて、滴る治弥の汗を拭っていた。
「あ、き……、余裕、ある?」
「あ、んん、ぁあ、待って……、ない!」
治弥の汗を拭うと、治弥はそう問い掛けてから、腰の動きを激しくさせてきた。快感を味わされて俺は、首を左右に振りながら答えてしまっていた。
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今日の明は、何かが違うなと思ってたけど、激しく腰を打ち付けると、明は首を左右に振り続け、声を止め処なく漏らし始める。俺の頬を撫でていた明の手は、今は首に回されて、きつくしがみ付いてきていた。
「あぁ、んん、……ああん、も、だめぇ」
明の奥を何度も貫いては、前立腺を狙って突き刺すと、明は足を小刻みに揺らしていた。俺は身を起こして、明の両足を抱き抱え直しては、さらに奥に自身を押し込んでいく。
「はる、んん、だめ……イッちゃいそっ」
明の訴えを聞いては、俺は明の右足を降ろしてやり、逆の足は俺の肩の上に固定する。さらに密着した腰元は、明の中へと自身を奥深くへ導いた。明は快楽に耐えながらも、枕に頭を埋めて、表情は快感に歪んでいた。
「俺も、イキそう……」
「ん、ん、ぁあ、あ、あ!」
腰を激しく打ち付けながらも、明の射精を促す為に、明自身を手で包み込む。腰の動きのリズムに合わせながら、明自身を擦り上げると、明は頭を左右に振りながら、目を潤わせていた。
「ひぃあん、んん、あぁ、あ……、ああん!」
明自身が脈打つのを感じ、射精が近い事が伝わってくる。何度も抜き差しを繰り返し、奥へと押し込む。俺の肩で揺れている明の足は、力が込められて快楽を味わっていることが伝わってくる。その明の反応に、自身も明の中で脈打つのを感じる。明の中が締め付けられるのを感じると、明自身は張り詰めたように硬く反り返った。
「も、だめぇえ……! あぁあ、ああぁ!!」
明は高く声を上げると、明自身から白濁の液を飛ばしていた。果てた明の中は俺に絡みつき締め付けられて、俺も敢え無く明の中へと精液を流し込んでいた。
「はぁはぁ、……はる、み」
ゆっくりと腰を揺らして、最後まで流し込むと、明は俺を見上げて両手を伸ばしてくる。この明の行動は抱きしめて欲しい時の行動で、俺は明の足を肩から降ろしてやってから、そのまま身体を倒して明を抱き締めた。
「大丈夫?」
「ん……」
俺が問い掛けると明は頷き、短く答えてきた。密着する身体からは、射精感の疲労からか、激しく鳴る鼓動が伝わってくる。明は俺の頬に手を当てて、ゆっくりと撫でると、目を伏せたままで言い告げてきた。
「……治っ弥? したい時は我慢っ……しないでっ?」
真っ赤な顔で憂い帯びた表情で、目を潤ませて言われてしまっては、まだ抜いていない俺自身は反応を示してしまう。
「明都くん……、それ反則」
「え? あぁ、なんで……、今は、だめ!」
ごめんね、明都くん。もう、ちょっと、本気で止められない。俺は果てたはずの自身への快楽を味わう為、再び腰を揺らしていた。
-10-
「んー、んー、んー」
「ん?」
治弥が満足するまで、俺は治弥の行為を受け入れた後、再びお風呂で身体を綺麗にしてもらい、射精の脱力感から、ベットへと潜り込んでいた。前もそうだけど、行為が終わった後の我に返った今、恥ずかしさは込み上げてくる。ましてや、今日はなんかいっぱい言っちゃった気がする……。
パジャマを互いに身に纏って、ベットに横になると、俺はその隣に横になっている治弥に後ろから抱きしめられていた。治弥の腕を枕にして頭を治弥の胸へと寄りかからせていると、治弥の鼓動が静かに耳に届いてくる。
「んーん」
「どうした?」
唸っていると、後ろから不思議そうに声を掛けてくる治弥。
「なんでもない!」
「???」
なんでもない。ただ、恥ずかしいだけ……。俺がそう答えると、治弥は不思議そうにするも、俺の後頭部へと唇を寄せて来ていた。枕にしている腕とは逆の手は、俺の身体に回されて、ゆっくりと落ち着かせるように俺の頬を撫でて来ていた。
「…………」
そんな治弥の腕を、俺は両手で握り締めていた。なんか、治弥から伝わる体温は、凄く俺を落ち着かせてくれている。
「ん?」
両手で握ると、治弥は後ろから俺の顔を覗き込み、不思議そうに問い掛けてくる。
