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「ありがとうございます」
「痛みはどうだ?」
「ドクターシラギのお陰でもう随分と」
「そうか、でも無理はするなよ。明日も代わりの者を手配することだって……」
そう言い掛けると、リヒャルトは可笑しそうに小さく肩を揺らした。
「あなたは、甘い」
そう言いながら、腕を引っ張られる。
「お、おい」
「私はただの連絡係。あなたのほうが私は心配です」
体勢を崩したエルネストの首に腕を回し、強引に唇を塞がれた。
「……っ」
「ほら、私はあなたにキスだってできる」
唇を触れ合わせたまま囁いて、端正な目元が蠱惑的な弧を描いた。
「っ」
心臓を鷲掴みにされたかのような、強い脈動を感じた。堪えきれなくなりそうで、エルネストは思わず視線を逸らす。
「エルネスト?」
「煽るのはやめてくれ」
隣に座って頭を抱えると、自分でも情けない声を出していた。
「昂ってますね」
「!」
リヒャルトの手が、エルネストの股間に伸びている。
「おい、何する」
「明日の襲撃を控えて、私があなたにできることはこれくらいしかないから」
その手が器用にベルトを外し、ジッパーを下げた。リヒャルトの手が熱を孕む雄茎に微かに触れるたび、意思に反してさらに硬くなる。
「リヒャルト!」
焦って咎める声を出す。しかし彼の手は止まらない。ズボンの前をすべて寛げられた時には、エルネストの茎は抑制が効かないほどに屹立してしまっていた。リヒャルトはすぐに身体を折り、躊躇なく股間に顔を近づける。
「おいっ」
「エルネスト、私の口であなたを慰めさせてください」
「リヒャルトッ、んっ!」
彼の肩を掴んだ時にはもう、敏感な先端に温かな唇が触れていた。エルネストの口から意図せず声が漏れる。
「お願いです、どうか、このまま……」
裏筋を伝って、リヒャルトの舌が下りていく。ビクリと身体が跳ねた。
「……んっ、くっ」
屹立すべてを丁寧に舐め尽したあと、温かく柔らかな感触がくびれを包んだ。
「リヒャルト……ッ」
全身にじわりと汗が滲む。息が上がる。舌と唇で扱かれると、あまりの快感に、声が漏れないよう歯を食い縛らなければならなかった。
静かな室内に淫靡な水音が広がる。
「……っ」
思わず、リヒャルトの上下する頭に手のひらを置き、シルバーブロンドの髪に指を埋めた。金色の髪は細く柔らかい。
「エルネスト……」
名を呼ばれると、さらに高まってしまう。
「もう、だめだ……っ、離れろ」
「いいから、このまま……出してください」
リヒャルトは余計に動きを速くする。
「おい……待っ!」
その頭を押さえようとしたが、次の瞬間、抗えない奔流が迫ってきた。
「……っ!」
ビュクビュクと幾度も幾度も白濁が先端から迸る。それをリヒャルトはすべて受け止め、飲み込んでしまった。
「……はあ、はぁ、すまない、リヒャルト……」
「どうして謝るのです」
荒い息を吐きながら言うと、口元を手の甲で拭ったリヒャルトが顔を上げた。これまでに見たことのないほど、穏やかな笑みを湛えていた。
「私は、こんなにも幸福なのに」
「……っ」
思わずその肩を抱き寄せていた。
「エルネスト?」
確かな温もりが腕に伝わってくる。
……この温もりを、おまえを、今度こそもう誰にも奪わせない。
エルネストはそう心に決め、明日の襲撃への決意を新たにした。
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