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『淫靡に笑う』

 粘膜を撫でている指がゆっくりと引き抜かれ、そしてまた入ってくる。  迎え入れた指が出入りを始めると、鼻にかかった甘えた鳴き声が漏れた。 「うっ、あっぁン、ぁ!」  指の腹よりも爪が触れた場所がやけに熱を持つ。  それは僅かな領域だった。  指の腹などには感じない類の痛み。  痛み以上に意識を飛ばしそうになる程の快楽がかすめた。  去来するその感覚は、掴もうとすれば不明瞭なままで霧散する。 「何処に欲しい?」 「あっ、ぁ、爪の、とこっ……」 「ここかな?」  腹の内側へ指を反らして爪を押し当てる。 「――……あぁっ」  びくりと体が跳ねる。  何が起こったか分からないが、瞼の裏で火花が散る。  ちかちかと瞬く視界に、海輝が心配そうにのぞき込む。 「強かった?」  薄く開いた唇から唾液が零れる。  赤い舌を覗かせたまま溶けた視線を彷徨わせると、海輝が淫靡に笑う。 「中で気持ちよくなってイッた? ここが錦君の良い所なんだ」

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