「……好き」
「俺も……、大好きだよ」
目線を後ろに向けて、治弥の目線と絡み合い、俺はそう告げると、治弥は言い返してきてから、唇を寄せてきた。
「へへ」
触れるだけのキスをされて、俺は嬉しくて無意識に笑みを零していた。
俺が好きと言えば、治弥は必ず大好きと返してくれる。大好きって言うと、愛してるって返してくれる。大きな愛情で包んでくれる、そんな治弥が凄く俺は大好きだ。
-11-
キスをすると、嬉しそうに笑ってくれた明が凄く愛おしかった。
「身体平気?」
「……腰痛い」
問い掛けると、明は恥ずかしそうに目線を逸らしてから、小さくそう呟いて来た。
「ははっ」
俺は明の頬を撫でたままで、なんだかそんな明が可愛くて、笑ってしまった。頬を撫でていると、逸らした目線を俺に戻してくる明。布団の中で、伝わってくる明の体温に、愛おしさは込み上げてくる。
「喉も渇いた」
行為中にあんだけ声を上げれば、風呂上りだし、喉も乾くのだろう。俺に目線を戻した明はそう告げてきた。
「下行ける?」
「……無理っぽい」
「なら、飲み物取りに行ってくるな?」
「あ!」
俺は明の頭を撫でてから、腕枕をしている腕を外そうと促すが、明は仰向けになったかと思ったら、そのままで声を上げる。
「ん?」
声を上げた明に、なにかと思い問い掛けると、明は身体を反転させて、俺の胸に顔を埋めてきた。腕は、背に回されてきつく抱き付いてきている。
「……やっぱり、いい」
「だって、飲み物」
「いいの……、もうちょっとこうしてて」
明はそう言うと、俺の腕を掴んで自分へと促してくる。されるままに明を抱き締めて、起き上がろうとしていた身体を俺は、再びベットへと埋めていた。
そういう事か……。離れたくなかったって事か……。
「……あ。可愛いね、明都くん」
「うるさい」
俺は胸に顔を埋めている明の耳に、髪を掛けてやり、そこに囁いてやると、明は胸に顔を埋めたままで、そう返してきた。
-12-
そのまま、ベッドで寝転んで居ると、傍らにあるベットテーブルから音が鳴り響いて来た。そこには二人のスマホが置いてあり、交互に充電をしていたのだ。
「ん?」
「なんか鳴ってる」
俺達はその方向に目線を向けて、その音の正体を確認する。今は俺のスマホを充電していて、充電のコードが繋がれている。音を発しているのは、俺のではなく、充電のコードが繋がれていない治弥のスマホのほうだった。
「……俺のか」
「んーー」
治弥は俺から身体を離して、身を伸ばしスマホを手にする。そんな治弥に目線を向けていると、頭を撫でられた。自分の頭の下から抜かれた治弥の腕を見ていると、なんだか寂しさを感じてしまった。
「ん? あ、朋成だ」
「朋成くん?」
治弥はその場で上半身を起こし、寝転んだままの俺を見つつも、スマホを確認していた。腕を抜かれた俺の頭に、寂しさを拭う為に、俺は自身の腕をその代わりにして、治弥の方に身体を向け見上げる。
「もしもし?」
「…………」
そんな俺の頭を撫でながらも、治弥は着信に出ては話を始めていた。話を始めている治弥から、俺は目線を離す事が出来ないで居た。俺は、スマホを持つ治弥の腕に手を伸ばしていた。
なんか、面白くない。もっとくっついて居たかったのに……。
「え? なに?」
俺の様子を見つつも、それでも尚、通話を続けている治弥。腕を掴んでも、治弥は目線を絡ませてくるだけ。俺は腕から手を離しては、座っている治弥の太ももをゆっくりと撫で始めた。身体が離れると、治弥の体温と鼓動を感じる事が出来なくて、俺は体温だけでも感じたく、治弥の太ももをずっと撫でていた。
傍に治弥の存在を感じていたい……。
-13-
朋成と通話をしていると、明は突如俺の腕を掴んだと思えば、今度は太ももをずっと撫でてきている。そんな明を見下ろしながら、スマホを持つ手とは逆の手で明の頭を撫でてやった。
「………」
頭を撫でていると、明は身を起こして、俺の顔の間近で目線を送ってくる。明は俺の膝に手を当てて、身を乗り出してくる。明に目線を送ると、明はそのまま話している俺に唇を重ねてきた。
「んっ……、いや、ごめん、なんでもない」
「…………」
急にキスをしてきたかと思えば、明は無言のままで俺の唇を人差し指でなぞってくる。その表情はどこか切なそうだった。
