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『幸せに流す涙がこの世にある事を始めて知った』

「あっ……はっ、錦君っ」  血が集まり、海輝の肌が染まる。  きっと痛みを感じただろう、鬱血を見て錦は薄く微笑みその笑みは直ぐに崩れ 泣き出しそうに歪む。  潤んだ瞳を覗き込んだ海輝の表情はどこまでも慈愛に満ちていた。  唇が目尻に落ちて、滲む甘露を含む。  離れていくときに見つめた瞳は、何度見ても見惚れてしまうほど美しい。 「離れたくない」  きつく抱かれる。  僕も君と離れたくないと囁かれて、それだけで達した。  達しても尾を引き、長い絶頂感に浸り甘く掠れる声でもっとと強請る。  食いつくように貪り、愛おしくてたまらないと言う海輝を抱き返し瞳が再び潤むのを感じる。  誰かを愛することが温かくて嬉しくて、切なくて胸が痛い事だなんて知らなかった。  幸せに流す涙がこの世にある事を始めて知った。  海輝が教えてくれた。  溢れ出す愛しさと多幸感にくらくらしながら、昇り詰めていく。

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