「朋成、ごめん、ちょっと待って……、明? どうした?」
「なんでもないよ?」
俺は不思議に思い、朋成に断りを入れてから、明に問い掛けるが、明は目元を緩めて、笑みを見せるとなんでもないと言い告げる。それでも、そのまま明は俺との額同士を触れさせて来て、見つめて来ていた。見つめてきたかと思えば、頬をゆっくりと撫でられる。
「? ごめん、それでなんだって?」
「なに? どうしたの?」
撫でて来てから、今度は頬へとキスをされる。明に目線を向けると、明はなんでもないと、笑って首を左右に振るばかり。
「いや……、分かんない」
聞いても答えてくれなく、明はそのまま俺に横から抱き付いてきていた。腕を回して、俺の胸に顔を埋める明。そんな明の頭を何度も撫でながら、俺の耳には朋成の声が届いていた。明はそのまま、俺の胸に顔を押し付けて来ていた。
-14-
「ちょっと、待って。明、なにして……。ごめん、朋成、後でかけなっ」
もっとくっついてたくて、俺は治弥の膝の上に乗り、そのまま背中に腕を回して、抱き付いている。そんな俺に驚いたのか、治弥は朋成くんとの通話を切ろうとしていた。
「切っちゃだめ!」
それを俺は顔を上げて、止める。用事あるんだし、ちゃんと聞かなきゃだめだよ……。とは思いつつも、俺は治弥に抱き付きたい。
「ええええ」
「……朋成くんと話してていいよ」
話しているだけだから、朋成くんにはこの状況は目には見えないし……、見えてないなら、恥ずかしくはないという事に気が付いた俺は、思う存分に治弥に甘える事にした。
「話しててって……、どうゆうこと」
「いいの!」
戸惑っている治弥の声が耳に届くが、俺はそれ以上言わせない様に、遮り声を上げる。治弥の膝の上に向かい合わせで座り、首元へと顔を埋めて、治弥の吐息を近くで感じていると、凄く居心地が良かった。抱き付きながら、俺は治弥の首筋に唇を添えていた。
「なー、朋成……、明都くんが可愛い事し始めたんだけど、どうしたらいいと思う?」
その様子をただ黙って受け入れていた治弥は、通話をしている朋成くんに対して、そんな事を真顔で言い出していた。
「可愛くない」
電話越しからは、朋成くんの笑い声が耳に届いた。朋成くんに聞くのもおかしいけど、朋成くんの笑い声で、なんだか今の状況がバレてしまっているような気がしなくもない。
-15-
「なんかもー……、遊ばれてんなー、俺」
「どういう状況なの?」
あの後、俺は明によって押し倒されて、今は明が俺の上に居て、そのまま抱き付いてきている。時折、俺の首筋に唇を寄せてくる明。
「んー、明が俺の上に居て抱き付いてる?」
耳に届く朋成の問い掛けに素直に答えていると、明は顔を上げて軽く睨んできていた。言うなということだろう……。睨んでからまた直ぐに、俺の首元へと顔を埋める。
「治弥にとっては、うれしい状況だね」
「うれしい状況だけど、電話は切ってだめって言われてるから、俺なにも出来ないんだぞ?」
朋成は笑いを含んだ声で、そう告げてきている。電話越しでも朋成が可笑しそうに笑っているのが、伝わってきていた。
嬉しい状況……、なのは嬉しい状況。擦り寄ってきている明は、何処か俺に甘えているようにも感じる。電話さえしてなければ、そのまま明を押し倒してしまうだろう。
「このまま、事に運ばれたらすぐ切るけどね」
ですよね。俺は擦り寄ってきている明の頭をゆっくりと撫でつつ、朋成の言葉を耳で受け止めていた。
「我慢大会かな……、これ」
首筋に何度もキスをしてきている明は、とても愛しくて、耳に触れれば、微かに身悶えて反応を示してくる。俺は思わずといった調子で、天井を見上げて言葉を漏らしてしまっていた。
「明都くんに伝えて、俺にヤキモチ妬いても意味ないよって」
暫く、電話の向こうでクスクスと笑いたいのを堪えていた朋成は、そう俺に告げてきた。俺は、枕に埋めていた頭を上げて、明の様子を伺ってしまった。
「え? ヤキモチだったのか、これ」
「ち、ちがう!!」
俺がそう言葉を言い告げると、明は擦り寄せていた身を起こして、頬を紅潮させては、全否定の意を延べた。その態度を、見れば一目瞭然。電話に出てしまった俺に、ヤキモチを妬いていたわけだ。可愛いことしますね、明都くん。
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「朋成にヤキモチ妬かなくても」
「妬いてないーー」
朋成くんとの電話が終わり、俺達は再びベッドに潜り込んでは、抱き締め合っていた。治弥の腕を、枕にして寄り添う。鼓動を感じれる距離感にまた戻れた事で、俺は安堵を感じて、治弥の胸に顔を押し寄せていた。
「可愛い、可愛い」
態度とは裏腹な俺の言動を聞いては、治弥は俺を更に抱き寄せて、言いながら額にキスをしてきている。
「うるさっ!」
額にキスをされて、俺はそれが心地いいんだけど、ヤキモチ妬いてた事が恥ずかしくて、治弥の顔を見上げて睨みつけてしまっていた。それでも治弥は何も言わずに、俺の頭を撫でてきた。
「で朋成くんなんだったの? 用事」
「ああー、寮に明日、彼女遊びに来るみたいで、内緒で部屋泊めてもいいかって」
俺の問い掛けに治弥は、ゆっくりと頭を撫でつつ、先ほどの朋成くんの電話の話の内容を伝えてくる。
「朋成くんの彼女! 見たい!」
合宿の時にも言っていた、朋成くんの彼女。あとで話を聞いたら、中学の時の同級生だという事は教えてもらえた。
「文化祭に来るって言ってたし、会えるだろ」
「ん」
治弥はそう俺に言い聞かせると、髪の毛を耳へと掛けて来ていた。耳に掛けると、タオルケットを肩まで掛けられ、ぽんぽんとリズムよく、背中を叩いてきていた。治弥の腕から伝わってくる、鼓動が耳に届いて、治弥に抱きしめられて、その体温は凄く心地が良かった。サイドテーブルに置いてある目覚まし時計に目を向けると、時刻は夜中の一時を過ぎていた。
「そろそろ寝る?」
その時刻を見ると、急に眠気に襲われて、俺は大きく欠伸をしてしまった。そんな俺を見てか、治弥に問い掛けられる。
「ん……、眠くなってきた」
「電気消すな?」
治弥の問い掛けにそう答えると、治弥は身を起こして、サイドテーブルに置いてある卓上のライトへと手を伸ばしている。ライトが消されると、視界は暗く遮られた。
「うん」
返事を返すと、治弥は再びベットへと横になり、俺をきつく抱きしめてきて、背中に回された手は、ゆっくりと俺の背中を摩ってくれていた。
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「おやすみ」
「明、おやすみ」
明の隣に戻ると、明は俺に擦り寄って来てから、胸元へと顔を埋めて、小さく言葉を漏らしてきた。それに返事を返して、俺は明が安心するように背中をゆっくりと撫でていた。
「…………」
暗闇の中、耳に届く明の息遣いが、傍に居る事を知らせてくれる。腕に乗っている明の頭から伝わる重みが、この上なく愛しい存在を知らせてくれている。
「んん……」
抱き寄せると、明は微かに唸り、そのまま俺へと擦り寄って来た。俺の胸元に顔を埋めている明が苦しいんじゃないかと思い、若干離すと、明の表情が視界に映る。眠気は限界だったのか、明は既に眠りに入っていて、その寝顔へと俺はこめかみへとキスをした。
腕の中で安心しきって眠りについてくれている事、こんな些細な事でも幸せに感じてしまう。
「大好きだよ、明」
俺は明の耳には届かないのが判っているのに、どうしても言わずにはいられなかった。
「ん」
俺の声が届いていないはずなのに、明は寝ながらも笑みを浮かべていた。届いていないのではなく、寝に入っていても、聞こえているのかもしれない。
「ん……、治弥……好き」
明はそう、うわ言の様に言うと、頭を俺の腕に摺り寄せて来ていた。笑みを浮かべて、再び寝息を立てていた。
最近の明は、極度の照れ屋なのは相変わらずだけど、感情をぶつけてくれるようになった。好きとかも言ってくれるようになって、愛しさは更に増し始めている。本当……、どこまで、明への愛しさは膨らんで溢れ続けるのだろう。明が愛しくて、仕方がない。好きで大好きで、愛してる。唯一無二の存在。そんな愛しい君という存在を抱き締めて、俺は眠りについた。
駿河学園に入学しての、初めての夏休みの想い出は、こうして一緒に過ごした、大切な時間へとなっていた。
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